住宅街に突如として緑地(原っぱ?)が現れ、端から見ると雑草と雑木だけの場所に見えますが、じつはここ、とても重要な場所なのです。
前まで行くと、樹木が何本か植えられているだけで、しかも足元は雑草だらけなので、とても重要な場所のように見えないかもしれませんが、建てられた石碑と説明板を見てみると…
なんとここは、三重県四日市市の東阿倉川地区にある、野生梨の中でより原始的な梨の性質を呈しているというイヌナシ(犬梨)の自生地なのです。石碑には「天然記念物東阿倉川いぬなし自生地」と刻まれ、説明板にはイヌナシの自生地となった経緯が記されています。
イヌナシの標準和名はマメナシ(豆梨)で、イヌナシは別名あるいは地方名らしく、三重県ではイヌナシと呼ばれることのほうが多いのだそうです。明治35(1902)年に当時の市立四日市高等小学校の教員だった植松栄次郎先生と寺岡嘉太郎先生、今井粂蔵先生によって発見され、のちに牧野富太郎博士の研究によって新種の梨として「マメナシ」という和名(イヌナシは地方名)で学会に発表され、大正11(1922)年には国の天然記念物に指定されました。
原木は一番奥に植えられている2本で、この木が天然記念物に指定されています。
(左手前と右奥の2本がイヌナシの原木)
花は栽培ナシと同じような花を咲かせるようです。ちなみに、栽培ナシの花は以下の記事で紹介していますので、参考までに。
ナシの花期は桜と同じ頃なので、すでに咲き終わっていましたが、小さな実ができていました。また原木には昨年の実が残っているのか、すでに熟れた実もついていました。
(上側が今年咲いた花からできた若い果実で、下側は昨年できた果実だと思います)
ただし原木は樹木の損傷が激しいのか、2本の原木ともに枝を支える棒が添えられ、またそれぞれ樹木の一部がえぐれたようになっていました。
(奥側に植えられたイヌナシの原木)
原木の2本以外にも観察用のイヌナシが6本植えられ、こちらも小さな実ができていました。
(観察用のイヌナシの果実)
そしてイヌナシだけでなく、イヌナシと栽培用のナシの交雑種とされるアイナシ(合梨)も観察用に1本植えられ、こちらも実ができ始めていました。
(観察用のアイナシの果実)
じつは、アイナシの自生地もお隣の西阿倉川地区にあります。イヌナシの自生地を見た後に向かってみると…こちらにも石碑と説明板がありました。石碑には「天然記念物西阿倉川あひなし自生地」とあります。
古い説明板が見えにくくなっているためか、ちょっと離れた場所に新しい説明板が設置されています。このアイナシの自生地もイヌナシの自生地を発見した3人の先生によって発見され、牧野富太郎博士の研究で広く知られるようになったようです。こちらも国の天然記念物に指定されています。
石碑と古い説明板の近くにアイナシ原木があり、すでに実を結び始めています。このアイナシも天然記念物に指定されています。
そしてアイナシの自生地にも観察用のイヌナシが数本植えられており、こちらも実を結び始めていました。
アイナシの自生地では、おそらく四日市市の職員の方だと思いますが害虫等がついていないか調査をされていたので少しお話を伺うと、両方の自生地ともに地域の方が保全・保存に協力的なので、何かあるとすぐに連絡をくださり助かっていますとのことでした。この日も地域の方から「蛾の幼虫みたいのがついているよ」と電話があったので調査に来られたとのこと。
もう1か月早く行っていれば花の咲いているところを見られたのでしょうが、また来春にでも機会を見つけて行きたいと思います。近くを流れる海蔵川の土手ではノイバラ(野茨)が満開でした。
(海蔵川の土手で咲いていたノイバラの花)
また、アイナシの自生地近くでは麦畑が広がっていました。そろそろ麦秋の季節です。
(黄金色に色付き始めた麦畑)
豆ナシとアイナシの違いが分からずに困って居ましたが
自生地の記事を拝見して勉強になりました
自生地に行って
現物を見たいです
お知恵を頂き有難う御座いました
たまたま旅行中に見つけ、寄り道して見学してきたことを記事にしたものです。少しでもお役に立てたのなら光栄です。