1921年「婦人及児童ノ売買禁止ニ関スル国際条約」
前2つの条約を包括する条約として、国際連盟によって採択されました。売春とそれに伴う女性と児童の人身売買を禁止するもので、日本を含む28ヵ国で締結されています。
1949年「人身売買及び他人の売春からの搾取の禁止に関する条約(人身売買禁止条約)」
売春と、これを目的とする人身売買を禁止するため、国際連合で採択された国際人権条約です。82ヵ国が加盟しており、売春宿経営やその未遂行為を禁止する内容が盛り込まれています。
1956年「奴隷制度廃止補足条約」
奴隷や農奴、女性の自由意思に反した結婚の禁止、児童労働を含む奴隷制度全般、奴隷貿易などを国際法で禁止するために制定された条約です。現在124ヵ国が加盟しています。
2000年「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約(国際組織犯罪防止条約)」
国際連合総会で採択され、通称「パレルモ条約」と呼ばれています。「人身取引」「密入国」「銃器」等の、国際的な組織犯罪に対応するために制定されました。日本は2017年に締結しています。
2003年「人身取引議定書」
前述の国際組織犯罪防止条約を補完する議定書として、国連総会で採択されました。日本は条約が定める組織犯罪に対する国内法整備が遅れていたため、議定書の締結に至っていなかったものの、2017年に国内法整備に伴い締結しました。
7月30日「人身取引反対世界デー」
世界から人身取引を撲滅するため、2013年に国連総会で制定されました。現在、世界中で人身取引の問題に取り組む組織や団体が、啓発のためのイベントやキャンペーンを実施しています。
ここまでは、世界で起こっている人身取引の状況や、国際的な取り組みをお伝えしました。続いては、日本の現状について見ていきましょう。
日本でも人身売買が起こっているって本当?
「人身取引や人身売買は海外で起きていることで、日本にそのような問題はない」と思っていませんか?筆者もそう思っていましたが、驚くことに現在も人身取引は日本で発生しています。
ここからは、日本で起きている人身取引の実態や、日本が取り組む対策について紹介します。
年間数十名が売買されている
以下は、日本で起きている人身取引の被害者数です。
- 2016年 50人
- 2017年 46人
- 2018年 27人
その中でも、2018年の詳細を見てみましょう。
引用:外務省 | 人身取引対策に関する取組について(令和元年)
- 年齢別…18歳未満5人
- 被害内容…性的搾取21人、ホステス等として稼働させられた者4人、労働搾取2人
日本でも、人身取引の被害に遭うのは女性が圧倒的に多く、その中には18歳未満の子どももいます。また、被害者は日本人だけではなく外国人も含まれ、2015年の被害を受けた外国人の数は日本人を上回っていました。性的搾取の内容としては、売春や児童ポルノ、望まないアダルトビデオへの出演などがあります。
また、アメリカが毎年行っている、世界188ヵ国を対象にした調査「人身取引報告書」では、人身取引に関する日本の評価は低くなっています。この調査は4段階に分けて評価し、2021年の日本の評価は、最もいい1段階目から2番目にあたる「対策不十分」でした。
この理由として、
- 外国人技能実習制度を悪用した強制労働
- 援助交際やJKビジネスをはじめとする売春の問題への対応が不十分
- 人身取引行為に対する日本政府の取締りの甘さや、被害者保護の不足
などが挙げられています。
特に、外国人技能実習制度は、「強制労働である」として世界から批判されています。最低賃金を下回る給与や違法な時間外労働・休日労働が問題視されており、日本政府の対応は不十分であると指摘を受けているのです。
日本の人身売買に対する取り組み・対策
日本にも存在する人身取引。では、これに対し日本はどのような取り組みを行っているのでしょうか。
人身取引対策行動計画
前述したアメリカの「人身取引報告書」をきっかけに、日本でも対策を強化しようと策定されたのが、「人身取引対策行動計画」です。この行動計画の中で、人身取引に関する取締りを徹底するとして以下の内容を盛り込みました。
- 売春事犯等の取締りの徹底
- 子どもの性被害(児童の性的搾取)に対する厳正な対応
- 悪質な雇用主、ブローカー等の取締りの徹底
- いわゆるアダルトビデオ出演強要問題に対する厳正な対応
また、2017年に施行された「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」に基づき、外国人技能実習制度の抜本的な見直しによる制度の適正化も掲げています。
人身売買罪
人身売買罪は2005年に制定され、人身取引議定書が定義する人身取引に該当する行為は全て犯罪と定められました。人身および未成年を購入した者、性奴隷や身体に危害を与える目的で人身を購入した者、国外へ人身を売買した者などへの罰則が定められています。
人身取引そのものだけではなく、人身取引による性奴隷や強制的な結婚、暴力、殺人なども防ぐための法律です。