くろ谷さんで知られる金戒光明寺の塔頭のひとつで、紫雲石でも知られる西雲院の本堂前で咲き始めていた地湧金蓮の花。
数年前までは鉢植えで、本堂前へと続く参道の真ん中に置かれていたと記憶しているのですが、大きくなってきたからか、地植えにされていました。
花が咲いていると言っても、この金色に輝くように見える黄色は花弁ではなく苞と呼ばれるもので、その苞から雄しべが出てるように見えるものが本物の花です。名前に「蓮」とついていますがバショウ科に分類される中国雲南省からインドシナ半島の比較的標高の高い(1,000〜2,500メートル)ところが原産地の常緑多年草で、別属ですが科名となっているバショウ(芭蕉)やバナナ(甘蕉)に近い種ですので、英名ではチャイニーズ・イエロー・バナナと呼ばれ、園芸種としては耐寒バナナという流通名で呼ばれることもあります。
さて、冒頭ではあえて漢字で表記した「地湧金蓮」は中国での呼び名(正式には雲南地湧金蓮)でもあるのですが、この漢字表記を皆様はどのように読みましたか?
この植物を知っていらっしゃる方はおそらく「チユウキンレン」と読まれたかと思いますが、花を止血の生薬として使われることから薬草として取り上げられていることもあり、主に薬学系の生薬関連の紹介ページでは「チヨウキンレン」と読んでいることがあるように感じます。ただし、これはあくまで管理人が個人的に思っているだけのことなのですが……
この「湧」という漢字、たしかに「湧水」のように、訓読みの「わきみず」の他に音読みだと「ゆうすい」と呼ぶので「読みは『ユウ』が正しいんじゃないの?」となるかと思いますが、漢和辞典にあたってみると「湧」の異体字あるいは本字とされる「涌」の読みを見てみると「ユウ」は呉音(私の持っている三省堂の新明解漢和辞典第三版では慣用音)であり、漢音では「ヨウ」と読むようで、正式には「チヨウキンレン」が正しい読みとしていることもあるようです。
ちなみに原典にはあたっていないのですが、国際花と緑の博覧会記念協会が2003年に発行した『雲南花紀行』では、和名は「ジユウキンレン」となっているそうです。
主流の「ユウ」と読めばよいのでしょうが、ちょっと天邪鬼のきらいがある管理人はあえて「チヨウキンレン」と呼びたくなってしまいます。学名の「Ensete lasiocarpum」と書けば、問題になるようなことではないのですけどね。