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真面目に運営していても、「飲食店」だけが叩かれるシンプルな理由
去年のパチンコと同じ
よく読んでおこう
窪田順生
真面目に運営していても、「飲食店」だけが叩かれるシンプルな理由
ここまでくるともはや「反社」扱いではないだろうか。
7月8日、西村康稔経済再生相が酒類提供に応じない一部飲食店に対して、金融機関や取引先から働きかけてもらったり、利用客から「ぐるなび」などのクチコミサイトを通じて匿名で情報提供をしてもらったりする、という考えを示して大炎上し、「撤回」に追い込まれた。
これは当然といえば当然だ。表現がマイルドになっているだけで、本質的な部分では「暴力団排除」でやっていることと大差がないからだ。
例えば、暴力団の構成員や密接交際者だと判明した場合、金融機関で即座に取引が停止される。また、最近は多くの企業が商取引に「暴排条項」を盛り込んでいるので、反社認定されれば当然、取引もストップされる。また、全国の警察は暴力団を社会から撲滅するため、一般市民からの情報提供のために「匿名通報ダイヤル」なども設けている。つまり、「金融機関」「取引先」「匿名タレコミ」でプレッシャーをかけるのは、「国家として撲滅しなくてはいけない人々」に対して行われるものなのだ。
西村大臣は、それをカタギの商売人たちにやろうとしていた。しかも、法的根拠はゼロ。辞任せずに済んでラッキーくらいの「暴挙」と言えよう。
ただ、これは裏を返せば、今の日本において飲食店というものが、「どんなひどい扱いをしてもいい存在」となってしまった現実を示している。感染防止をしっかりやれと言うので、最後の力を振り絞ってしっかりやったら「酒を出すな」――。「命を守るため」「感染が広がってもいいのか」と逆ギレすれば、これまでは絶対に許されなかった特定事業者への差別・攻撃もギリ通ってしまう。そういう感覚の麻痺(まひ)が、西村大臣や周辺の官僚の状況判断を狂わせたのではないか。
そこで次に気になるのは、なぜ「飲食」はいたぶってもいいような扱いになってしまったのかである。いろいろなご意見があるだろうが、筆者はシンプルに飲食という産業が「弱い」ことに尽きると考えている。経済的にも政治的にも弱者なので、権力からスケープゴートにされてしまっているのだ。
●いじめられる正当な理由はない
と聞くと、「ワケのわかんない主張をするな! 飲食店をいじめているわけではなく、みんなの命を守るためにはしょうがないのだ」と声高に主張する人もいるだろうが、残念ながらそれは「ムード」に流されているだけと言わざるを得ない。
例えば、7月11日の感染経路を見ても、新規感染者614人の中で最も多いのは「家庭内」で113人、次いで「職場内」が54人。酒を提供する店があるせいで感染が広がっているというのは、科学的エビデンスが弱く、「フィーリング」に近いストーリーなのだ。
また、「みんなの命を守る」という点では、飲食店イジメは逆効果だ。
昨年いたるところで「医療が崩壊したら救える命が救えなくなる!」という悲鳴が上がったが、実は日本の超過死亡は減少している。日本では平時でも年間で約138万人が病気や老衰で亡くなっている。つまり、毎日平均すると3700人以上の死者が出ているのだが、昨年はそれが大幅に減少。コロナによる死者も例年のインフルエンザとそれほど変わらない水準だった。つまり、日本は他の先進国と比べたらケタ違いに「みんなの命」を守れているのだ。
しかし、そんな「善戦」の足を引っ張っているのが、飲食イジメだ。警察庁の発表によれば、6月に全国で自殺したのは1745人で、昨年同時期より173人増え、これで12カ月連続で自殺者が増加している。その中でも前年から2割弱と大幅に増えているのが、パートやアルバイトという非正規雇用で働く方が多い女性だ。ネチネチと飲食店イジメが続くことで、引き起こされている「経済死」が、非正規女性の自殺を増やしている恐れがあるのだ。
このような日本の状況を冷静に振り返って見れば、飲食店だけがここまで執拗(しつよう)にいじめられる正当な理由はない。しかし、現実はもはや「反社」扱いだ。ということは、論理的に考えれば、答えは一つしかない。
権力が飲食店をここまで執拗に叩くのは、「コロナ対策やってます」という政治的パフォーマンスのためであり、「いじめてもいい存在」だと軽んじているからなのだ。
●飲食店は影響力が弱い
「一生懸命コロナ対策をしてくれる政府や自治体の人間に謝れ!」というお叱りがあちこちから飛んできそうだが、客観的な数字や、飲食店が置かれている環境を冷静に見てみると、そのような結論にならざるを得ない。
例えば、もし権力者が「コロナ対策をしっかりやってます」ということを国民にアピールしようと考えて、どこかの産業を犠牲にしなくてはいけないといった決断を迫られたとき、「経済に最もダメージが少ない産業」が選ばれるのは言うまでもないだろう。
多くの人が働き、経済に占める割合が高い産業を犠牲にしたら、社会への悪影響を計りしれない。どうしてもマイノリティーがターゲットになってしまう。
では、それを踏まえて、今回4度目の緊急事態宣言があった東京都の「くらしと統計2021」の中の「経済活動別(産業別)GDP構成比(名目)の比較」を見てみよう。107兆円(平成30年度)というGDPの中でもっとも比率の少ない産業は、「電気・ガス・水道・廃棄物処理」(1.6%)だが、ここはライフラインなので、コロナ対策といえども犠牲にすることなどできるわけがない。
では、その次にGDPの比率が少ない産業は何かというと、もう予想がつくだろう。「宿泊・飲食サービス業」(2.2%)だ。
東京都のGDPの中で20.3%を占めているのは「卸売・小売業」で、「宿泊・飲食サービス業」の10倍弱。コロナで大打撃を受けている「飲食」「観光」という産業は、実は都市のGDP的には「マイノリティー」なのだ。
このような表現に違和感を覚える方も多いはずだ。よく日本は「飲食店が多い」と言われ、数字的に見てもそれは事実だ。福岡県が総務省統計などをベースにして「人口1000人あたりのレストラン数」(平成27年時点)を調べたところ、東京が6.22店でトップ。次いでパリ(6.15)、ロサンゼルス(2.37)、ニューヨーク(1.39)、ソウル(1.37)、北京(0.47)など他の都市は足元にも及ばない。
しかし、そんな「世界一の飲食都市・東京」の中でも、実はGDPの中で占める割合は2%程度なのだ。厳しい言い方だが、数が圧倒的に多いわりには、経済に対して影響力が弱いのが、「飲食店」なのだ。
●飲食店はマイノリティー
そして問題なのは、このような「影響力の弱さ」が、経済だけではないことだ。『「ふざけんなよと」怒り爆発 大手外食が“露骨に冷遇”されるワケ』の中で詳しく解説をしたが、実は飲食業界は政治へのロビイングが弱い。一応、「全国飲食政治連盟」などはあって活動はしているものの、自民党の政治献金の受け皿である国民政治協会に2億円ポーンと出して、各地の選挙でもバックアップしている、日本医師会などと比べたらまったくパッとしないのだ。
「だからってそれが飲食イジメにつながるかね」と冷笑する方も多いかもしれないが、ならばこの1年、現役の自民党議員で、真正面から日本医師会を批判している方がどれだけいるのかを考えてみていただきたい。
中川俊男会長の「会食」「パーティー」、さらには小さな民間病院の経営を守るため、コロナ病床を頑なに増やさないスタンスに対して、ネットやSNSでは痛烈な批判が多いが、政府や政治家が声高に叫んでいるのを耳にしたことがあるだろうか。
あまり思い浮かばないのではなないか。この国で政治家をやることは、どこかで必ず医師会の世話になる。自分がそうではなくとも、党や同志の選挙で医師会からの献金や応援に頼らざるを得ないのだ。だから、日本の政治は医師会イジメなど絶対にできない。
では、その「ゆがみ」はどこへ向かうのかというと、「イジメても問題のない人々」へ向かう。経済的にもダメージが少なく、選挙や献金的にもマイナスがない。それを消去法で考えていくと、ほとんどが個人経営で、従業員もアルバイトやパートという組織票につながりにくい「飲食店」しかないのだ。
「飲食店が政治的に重要視されなくても、飲食店も会員となっている商工会議所は政治的に影響力があるだろう」と勘違いしている方もいらっしゃるかもしれない。確かに、日本商工会議所をはじめとした、いわゆる中小企業団体は、自民党の有力支持団体の一つであり、現在の「賃上げ」議論にも大きな影響を及ぼすのは事実だ。
ただ、「商工会議所とは」(2021年4月現在)の会員企業の内訳比率を見れば、その中で飲食店の影響力が微々たるものであることが分かる。20%超えが「卸売・小売業」で、15%超えが「建設業」、次に多いのが「製造業」となっている。では、「宿泊業・飲食サービス業」はどうかという、10%にも届いていない。
日本商工会議所という政治的勢力の中でも、飲食店はマイノリティーなのだ。
●良かれと思ってやったこと
このような話を聞くと、「こいつは政府をどこまで悪者にすれば気が済むのだ」と怒りでワナワナと震える方も多いかもしれないが、筆者は政治家に対して、「選挙のために飲食店をいじめる人でなし!」などと批判をするつもりは毛頭ない。彼らも彼らなりに「日本のため」と考えている。むしろ、「日本のため」という考えが強すぎるため、視野を狭めて、無意識に弱者イジメをしてしまっているのだ。
要するに、西村大臣が無邪気に飲食店を反社扱いしたのとまったく同じで、飲食店をイジメる気などサラサラなく、「これが日本のため」という感じで、良かれと思ってやったことが、結果として「飲食店イジメ」につながっているのだ。
この無意識に弱者を犠牲にすることを、日本の為政者はよくやってしまう。代表が、沖縄戦だ。よく大本営の人間たちは、沖縄の人々を「捨て石」にしたと言われるが、当時のエリートたちはそんな悪魔のような発想をしていたわけではない。
国体を維持するためには、本土決戦までの時間をできる限り稼いで、米国の戦力を少しでも奪っていなければいけない。この目的を達成することがすべてなので、沖縄の日本軍は即時撤退も降伏も許されなかった。だから、追いつめられると、南部へと逃れて沖縄の住民を盾にするようにして徹底抗戦した。軍隊として最低の振る舞いだが、「日本を守るため」という崇高な目的のためにはしょうがないと考えられた。
つまり、沖縄を犠牲にしようとしたのではなく、「日本のため」という目的で頭が一杯で、良かれと思ってやったことが、結果として「沖縄の人々の命を捨石にする」という、近代史上にまれに見る冷酷な人命軽視作戦となってしまったのだ。
●悪いクセが出てきた
今回の「戦争」でもそういう悪いクセが出てきた。「コロナ死を防げ」「医療体制を守れ」という目的で頭がいっぱいで、良かれと思ってやっているコロナ対策が結果として、飲食店やそこで働くパート・アルバイトなどの「経済的弱者」を捨て石にしてしまっている。沖縄の住民とまったく同じ扱いだ。
今年もあと少しで敗戦の夏だ。なぜ「日本を守る」ことを朝から晩まで考えていた学歴エリートたちが、多くの国民の命を紙切れのように扱うことができたのかを、歴史から真剣に学ぶべきときではないか。
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