Shane Snow

Smartcuts Accelerating Success (Shane Snow)

 

 

人生も仕事も「近道」を選べ! “時間をかけずに成功する人”の作法を教えます

おばあちゃん、友人、好みの異性。誰を選ぶ?

激しい雷雨のなか、車を運転していると、前方にずぶ濡れで歩いている人がいる。

よく見ると、足元のおぼつかないおばあちゃんだ。それから、昔とても世話になった友人の姿も見える。さらに道の反対側には、恋人にしたいほど素敵な異性も目に入った。
できることならみんなを車に乗せてあげたいが、あいにく空いているシートは1つ。誰を助ければいいのか。

1つの椅子に3人の候補とはなかなか悩ましい。助けられなくても一番波風が立たないのは誰か、あるいは一番喜んでくれるのは誰か、見返りが大きそうなのは誰か……。

ポスト・マルコム・グラットウェルの問いかけ

板挟みの状況のなかで、3人を天秤にかけてあれこれ悩むのが普通だろう。

「いっそのこと3人を見なかったことにすればいいんだ。傘を持ってこないほうが悪いんだから!」

悩むのが面倒になって、こんな考えさえ頭をもたげるかもしれない。

我々は、こんなふうに、いつも板挟みに苦悩しながら生きている。仕事の場面でもそうだろう。そしてなかなか芽が出ない、成果が上がらないと嘆いている。
だが、そもそも悩みの前提自体が間違っていると指摘するのが、シェーン・スノウ著『SMARTCUTS 時間をかけずに成功する人 コツコツやっても伸びない人』だ。

シェーン・スノウは、米「フォーブス」誌の「アンダー30(30歳未満)のメディア・イノベーター30人」に選定されるなど、「ポスト・マルコム・グラッドウェル」とも評される気鋭の若手ジャーナリスト。
冒頭で紹介した雨のドライブの話は、本書でスノウが読者に投げかけたクイズだ。

さて、ずぶ濡れの3人のうち、誰を選ぼうか?

板挟みの“板”はどこにあるのか?

スノウに言わせれば、「おばあちゃんに決まっている」。

ああ、やっぱり一番困ってそうな人を助けるという現実的な判断か……といえば、そうではない。

スノウの説明はこうだ。
まず、おばあちゃんを乗せてから、自分は車を降りて世話になった友人にキーを託し、おばあちゃんを送ってもらう。そして自分は意中の異性に声をかけ、しっぽり雨宿りしながら一緒にバスを待つ。

前提条件にがんじがらめになって、苦し紛れの小さな答えを絞り出しても大した成果は出ない。
ひょっとしたら「今回は友人には涙をのんでもらおう」などと、余計な罪悪感さえ覚える人もいるかもしれない。

そうではなく、「1つの椅子に3人の候補」とか「助けられるのは1人だけ」といった前提条件を疑い、まったく違う発想で解決策を見つければ、“一石三鳥”のブレークスルーにつながる。

そもそも、あなたは3人とも助けたかったのではなかったか。それが最大にして最高の目的だったはずだ。ならば、2人に泣いてもらうなどと最初から考える発想自体を、改めなければならない。

だいいち、自分が車に乗っていなければいけないなどと誰も言っていない。
与えられた状況から、自分が勝手にそう決めつけていただけで、問題の前提条件ではなかったはずだ。板挟みだと思っていたが、そんな“板”など最初からなかったのだ。

シェーン・スノウPHOTO:LUCAS LEE

シェーン・スノウ
PHOTO:LUCAS LEE


短期で結果を出す人は「ラテラル・シンキング」の達人

思い込みを振り払い、常識を疑い、斬新な解決策を見つけ出す発想は、「ラテラル・シンキング(水平思考。既成概念にとらわれず、いろいろな角度から問題を解決する手法)」と呼ばれる。

世の中には目の前のハードルを労せずに乗り越えて、あれよあれよという間に大きな成果をあげたり、目標を達成したりする人がいる。
そういう人々を見て、スノウは常々疑問に思うことがあったという。

「彼らは、なぜあれほど短期間で結果を出せるのか?」

その疑問を解明すべく、鮮やかに出世の階段を駆け上がったり、下積みなしにいきなりトップに躍り出たりした歴史上の偉人から経営者、ポップミュージシャンまで、成功者たちの研究に取り組む。
長時間に及ぶ調査やインタビューを繰り返し、数えきれないほどの学術論文を読みあさった。

その結果、こういうスマートな戦いかたができる人は、ラテラル・シンキングを上手に使い、黄金の行動パターンをうまく組み合わせていることがわかった。

スノウによれば、その極意は実に「ハッカー的」だという。
あの雷雨のなかで、最大の成功を収める(つまり弱者を救い、恩人にお返しをし、素敵な異性と知り合う)ためには、自ら車外に飛び出してずぶ濡れになる発想の転換が必要だった。実は「これこそハッカーたちの発想法だ」とスノウは指摘する。

時間をかけずに成功を手にした人々は、そろってこのラテラル・シンキングの実践者たちだ。
スノウはこうした成功者たちの足跡をていねいにたどり、そこから黄金の行動パターンを抽出している。本来時間をかけるべきでない部分は賢く回避し、力を入れるべきところに力を注いで、最大の効果を最速で手にしている。

型破りな成功者には「なぜ?」がいっぱい

本場”に行ってキャリアを底上げする

時間をかけずに成功する人のルートの取りかたは、「単なる手抜き的な近道=ショートカット」ではなく、「賢い近道=スマートカット」だと著者は分析する。

本書では、そのスマートカットを具体的な事例とともに解説している。

たとえば、世の中では昔ながらの下積み生活や「苦節○○年!」など、コツコツ努力すること自体が美談のように語られる。
だが、実際に短期間で成功している人々は、ある分野で出世の階段を途中まで上がったら、別の階段に飛び移り、新たな成功をめざす傾向がある。
また、小さな成功を元手にもっと大きなチャレンジを成功させて、一気に大輪の花を咲かせている。

実績を売り込むなら、活動場所も考えたほうがいい。
スノウによれば、ライバルの少ない楽な場所で実績を積むのではなく、あえて競争の激しい“本場”を経験し、自分のウリに箔をつけることだ。

「シリコンバレーで働いていた」と言えば、どれほど小さな企業にいたとしても、人の見る目が違ってくる。シリコンバレーという土台が自分の能力を底上げしてくれるからだ。

また、1人でコツコツやるよりも、その道の達人、つまりメンターに教えを請うのも一気に成功するスマートカットになる。
ただし、会社で形式的にあてがわれるようなメンターではなく、自然な形で意気投合して出会うようなメンターを見つけられないと、師弟関係はうまく機能しなくなる。

「運の良さ」は観察眼と努力のたまもの

さらに、短期間で成功する人は、運を天に任せるのではなく、地道な観察で運に巡り合えそうな場所を突き止めておき、何かあれば即座に駆けつけられる態勢を整えている。

スノウは、天才サーファーを例にこのポイントを説明している。

天才サーファーは、大会の何時間も前から浜に立ち、その日の海の大局観をつかんでおくという。そしてベストの波が来そうな場所を見極めておき、あらかじめその近くを漂いながら、タイミングを待つのだ。

その本番前の見えない努力を知らない観客から見れば、「あの選手は運がいい」となるのだが、実際には、いわば努力で作られた運の良さなのだ。

また、人脈をコツコツ広げていくのではなく、たくさんの人脈を抱える“人脈持ち”と接触することも、一気に成功をつかむ近道になる。

もちろん、スマートカットではなく、単なる手抜きのショートカットに頼って失敗した人々も、本書では次々に紹介される。

ショートカットは、「時として道徳感の欠如や節操のなさにつながる」と手厳しい。スマートカットについてスノウは、「がんばりたくない人のための虎の巻ではないし、安易な商売をするための指南書でもない」と釘をさす。

あくまでも「いつ来るかわからないチャンスをじっと待つのではなく、自らの手で運を切り開こうとした人々の成功物語」をお手本に、極意であるスマートカットを抽出したのが本書なのだ。

型破りな成功者には「なぜ?」がいっぱい

スマートカットを知らない普通の人は、世の中の型破りな成功者たちにたびたび驚かされ、たとえば以下のような疑問を持つことになる。

●数学の天才たちが「子どもたちに九九など不要、電卓を持たせればいい」と主張するのはなぜか?

●米国政治の最終到達点のように見える大統領というポストだが、実は平均年齢で言えば、上院議員よりもずっと若いのはなぜか?

●同僚外科医の失敗を見た医師の手術成功率が上がるのはなぜか?

●数学、理科、読解力の国際的な調査でフィンランドがトップに躍り出たのはなぜか?

ちなみに電卓問題については、昔から教育論の議論の対象になっている。計算機に関する学術研究の圧倒的多数は、「電卓のような道具を活用することで概念的な理解力が高まる」と結論づけている。
いっぽう、「子どもに電卓なんてとんでもない、子どものうちは機械に頼らず、基本的な算数を身に付けるべき」というのが電卓反対派の言い分だ。

「成功の最短ルート」は常に更新され続ける

「なんだかんだ言って、電卓禁止も一理ある」……そう思ったあなたは、もしかしたら常識にがんじがらめになっている人かもしれない。

スノウの著書からちょっと引用しよう。

実は15世紀から似たような論争が繰り返されている。
当時、イタリアのそろばん名人らが、伝統的なローマ式アバカス(古代の西洋算盤)を使わずに、ペンと紙と公式を使って数学を教えはじめた。学者たちは「公式や算法に頼っていたら、考える力を失う」と血相を変えて抗議したらしい。

なんと、数世紀前には、ペンと紙と公式を使って解く解法は、当時の常識派からさんざん批判されたというのだ。

我々の常識に根ざした正攻法は、本当に「正」攻法なのかはなはだ怪しいし、むしろ骨折り損だというのがスノウの主張だ。
歴史をさかのぼり、数々の成功者たちの軌跡をたどって、彼らの行動をつぶさに観察してきたスノウは、こう読者に語りかけている。

「僕らが慣れ親しんできた常識やルールはいくらでも工夫の余地があることをまずは知って欲しい。成功の最短ルートは、従来のやりかたとは違うところにある」

『時間をかけずに成功する人 コツコツやっても伸びない人 SMARTCUTS』シェーン・スノウ 著 斎藤栄一郎 訳 講談社地道にじっくり、ていねいにやれば、成功……しない。●ゼロから起業してすぐ億万単位を稼ぎ出すスタートアップ起業●動画投稿で、化粧品ブランド御用達のメイクアップアーティストになった女子大生●九九を教えず電卓を使わせることで、子どもたちを世界トップレベルの学力水準に押し上げたフィンランドの教育●創業6年でロケット打ち上げを決行、失敗後わずか5週間で改良版ロケット打ち上げを成功させたイーロン・マスク彼らはみな、SmartCutsをしていた!  「SmartCuts 賢い近道」と「ShortCuts単なる近道」はまったく違う。 「ShortCuts」は従来型の省略やサボリ。成功につながる努力を最大限にし、つながらない努力はいっさいしないのが「SmartCuts」である。

『時間をかけずに成功する人 コツコツやっても伸びない人 SMARTCUTS』
シェーン・スノウ 著 斎藤栄一郎 訳 講談社
地道にじっくり、ていねいにやれば、成功……しない。
●ゼロから起業してすぐ億万単位を稼ぎ出すスタートアップ起業
●動画投稿で、化粧品ブランド御用達のメイクアップアーティストになった女子大生
●九九を教えず電卓を使わせることで、子どもたちを世界トップレベルの学力水準に押し上げたフィンランドの教育
●創業6年でロケット打ち上げを決行、失敗後わずか5週間で改良版ロケット打ち上げを成功させたイーロン・マスク
彼らはみな、SmartCutsをしていた! 
「SmartCuts 賢い近道」と「ShortCuts単なる近道」はまったく違う。
「ShortCuts」は従来型の省略やサボリ。成功につながる努力を最大限にし、つながらない努力はいっさいしないのが「SmartCuts」である。


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