深田恭子、有村架純、森七菜…秋ドラマが低調な「本当の理由」 何が起きているのか

そうそう 納得がいく 解説?

堀井 憲一郎

深田恭子、有村架純、森七菜…秋ドラマが低調な「本当の理由」 何が起きているのか - ライブドアニュース

秋ドラマのラインナップ

秋からふつうにドラマが復活して、だいたい毎日、ドラマの新しい話が見られる。

あらためてありがたいことだとおもう。

秋のドラマのラインナップはなかなか豪華である。

21時22時台の連続ドラマを月曜から並べるとこんな感じになる。

上野樹里の『監察医 朝顔』。
有村架純の『姉ちゃんの恋』、相手役は林遣都。
森七菜の『この恋あたためますか』、相手役は中村倫也。
波瑠の『♯リモラブ~普通の恋は邪道~』、相手役は松下洸平。
木村文乃の『七人の秘書』。
深田恭子の『ルパンの娘』。
木村佳乃の『恋する母たち』、相手役は小泉孝太郎。
柴咲コウの『35歳の少女』、相手役は坂口健太郎。
妻夫木聡の『危険なビーナス』、ヒロインに吉高由里子。
玉木宏の『極道主夫』、ヒロインに川口春奈。

恋愛ドラマがすこし目立つ。

有村架純『姉ちゃんの恋』、森七菜『この恋あたためますか』、波瑠『♯リモラブ~普通の恋は邪道~』、木村佳乃『恋する母たち』の4作がきちんとした恋愛ドラマである。柴咲コウの『35歳の少女』にも少し恋愛要素があるが、ドラマ展開のメインはそこにはない。

この恋愛ドラマの視聴率があまり芳しくないようだ。

秋ドラマと「恋愛もの」

視聴率が高いのは『七人の秘書』、『監察医 朝顔』、『危険なビーナス』の三つであって、この三ドラマの恋愛要素は低い。

ひょっとしたら、いま現在の社会の気分は、「人さまの恋愛模様」を微笑ましい気持ちで見ていられるものではないのかもしれない。

秋のドラマは10月から始まって12月に終わるから、最後はクリスマスシーズンになる。そこに合わせた恋愛ドラマがよく作られる。

今回も、火曜のドラマ2本『姉ちゃんの恋』、『この恋あたためますか』がクリスマスにむけた展開を見せているし、それぞれ何かしら「ロマンチックなクリスマス」をからめている。

ただまあ「クリスマスを恋人どうしでロマンチックに過ごしたい」というのは20世紀の後半に日本の若い女性ががんばって作り上げた共同幻想なので、やや賞味期限が切れかけている。恋人同士でクリスマスを一緒に過ごすことをロマンチックにおもっている人たちと、あまり気にしていない人たちに分かれてきてるようである。

恋愛ドラマが、いま受けないのは、ゴールが見えているのに回り道をするから、かもしれない。

だいたいの恋愛ドラマは、惹かれあう男女が、いくつかの困難を乗り越えて、最後には一緒になる。それが王道パターンである。

ときにそうでない終わり方もあるが、それにしても男女がなんどか行き違うのを描くのが「恋愛」ものである。

そうでない終わり方の代表的なものは、最後に相手が消えるというものだが(未来に帰るとか難病で死ぬとか)、その型のドラマでも、かならず行き違いがある。

どっちにしろ、見どころは「好き合っているのに、行き違うもどかしさ」にある。
「もどかしさ」は、「このあと二人は一緒になれる」ということが約束されているから楽しめるのである。

たから、行き違いは、だいたい何週かつづく。

第1話で行き違って、でもすぐに仲良くなって、そのまま最後までずっと仲がいいというドラマは存在しない。いや、そういうドラマがあってもいいのだが、それは「恋愛ドラマ」ではない。

だから好き合う二人は三週も四週も、ときにそれ以上、行き違うことになる。

ここがたぶん、いまの社会の空気と合わないのだ。

あまり「もどかしさ」を楽しんでいる余裕がないように見える。

いまは現実社会のほうが、三週も経つと、がらっと変わってしまうから。

「ちょっといまはいいや」な気分

2020年の社会は、いろんな人が日本中で、そして世界中で、リアルに「会いたいのに会えない」というもどかしさを持っている時代である。

いまなら会えるかもしれない、という期間がふっと訪れたりする。でも、ぼんやりしていると第二波、第三波の襲来があり、「やっぱりいま会うのはやめてください」という指示が出てしまう。

「大事な人がいるなら、相手のことをおもって、だからこそ、会わないでください」

そう、行政機関から指令される。

それは恋愛ドラマのプロデューサーが、若い脚本家に次のドラマコンセプトを説明しているセリフと変わらない

現実世界が、すごくドラマじみているのだ。

そういう状況下だからこそ、恋愛ドラマを寄り添って見たいという人もいるだろう。

でも、ちょっといまはいいや、という人もけっこういるはずだ。

「過去に罪を犯してるから」とか「社長とアルバイトだから」とか「ソーシャルディスタンスを取るように指導する立場だから」とか、そういう理由でうまく展開しない人たちの恋愛を、応援する余裕がないかもしれない。

「過去に罪を犯してるから」は『姉ちゃんの恋人』で林遣都の役どころである。

姉ちゃん役の有村架純は、「がんばっている明るいお姉ちゃん」を見せてくれる。彼女は、本来、「あまりおもいを外に出さないで秘める芯の強い女性」が似合うのだが、今回は秘めないタイプを演じて、とても健気である。

「社長とアルバイト」は『この恋あたためますか』の森七菜と中村倫也。

中村倫也はビジネスに生きる冷徹な経営者として登場し、スイーツが大好きで抜群の感覚を持つ森七菜と知り合う。彼女のストレートな生き方に感化され、彼がどんどん人間らしくなっていく。王道の恋愛ドラマである。森七菜はいつも近くにいる人として描かれている。彼女の凜とした姿が見たくなるドラマである。

森七菜〔PHOTO〕Gettyimages

 

「ソーシャルディスタンスを取るように指導する立場」なのは『♯リモラブ(以下略)』の波瑠。彼女は、企業付きの医者を演じている。働く人たちの健康管理を指導する産業医で、その生真面目さから、みんなにソーシャルディスタンスを保つようにしつこく指導している。そういう状況で社員との恋が始まる。

きっかけはSNS。ずっと距離を取らなければいけない恋愛状況から、どうやって生身で付き合っていくのかをもどかしく見せるドラマである。朝ドラで有名になった波瑠と松下洸平らしい生真面目な男女の恋愛を描いている。

それぞれ、ふつうに楽しいドラマである。

ただ、あまり熱心には支持されてないようだ。残念である。

事件ものの二作品

ドラマ『七人の秘書』と『監察医 朝顔』は、事件ものである。

毎週、何かしらが起こって解決されていく。

いちおう、全話を貫くお話もあるのだが、とりあえず目先の問題は毎週、解決していく。

一話だけ見ても、きちんと起承転結がある。

『七人の秘書』は、毎週、悪いやつが出てくる。それを七人の秘書が協力して、懲らしめてくれる。そういうドラマだ。

「悪いやつ」はだいたい人を陥れ、高い地位や富を得ようとしてるやつらである。

その被害に遭った人が番所に訴えてくる。

番所じゃないですね、時代劇じゃないんだから

番所がわりのラーメン店にやってきて、七人の秘書に事情を話す。それを聞くと、ボスが(ラーメン店店主でもある江口洋介がボス役)、その件は引き取りましょうと言って、悪いやつに仕返ししてくれるのだ。

そういう型を守って展開する。

見ていると、これがなかなかにおもしろい。視聴率がそこそこ高いのもわかる。

あっさり書くとおもしろさが伝わりにくいが、見続けているとちょっとくせになる。楽しみに見てしまうドラマである。

どうなるのかわからないドラマもおもしろいが、どうなるのかわかってるドラマを見るのもまたとても楽しいのだ。

その楽しさは「悪を懲らしめる」秘書6人の魅力にもよるだろう。

木村文乃、広瀬アリス、菜々緒、大島優子、室井滋、シム・ウンギョンの6人である。

江口洋介がボスで、彼が元締めのような役どころで、彼を加えて七人の秘書として暗躍する。

『七人の秘書』は時代劇の骨格をそのまま使っている。

もうレギュラー放送で見られなくなった『水戸黄門』や『江戸を斬る』『必殺シリーズ』などと同じだ。

わかりやすい悪がいて、人に迷惑をかけている。

そこに黄門さまや必殺人のかわりに七人の秘書が裏で動いて、成敗してくれるのである。

裏で動く、というのが時代劇ぽくていい。

前半では、悪いやつの憎々しい姿が存分に描かれる。

 

でも、最後には必ずやっつけられる。だから安心して見ていられる。

21時54分からの「報道ステーション」の前には、かならずやっつけてくれるのだから、その安心保証付きドラマを、ゆっくり見られるのだ。

「悪」が次週に持ち越されないところがありがたい

次週に持ち越される巨悪もバックに存在しているが、それはまた最終回でしっかり成敗してくれるのだろう、と信じて見ている。

『監察医 朝顔』は、いちおう毎回、何かしらのご遺体が出て、その死の謎について監察医たちが明らかにしてくれるドラマである。だいたい一話ずつ解決する。

また、家族の風景と、それに繋がる形での「2011年の震災」のその後を追っているドラマでもある。

事件解決ものでありながら、また、人の暮らしとやさしさもきちんと描く。

そういうしっかりしたドラマである。見ていてしみじみするドラマだ。

いまだからこそ、より沁みてくるようにおもう。

引っ張る力がすごいドラマ

『危険なビーナス』はサスペンスドラマ。

1話から謎が仕掛けられ、最終話までその謎が解かれない。

謎の構造そのものが最後までわからないサスペンスである。

「犯罪があってその犯人がわからない」という単純な構造になっておらず、そもそも犯罪らしい犯罪が起こっていないのだ。

誰が悪で誰が善なのか、誰が主人公(妻夫木聡)の味方で、誰が敵なのかがわからない、そこを楽しむドラマになっている。

途中で味方だとおもっていた人物が怪しくなり、敵だとおもっていた人物が味方だったり、そのへんの入れ替わりがスリリングである。

ただ、人間関係が少々ややこしくて、ぼんやり見ているとわかりにくい。

また、主人公の妄想が、妄想だという断りなくドラマの続きにふつうに入ってきて、ぼんやりしてると、筋を見失ってしまう。

おそらく主人公の視点さえも疑え、というメッセージなのだろうが、なかなか安心して見られるドラマではない。

だからこそ、どんな意外な結末が待っているのだろうと、引っ張られていく。

引っ張っられる要素は、やはり吉高由里子の力が大きいとおもう。

主人公の妻夫木聡は、義理の妹(という設定になっている)吉高由里子に翻弄されつつ、物語が進んでいく。その微妙な関係がまたドラマの味わいになっている。

この恋愛ではない三本が、いまのところこの秋の人気の高いドラマである。

ドラマも社会の空気にいろいろ影響されている。

『姉ちゃんの恋人』の最後にはこういうテロップが流れている。

「このドラマはフィクションです。演出の都合上、登場人物はマスクを着用しておりませんが、撮影は専門家の指導のもと安全に行っています。」

ドラマもまた、意外な部分から、少しずつ変わっていくのかもしれない。

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