それほど珍しい野草でもないのですが、どちらかというと水田の畦地や少し湿ったところに生えている印象が強いので、近隣の公園で見つけたときにはちょっとびっくりしたのですが、さてどちらのタカサブロウ(高三郎)さんでしょうか?
と書いても何のことかわからない方もいらっしゃるかもしれません。キク科タカサブロウ属に分類される一年草で、日本では在来種(史前帰化種とも)のタカサブロウ(高三郎)と40年ほど前に帰化しているのを見つけられた熱帯アメリカ原産の外来種であるアメリカタカサブロウ(亜米利加高三郎)の2種が見られるのですが、さてこれはどちらでしょうか。
花の大きさ、総苞片の太さ、葉の太さや鋸歯の入り方などで区別がつけられるのですが、ほぼ同じ場所を生育場所として好み、混生していることもあるようなので、ぱっと見には区別がつきにくいかもしれません。
こちらも1枚目の写真と同種かと思いますが、葉が植物体の上部や下部を問わずに全体的に細く、総苞片の幅も狭いので、アメリカタカサブロウだと思います。念のため痩果も採集してルーペ等で確認してみました。
タカサブロウだと痩果の両側に翼と呼ばれるひだのようなものがついており、痩果の上部から見ると、譬えるなら真横から見た土星(あるいは2枚の甘食を合わせたよう?)のように見え、アメリカタカサブロウは菱形のようなかたちです。それとアメリカタカサブロウの痩果の上部には髭のような冠毛があり、この痩果を見ると菱形で冠毛らしきものもあったので、アメリカタカサブロウと判断しました。
ただ、ひょっとしたらタカサブロウも混生しているのかもしれず、たまたま見たのがアメリカタカサブロウだっただけかもしれません。
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さて、最後にちょっと脱線。タカサブロウという変わった和名を持つ野草ですが、その由来は諸説あるようです。高三郎という人(それこそ、どちらの?)がこの植物の茎を使って文字を書いたという説もあるようですが、タタラビ(ただれのこと)の治療に用いられたタタラビソウが転訛したという説もよく知られているでしょうか。
なお、中国ではタカサブロウの地上部を乾燥したものは旱蓮草(かんれんそう)と呼ぶ生薬として清熱涼血、止血薬に用いられ、日本でも民間療法として結膜炎やただれ目に用いられたそうなので、タタラビソウが転訛したという説がもっともらしいでしょうか。意外や意外、どちらかの高三郎さんが茎を筆として使用していたのかもしれませんが……