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出生数80万人割れ」「東京への“一極集中”加速」の日本で、いま起きている「想像を絶する事態
加谷 珪一
「出生数80万人割れ」「東京への“一極集中”加速」の日本で、いま起きている「想像を絶する事態」(現代ビジネス) - Yahoo!ニュース
日本の出生数が80万人を割り、予想をはるかに上回るペースで人口減少が進んでいる。一方、コロナ禍で停滞していた人の移動が活発化し、首都圏への人口集中が再び強まっている。この2つの出来事は互いにリンクしており、日本社会の姿を大きく変えようとしている。
「異次元の人口減少社会」へ
厚生労働省の人口動態統計によると、2022年の出生数は前年比で5.1%減の79万9728人となり、比較可能な1899年以降、初めて80万人を割った。これは政府推計より11年も早いタイミングである。日本の人口が今後、急激に減少することは以前から予想されていたことではあったが、そのペースがさらに加速している。日本は従来の常識が通用しない、まさに異次元の人口減少社会に突入したと見てよいだろう。
一方、総務省が発表した2022年の人口移動報告によると、東京都の転入超過(転入者が転出者を上回る状態)は3万8023人となり3年ぶりの増加となった。コロナ禍で停滞したかに見えた東京一極集中の流れが再び強まったと判断できる。
出生数が80万人を割り、急速に人口が減っているという話と、東京への転入者が増えているという話はバラバラの出来事に見えるがそうではない。両者には共通要因が存在しており、人口減少と都市部への人口集中はセットになっている。
まずは出生数について見てみよう。出生数が低下して人口が減ると、生産年齢人口の割合が低下して、製品やサービスの供給力が減少する。これによって経済成長が阻害されるとの危機感があり、出生数を増やす必要があると多くの人が考えている。だが現実には、出生数は増えるどころか減る一方であり、社会は多くの国民の希望とは逆方向に動いている。
では、なぜこのような矛盾した事態が生じているのだろうか。最大の理由は、出生数が低下することによって発生する経済的負担についてほとんど考慮されていないからである。
日本社会が「目を背ける事実」
日本では高齢化によって現役世代(特に若年層)の比率が低下しており、現役世代が多くの高齢者を支えているが、ここで出生数を急に増やした場合、問題は解決するどころかさらに深刻化する。というのも、現役世代は、高齢者に加えて、増えていく子供の生活も支えなければならず、想像を絶する負担が現役世代にのしかかってくるからだ。
2人の子供を大学まで行かせるには最低でも1500万円近くの出費が必要となる。この数字は国公立の学校に自宅から通ったケースであり、私立の大学に自宅外で通学した場合には、金額は2倍以上に跳ね上がる。ここまでくると、もはや平均的な世帯収入で対処できる金額ではない。高額な教育費や住宅ローンを支払い、さらに高齢となった親の面倒をみるというのは、富裕層でもない限り不可能である。
出生率低下の背景には、こうした経済的事情が関係しており、ここを金銭的に解決できる施策が実施されない限り、出生率は決して上昇しないだろう。
都市部への人口集中についても同じことが言える。
一般的に人口が減少する社会においては、都市部への人口集中が進むのはごく自然な現象といってよい。人口が減少していくと商圏を維持できない地域が増えてくるため、人々は雇用や生活インフラを求めて都市部に移動し、都市部への人口集中が進んでしまうのだ。実際、地方では、定年を迎えて行動が自由になった高齢者のうち、経済力のある人から順に、近隣の都市部に越していくケースが多数、観察される。
過疎化を食い止めるには、過疎地域に住んでいても、都市部に生活している人と同程度の雇用や生活インフラを提供する必要があり、それには相応のコストを必要とする。拠点が分散する広域経済圏を維持するには、莫大なコストがかかるという現実から多くの人が目をそらしており、これが過疎化の最大要因となっているのだ。
さらに問題を複雑にしているのが、地方から首都圏への人口移動と、各地域において過疎地域から都市部への人口移動が同時並行で進んでいることである。
「人の移動」は「経済活動」
多くの人は、移住や地方経済について議論をする際、首都圏への一極集中問題と、各地域での都市部への人口集中(地域の過疎化)の問題を無意識的に混同している。
例えば、首都圏への一極集中を是正する政策を実施した場合、首都圏から地方への人口移動は進むだろうが、首都圏からの移住者の多くは、各地域の拠点都市に定住する可能性が高い。結果として各地域の拠点都市は、首都圏からの人口流入で便利になり、これが逆に過疎地域から拠点都市への移住を促進してしまう可能性がある。これを防ぐためには、首都圏から地方へという流れを維持すると同時に、地方の拠点都市から過疎地域への流れを確保する政策を同時並行で進めなければならない。
人の移動というのは、経済活動そのものであり、これらはすべて相互に関係している。経済の視点を欠いたままでは、過疎化の問題は決して解決しないのだが、社会全体としてそうした認識は薄い。
コロナ危機によってリモートワークが普及したことから「田舎暮らし」がある種のブームになっている。筆者自身はコロナ危機以前からリモートワークの導入を強く訴えてきた立場であり、場所を問わない働き方が普及するのは喜ばしいことである。
だが、政策について議論する際には現実を見据えることも重要である。
現時点で、完全にリモートワーク化を実施できるのはごく一部のエリート層だけであり、多くの労働者は、何らかの形で現場への出勤が求められるケースが多い。こうした現実を顧みずリモートワークによって過疎地域への移住が進むといった話をしても、政策として効果を発揮させるのはほぼ不可能だろう。
地域拠点への集約化が必要
つまり一連の問題はすべて経済的負担の話であり、十分な支援を行わない限り、抜本的に状況を改善するのは難しい。では、こうした状況について私たちはどう対処すればよいのだろうか。
もっとも単純なのは、国民負担を大幅に増やすことによって、子育て世帯や、過疎地域への移住者に対し、高額な経済支援を実施することである。加えて各地域で雇用が発生しやすいよう、官庁は率先して各地域に拠点を移すといった措置も必要となるだろう。税制にもメリハリをつけ、企業が東京に本社を構えると、税制上、著しく不利になるといった制度も検討する必要がある。
だが、莫大な国民負担が生じる一連の政策について、多くの国民が賛成するとは到底、考えづらい。むしろ、都市部への人口集中が発生するという現実を一定程度、受け入れ、悪影響を最小限にする現実的な政策を模索する方が合理的だと筆者は考える。 政府は以前から、各地域において可能な限り地域拠点への人口集約を進める「コンパクトシティ」と呼ばれる政策を進めてきたが、あまりうまくいっていない。今後は、拠点集約化を最重要政策に据えるなど、抜本的な政策転換が求められる。
この政策によって一部の集落は消滅するかもしれないが、限界集落が多数、出現することで多くの世帯が孤立するといった事態は避けられる。また地域拠点に人口が集約化されれば、サービス需要が拡大するため、雇用と教育機会の拡大が望めるだろう。地方移住における最大のネックが雇用と教育であることは自明の理であり、地域拠点への集約化を進めることで、一連の問題を解決できる道筋が見えてくる。
一方、首都圏では、上記の施策を行ったとしても、人口の流入は続く可能性が高い。人口増加に対して、新築の住宅供給数は増えておらず、今後、多くの人が住宅難民になる可能性が高まっている。住宅不足が予想されるのであれば、政府や自治体が積極的に良質な公的賃貸住宅を提供する必要があるだろう。
これまでの時代は、少子化による成長阻害や過疎化による商圏の消滅は、将来の話であって、今日、明日の問題ではなかった。だが、こうした態度はもはや通用しない段階まで事態は進行しているのが現実だ。
加谷 珪一
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