エルヴィスと言えば、私にとって洋楽の門を開けてくれて、ロックの素晴らしさを教えてくれた大恩人です。
もしエルヴィスと出会わなければ、もっとつまらない人生を送っていたかもしれません。
そんな彼の伝記映画が公開されました。早速公開翌日の先週土曜日と今週土曜日の2回鑑賞しました。
監督はバズ・ラーマン。「ロミオ+ジュリエット」「華麗なるギャツビー」「ムーランルージュ」など
芸術的といわれるシーンが特徴の編集上手な監督です。
上映時間2時間39分と長いのですが、中だるみのない一気に見られる秀作です。
でも年寄りにはキツイ。2時間20分くらいに納めてもらうとトイレも気にせずに見れるのに。
そして主演のオースティン・バトラーはエルヴィスが乗り移ったんじゃないかと思わせるくらいそっくり。
形だけじゃなく内面からでてくる気配や目の動きもでもが本物そのもの。
映画の冒頭に全米ツアーのシーンでは、なんか違うんですけど、映画が進んで行くにつれて本物になっていくんです。
ラストのシーンは特殊メイクだという人もいますが、あれはエルヴィス本人だと思います。
ブルーレイが発売されたら確認してみます。もしあれがオースティン・バトラーなら、もう脱帽です!
この映画はエルヴィスのマネージャー、トム・パーカー大佐の目を通して描かれています。
大佐は別のカントリー歌手のマネージャーをしていたのですが、デビューしたばかりのエルヴィスのウワサを聞きつけ、
彼のステージを見に行きます。その当時黒人の曲と決めつけられていたR&Bやゴスペル、白人音楽のカントリーを
自分流にアレンジして歌う、それも歌うだけじゃなく腰をくれらせて歌う。
女性にとってそれはとても官能的に見えたのでしょう。
大声で叫んでステージに駆け寄る女性たち。なぜそんなに叫んでいるのかわからないエルヴィス。
このシーンの女性たちは大袈裟だと指摘する人もいますが、それは現代の激しいダンスを見慣れた人の意見でしょう。
実際私も52年前に歌いながら激しく体を動かすエルヴィスを見て
「アメリカにはこんな凄い人がいるんだ」と鳥肌がたちました。
小学6年生の私にとって未知の世界を知ってしまった感覚がありました。
その当時(1970年)日本で流行った曲を調べてみました。
1位 黒ネコのタンゴ 皆川おさむ
2位 ドリフのズンドク節 ザ・ドリフターズ
3位 圭子の夢は夜ひらく 藤圭子
その他 愛は傷つきやすく/ヒデとロザンナ 今日でお別れ/菅原洋一 京都の恋/渚ゆう子 などなど
こんな曲が流行ってるときにあのエルヴィスのパフォーマンスを観てしまったんです。
映画の中でもパーカー大佐は「彼女たちは禁断の味を知ってしまった」と言っています。
音楽には疎いのにお金のにおいには敏感はパーカー大佐は即座にマネージメント契約を取り付けます。
これがエルヴィスとパーカー大佐の出会いです。
エルヴィスがデビューした時代は黒人差別が激しく、その文化さえも差別の対象とされていました。
黒人霊歌であるゴスペル、R&Bなど黒人文化から生まれた曲は下等で白人が聞くものじゃないとされていました。
そんな曲を白人の曲であるカントリーと融合させて、ましてや官能的に腰をくねらして歌うなんてもってのほか。
公序良俗を乱す反乱分子として政府から目を付けられます。
パーカー大佐からも動かずに静かな曲をやれと言われるのですが、
エルヴィスは心のままに感じるままに音楽にのって歌います。
それを止めようとする警察と聞きたい音楽を聴いてなにが悪いと反発する若者の間で暴動が始まりました。
ロックの真髄である反骨の精神の始まりを見たような気がしました。
徴兵後のハリウッド進出、その後のテレビ出演。通称「68カムバックスペシャル」といわれるクリスマス番組なのですが、
この番組の収録中にRケネディ議員が暗殺されるという事件が起こります。この年はキング牧師も暗殺されています。
アメリカが混沌として迷走していた時代とも言えます。
この番組のラストに歌われる「If I Can Dream」はキング牧師の名スピーチ「I Have a Dream」のアンサーソングとも言われ、
とても感動するシーンです。
その後もエルヴィスとパーカー大佐は喧嘩をしても離れられない関係を続けていきます。
ギャラも搾取され、思うような活動もさせてくれないパーカー大佐なのですが、
ここまでの地位まで引き上げてくれたのもパーカー大佐だというのもエルヴィスは理解しています。
義理堅い彼にとっては離れられない理由なんでしょうね。
エルヴィスの半生を描いた映画なのですが、その時代背景もしっかり描かれており、
ロックの源流、精神もわかるとても秀逸な作品です。
彼の死後45年が経過しました。よっぽどの音楽好きでない限り若い人は彼を知らないでしょう。
まだまだ書きたいことはたくさんあるのですが、書ききれない!
映画としてもとても面白い作品になっています。ぜひとも見ていただきたい!
PS
ここでは映画にちなんでエルヴィスと書いていますが、いつも私はプレスリーと呼んでます。
書いていてとても違和感がありました。
恩人であり師匠である彼に親しげに名前で呼ぶなんてできません。
これからも尊敬をこめてプレスリーと呼ばせていただきます。