潜入捜査官ハサウェイ『聖人画』の続きです
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「オックスフォードミステリー ルイス警部」はAXNミステリーで放送しているドラマです→こちら
ホームページにキャストの説明がないのでざっと説明しておきます。
ジェームズ・ハサウェイ:このファンフィクの主人公。オックスフォード署ではルイス警部とバディを組んでいる、30代後半の長身でハンサムな刑事。かつて神父を目指して勉強していた。
ロバート・ルイス警部:ハサウェイのバディで上司。ベテラン刑事で熱血漢。
ホブソン監察医:ルイスの恋人の女性医師。
イノセント主任警視:ルイスとハサウェイの女性上司。
以上を頭に入れながらお読みください。
ルイスが飛び込むとロビンがハサウェイに向かってクロスボウを構えているところだった。
「警察だ!クロスボウを置け!」
ルイスは銃口をロビンに向けて出せる限りの声で怒鳴った。視界の端には柱に括り付けられたハサウェイの姿がある。
「もう一度言うぞ!クロスボウを床に置け!置かなければ」
ルイス目がけて投げつけられたクロスボウが言葉を遮った。クロスボウはルイスの拳銃を持った右手に当たり、銃は手から転がり落ちた。弾みで矢は飛び出し、ハサウェイが拘束されている方向に勢いよく飛び出した。矢はハサウェイの剥き出しの腹の横をかすめるように飛んで壁に突き刺さる。ハサウェイの横腹には微かに血が滲んでいたが、痛みを感じるような気持ちの余裕は彼にはなかった。
ルイスとロビン、二人は素手になった。
ルイスはロビンに飛びかかる。ロビンは飛び退くように逃げたがルイスの手がかろうじて足をつかみ大きな音を立てて倒れ込んだ。二人は揉み合いになりルイスが圧倒的に有利に見えたが、やみくもに振り回したロビンの手がさっき投げ捨てたナイフの柄を偶然探り当てた。ロビンはルイスをナイフで攻撃する。それでも訓練を受けたルイスにはあまり効果はなかった。二人は揉み合いながら転がり、床に置いてある絵の道具を蹴散らしている。
二人が取っ組み合いをしている横で、ハサウェイは両手を柱の後ろで拘束している結束帯をなんとか千切ろうと手首を激しく動かしていた。しかし細くても丈夫なプラスティックはそのくらいで切れることはなく、ハサウェイを自由にはしなかった。
転がる二人が倒した筆立てからペインティングナイフがハサウェイの足元まで転がってきた。それを取るためにハサウェイは柱に括り付けられたまましゃがみ、柱を少しずつ回転してペイティングナイフのすぐ傍まで手を近づけることに成功した。長い指でペイティングナイフを引き寄せどうにかして持つことができた。あとはなんとか手を拘束している結束帯を切れば、切れれば自由になる!勢いをつけてペインティングナイフの刃で擦り始めた。しかし焦る気持ちが手に力を入れ過ぎた。ペインティングナイフが刃の根元で折れてしまった。一瞬ハサウェイの頭は絶望で占められたが、それでも諦めなかった。折れた部分で結束帯を傷つけ始める。
ペイティングナイフ自体は鋭利ではないが折れた部分は鋭利だった。折れた部分で結束帯を削るようにして少しずつ切っていった。急ぎながらも慎重に切っていった。すぐ傍でルイスがロビンのナイフと格闘している。さっきまではルイスの助けを待っていたハサウェイだった。しかし今度は自分がルイスを助ける番だった。
二人はごろごろと転がりロビンが有利になるかと思えば次の瞬間にはルイスが有利になる。しかしすぐまた形勢は逆転する。
今ルイスはかなり不利な状態で、ロビンが馬乗りになって彼にナイフを何度も振り下ろしている。ロビンが振り下ろしたナイフがルイスの顔をかすめるよう床に突き立てられる。すぐにまた同じようにナイフが降ってくる。ロビンにはもう正気は残っていないようだった。正気があるぶんだけルイスが不利だったかも知れない。ルイスはかろうじてナイフから逃げている。何度もロビンのナイフから逃げたルイスだが、ロビンがひときわ大きく手を振り上げ降ろす瞬間、力を振り絞って上げた手がロビンの前腕をつかんだ。お互いに出せる力の全てを使って押し合っている。一進一退だが重力の助けを借りているロビンの方が有利だ。
ハサウェイを拘束している結束帯はかなり切れてきている。もう少し、もう少しで結束帯が切れる。ルイス待っててくれ!
小さく音がして弾けるように結束帯が切れた。ハサウェイは足を拘束している結束帯も手早く切ると勢いよくロビンに飛びかかった。後ろから首に腕を回してそのままのけ反らせるようにルイスから引き離し、ヘッドロックの状態のまま背中から床に倒れた。勢いでロビンの手はルイスから離れ自由になりナイフを振り回す。今度はハサウェイが危険に。
ルイスは勢いよく起き上がると仰向けの状態でハサウェイに羽交い絞めにされているロビンの手首をきつくつかみ、彼の手を床に何度も打ち付けた。ついにロビンの手からナイフが落ちた。ロビンは二人の男につかまれ完全に動きを封じられた。
ハサウェイが体を回転させ背中に乗せるようにしてロビンをうつ伏せにし、ルイスがナイフを落とした手に手錠をかけ、それからもう一方の手も引き寄せて手錠をかけた。もう彼は何もできない。そのままロビンは床に転がされた。
激しい取っ組み合いが終わりロビンの脇で尻もちをつくようにルイスが座り込み、ハサウェイも膝をついたまま力を抜く。危機は去った。ほっと息をつき二人はお互いを見て安全を確信し合った。と、ルイスが笑い出した。
「ハサウェイ!なんだその恰好!」
ハサウェイは切り刻まれてほぼ腰の辺りだけしか残っていない自分の服を見下ろした。
「警部が遅いからですよ。」
二人は大声で笑い始めた。
外には応援のパトカーが到着し大勢の警官が現場の納屋に向かって走り出している。緊張する警官たちの耳に響いたのはルイスとハサウェイの明るい笑い声だった。
今日で最終回です。長いこと読んでいただいてありがとうございました。また機会があったら何か書きたいと思います。とのときはまたお付き合いくださいね!
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