「一人暮らしが長いと料理の腕もなかなかだ、羨ましいよ」
そういってブラッドはマルコーの作った料理を遠慮なく食べる、勿論、遠慮なくお代わりもだ。
夕食の時間、用意したのはローストビーフサンドにサラコーンスープ、温野菜のサラダだ。
宿をとっていないのなら、泊まるかいとマルコーが尋ねると頷きながらブラッドは彼女のベッドで寝るから大丈夫だと隣を見た。
その言葉に、部屋の中、彼女と言われた本人だけでなく、スカーとマルコーは無言になった。
「ところで、確認しておきたいことがあるんだが」
ブラッドは隣の彼女をちらりと見た。
「先生には話したているんだろうね」
女の顔が一瞬、んっっとなった、だが、次の瞬間、気まずそうな表情になった、助手が隠し事をするのは頂けないとマルコーはブラッドを見ると報告を受けてないんだねと尋ねた。
「看護士の試験だ、ここに来る前、セントラルで受けたんだよ」
そんなことは知らなかったとマルコーとスカーは驚いたように彼女を見たが、当人の表情は暗い、落ちたのだろう。
「実はノックス先生が相談してきてね、基本はできている、自分が色々と教えたし、元々、資格は持っていたんだろう、前の世界では」」
一瞬、ぽかんとした顔つきになった彼女に色々と教えて貰ったんだろう、ノックス先生にとブラッドは言葉を続けた。
「それで調べてみたわけだ、色々とあってね、はい」
胸ポケットから出した一枚のカードを手渡したが、それを見た彼女の顔が、えっという表情に変わった。
「不合格は間違いだったらしい、手違いだったと言われてね」
その言葉に不思議というよりも、不可解といいたげな表情になったのは無理もない、理由を知りたい、聞いてもいいですかと尋ねると軽く首を振ったブラッドは、まあ良いんじゃないかいと。
「実は結果を聞く前に、私が君と親しい間柄と説明したんだよ、それに今は二つ名を持つ錬金術師の元で助手として働いていると言ったら、いや、余計な事を言ったかな、ははは」
(それは恐喝、いや、元、退役軍人のなんというか)
ブラッドの顔を何か言いたげに見る彼女だが、それはマルコーやスカーも同じだ。
試験の事は初めて聞いたよとマルコーはどこか居心地の悪そうな顔でブラッドを見た。
「実は試験を受ける時にイシュヴァール人ということで彼女は試験を受けたんだ、それがまずかったみたいだ」
何故と疑問を抱いたのはスカーだ。
「受験生の中に少し金持ちの子ががいてね、あと人数制限だ、それで落とす人間はいないかということで彼女にね」
このとき、マルコーは初めて怒りというよりも呆れてしまった、試験の意味がないだろうと。
「ところで、お茶にしないかい、レーズンバターサンドクッキーがあるよ」
ブラッドの言葉に、寝る前にカロリーの高いお菓子食べたら太るから嫌ですという辛辣な返事だった。
「そうだ、明日、デートしよう好きなところへ連れて行ってくれるぞ、スカー君が」
何故、ここで自分の名前が出てくるのかとスカーはブラッドを見た、というより睨みつけた、だが、それ、罰ゲームですかと返ってきた言葉にブラッドは、はははと笑った。
「年下だが、顔は老けてるぞ」
褒め言葉としても微妙な言葉に、おやすみなさい、もう寝ますと行って自分の部屋に入っていく彼女の後ろ姿に先生にお任せしようとブラッドはマルコーを見た。
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