母からもらった般若心経の経本をどうしても持っていきたかった。母からもらった教本
を持って、母と一緒にお遍路してる気分になりたかったのだ。ところが本棚や机の引き
出しを探したが出発までに見つからなかった。日頃の無精を反省した。
出発の日が来た。残念だが仕方ない、せめて母の気持ちと一緒との思いでお遍路に出た。
母からもらった経本というのは元をただせば 関西テレビで放映の高田好胤の出演番組の
視聴者プレゼントであって 世間では何でもない。貴重でも大事でもないものだ。ただた
だ母が大事に持っていただけの話である。今に思えば、そんな母であったことが嬉しい。
お遍路から戻り本棚の隅にある 教本を見つけた。
何度繰り返しても経本なしではソラで読めない般若心経、時おり手にするとこの時の
こと、そして母を思い出すのである。