京都園芸倶楽部の元ブログ管理人の書笈

京都園芸倶楽部のブログとして2022年11月までの8年間、植物にまつわることを綴った記事を納めた書笈。

祇園祭にまつわる植物あれこれ

2016-06-29 06:22:47 | 歳時記・文化・芸術
明日6月30日は今年1年前半の最後の日。この半年分の穢れを落とす「夏越祓」が各寺社で行われますね(昨年の記事はこちら)。

各寺社では、すでにチガヤを束ねた「茅の輪」が設置されており、和菓子屋さんでは「水無月」も販売しています。

そして明後日からは7月に入り、京都三大祭のひとつ「祇園祭」が1か月間にわたって行われます。洛中では「コンチキチン」と鉦の音色に太鼓と笛が入ったお囃子が聞こえ始めることでしょう。

この祇園祭にまつわる植物といえば、やはり「ヒオウギ」でしょうか(昨年の記事はこちら)。




でも、祇園祭の最大の山場となる「山鉾巡行」の立役者である山鉾にも、植物の名前がつけられた山鉾や、由来に植物が深く関係している山鉾がありますよ。

まずは「木賊山」。木賊(砥草:トクサ)は、茎の表面がザラザラしているため、茎を煮込んで乾燥させたものをつげ櫛などの木工品を磨くヤスリとして利用されます。




木賊山は、謡曲『木賊』から着想された山だそうです。生き別れた父を探す主人公が、故郷信濃国園原で木賊を刈る老人の家に泊まります。老人は、別れた子に巡り会うがために旅舎を作り旅人を泊めていると語り、主人公に酒を勧めながら我が子の好きであった小謡曲舞を、子を偲びつつ舞いますが、この老人が主人公の父であったという話です。
木賊山の御神体は、子を思い1人寂しく木賊を刈る老人の悲しみを深く表現した名作で、桃山時代に作られたといわれています。

その他には、謡曲『芦刈』から、妻に去られ一人寂しく難波の浦で芦を刈る翁の姿を現している「芦刈山」があります。

余談ながら、この植物、平安時代まではアシと呼ばれていましたが、語感が「悪し」に通ずることから、次第にヨシ(良し)と呼ばれるようになりました。




さらに、町内の金剛能楽堂内に古くからあった『菊水井』にちなみ、鉾頭に金色の菊花を付けている「菊水鉾」があります。

また少し強引かもしれませんが、中国の史話で二十四孝の一人である孟宗が病母のために雪中で筍(孟宗竹)を掘った話を趣向とした山である「孟宗山」や、官中の女官に恋し、紫宸殿の梅を手折ってほしいという女官の願いに応えるため、夜陰に宮中に忍び入って梅を手折って無事に役を果たしたという藤原保昌の話が趣向となっている「保昌山」に、謡曲『志賀』にちなんで桜の花を仰ぎ見ている大伴黒主の姿を表す「黒主山」も含めてもよいでしょうか。

こういった視点から山鉾を眺めてみると、いつもとまた違う祇園祭が味わえるのでは?

なお山鉾巡行は一昨年の2014年から後祭が49年ぶりに復活しましたので、今回紹介した「黒主山」だけ後祭の巡行ですが、他の5基は前祭の巡行です。
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