今日は十日戎です。愛着を持って「えべっさん」とも呼ばれ、えびす宮総本社である兵庫県西宮市の西宮神社や大阪市浪速区の今宮戎神社が全国的にも有名ですが、この二社と京都ゑびす神社で日本三大えびすとされ、京都ゑびす神社もこの時期は大勢の参拝者で賑わいます。
京都ゑびす神社は、茶祖で知られる栄西禅師が、宋からの帰りに暴風雨に遭い遭難しそうになったところに現れたえびす様のご加護で難を逃れたことから、開山した建仁寺の鎮守として創建したのが始まりです。
十日戎の由来には諸説あるようです。えびす宮総本社の西宮神社では元来「御狩神事」と呼んでいたそうで、どのような神事であったかは定かではないそうですが五穀豊穣や商売繁盛を占うお祭りであったとされ、これを由来としているそうです。他には、えびす様の誕生日が1月10日だったという説などもあるようです。
さて、十日戎といえば「商売繁盛で、笹持ってこい」と言われるように、縁起物は「福笹」ですね。この福笹は京都ゑびす神社が発祥とされ、京都ゑびす神社独自の御礼であったものが全国に広まったそうです。でも、どうして縁起物が笹なのでしょうか?
福笹と言いますが、実際は孟宗竹の枝が使われています。竹は非常に成長が早く、まっすぐ上に伸びることから、生命力や商売繁盛の象徴とされてきました。その生命力や商売繁盛の象徴に、大判小判に鯛や米俵などのお飾りを結びつけ、それぞれのお飾りが表す内容がすくすくと伸びて繁盛するようにと願いを込め、そのご利益を授かろうとする縁起物が福笹だということです。福笹は竹を使用していますが、笹にも殺菌力があり、神社でお清めにも使用されることから、語感のよさも含めて「福笹」というようになったのかもしれませんね。
なお「笹持ってこい」というのは、今では神社で福笹を授与しますが、本来は各自が笹を持ってきて祈願を受けたことの名残りだそうです。そして、商売が繁盛したら来年も笹を持っておいでという意味も含められているそうです。また縁起物には福笹以外にも熊手と福箕もありますが、熊手で福や金運をかき集め、それを福箕ですくい取るという意味があるそうです。
最後に、十日戎の御祭神のえびす様は日本神話に登場する「ヒルコ(蛭子)」のことですが、どうして福の神として崇められるようになったのでしょうか。
古事記にも記載されているとおり、男神のイザナギ(伊邪那岐命)と女神のイザナミ(伊邪那美命)による国産みで最初に生まれた神がこの「ヒルコ」です。しかし、本来の手順とは逆で先にイザナミがイザナギに声を掛けたため不具の子である「ヒルコ」が生まれたとされ、ヒルコは葦の船に乗せられてオノゴロ島から沖に流されてしまいます。この「ヒルコ」が流れ着いた地が西宮であり、そこで漁師に拾われ、のちに戎神として祀られたとされています。古来、海から流れ着いた神様は常世の国から来て富や幸福を授けてくれる神様と考えられ、これがえびす信仰へとつながっていったと考えられているそうです。
ただし、ヒルコがえびす様という説だけでなく、事代主がえびす様という説もあり、西宮神社はヒルコがえびす様だとしていますが、今宮戎神社は事代主がえびす様だとしています。
もう少し加えると、他の説もいくつかあるようで、以下の4つの説が有名なところでしょうか。
・蛭子説 蛭子尊(えびすのみこと)が祭神であるという説
・事代主説 事代主神(ことしろぬしのかみ)が祭神であるという説
・山幸彦説 彦火火出見尊(ひこほほでみのみこと)が祭神であるという説
・少彦名命説 少名昆古那神(すくなびこなのかみ)が祭神であるという説
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十日戎は主に関西(京阪神)中心の神事だといえるかもしれませんが、お近くにお住まいなら、お勤め帰りに福をいただきに行くか、明日から三連休という方は残り福をいただきにあらためて参拝されるのもよいのではないでしょうか。