今回の論文の共著者で、リー氏の研究室に所属する博士課程の学生シャオハン・デニス・リー氏は、殺虫成分の多くが神経系など特定の部位をターゲットとしていると説明する。「つまり、抵抗性があるゴキブリの多くは、ターゲットとなる部位に(遺伝子の)変異があるため、殺虫成分の影響を受けにくいのです」 屋内で殺虫剤を使用すると、人間にも被害が及ぶことがある。米環境保護局(EPA)によると、米国の家庭に「まん延」している殺虫剤の残留成分は、頭痛、めまい、吐き気をもたらすだけでなく、がんの発症リスク増大の原因にもなりかねないという。
ゴキブリが繁栄に至ったもう一つの要因として、ほぼ何でも消化できる能力が進化したことが挙げられる。 チャバネゴキブリの消化系には「膨大な種類の酵素があるので、あらゆるものを代謝できるのです」と、昆虫学者のシェウン・オラディプポ氏は説明する。氏は、アラバマ州にあるオーバーン大学の博士課程に在籍し、持続可能な害虫管理戦略を研究している。「ですから、私たちが何を与えても、容易に解毒できるのです」。なお、氏は今回の論文には関与していない。