更々

木枠の内は砂利と土で整地され、所々にコンクリートの丸杭が平然と打ち込まれている

其処には以前、何もなかったように、否、何もなかったと示さんばかりに、通りの視界だけを広くする

学生街の交差点、レンガ造りの店、更地になった

いつものように、信号待ちから談笑しながら自転車を走らせてゆく、セーラー服たちにとっては、その景色が持つ意味などどうでもよく、大した話題にさえのぼらない

ただ、それは自分との関係性と、自分の中におけるウェイトによって変わる

人によっては、何でもないようなことが、人によっては、何でもなくなかったりする

その何でもなくないことを、気持ちの中でキチンと整理できた時、自然と沸き起こるのは哀しみでもなく悲しみでもなく、淋しさでもなく寂しさでもなく、物言えずに途方に暮れる感覚でもない

動じないまでに要する時間は計り知れないけれど、忘れないのはあたりまえのこと、確認することと後向きになるのは違う

跡形もなくなったからといって、何もかも奪われた気にはならないのは、決して奪えない「ひとつ」が自分の中に生きているから、だろ？





また、空ばかりが広くなってしまうのは、残念というか何かシャクだけど、相も変わらぬ馬鹿でいようと思う、少なくとも僕は。




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