京都園芸倶楽部の元ブログ管理人の書笈

京都園芸倶楽部のブログとして2022年11月までの8年間、植物にまつわることを綴った記事を納めた書笈。

七夕とカジノキ

2015-08-07 08:42:11 | 歳時記・文化・芸術
「えっ、七夕?」と思われた方、びっくりさせてごめんなさい。

仙台の七夕まつりのニュースを見て、先日の七夕の記事で触れなかったことを思い出しましたので、月遅れの七夕の日にご紹介させていただきます。なお蛇足ですが、旧暦の7月7日は、今年は8月20日になります。

さて、思い出したというのは、かの有名な『平家物語』の「巻第一・祇王」に、七夕の夜に願い事を梶の葉に書く話があります。

平清盛は白拍子「祇王」を寵愛しますが、3年ばかり経つと、他の白拍子「仏」を寵愛するようになり、「祇王」は嵯峨の山里に庵を開き、そこにひきこもってしまいます。
それを哀れと思った妹「祇女」と母親「とじ」も一緒に庵に入ります。

そこで星を眺め、「かくて春過ぎ夏長けぬ。秋の初風吹きぬれば、星合ひの空を眺めつつ、天の戸渡る梶の葉に、思ふ事かく頃なれや」と、七夕に思う人に会うために船に乗って天の川を舵を取ってわたりたいと詠み、「梶」(カジノキ)の葉と船の「舵」を掛けて述べるくだりがあります。

当時、七夕の夜に相思う男女がそれぞれの思いをカジノキの葉に書いて二星(牽牛・織女)に祈る風習があり、これが現在の短冊に願い事を書く風習につながっているともいわれています。




ここで、カジノキについても少し触れておきます。
カジノキはクワ科コウゾ属の落葉高木で、葉は大きく、浅く三裂もしくは楕円形をしています。和紙の原料となるコウゾと近縁種です。




神道では神聖な樹木とされ、諏訪神社などの神紋や家紋の意匠にも取り入れられています。
また茶道では、夏のお点前に「葉蓋の扱い」というのがあり、水指の蓋の代わりに木の葉を使うことがあります。これは裏千家11代玄々斎宗匠の創案で、七夕の日の茶会で自分の好みの花入の受筒に梶の葉を蓋にして水指に用いたのが始まりといわれています。

それにしても風流なものです。一度カジノキの葉に毛筆で字を書いてみたいものですね。
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