最高裁のあり方根本的見直しを 福井県立大学名誉教授・島田洋一

 

【正論】最高裁のあり方根本的見直しを 福井県立大学名誉教授・島田洋一

民主国家においては、最高裁人事は最高度の政治闘争である。米国では良くも悪くもその意識が徹底している。

議会の上下両院が通し大統領が署名して成立した法律を、連邦最高裁(定数9人)はその多数決で、すなわちわずか5人の判断で無効化できる。あるいは議会全体として合意が得られない、ないし議会は通過したが大統領が拒否権を発動して成立に至らない問題についても、国民の選挙を経ていない「5人の法官」が判断を下し得る。その決定は往々にして、米国社会を根底から揺るがす。特に保守派が「判事席からの立法行為」と批判する営為である。

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最高裁のあり方根本的見直しを 福井県立大学名誉教授・島田洋一(産経:正論)|防衛ニュース

米最高裁人事を巡る闘争
民主国家においては、最高裁人事は最高度の政治闘争である。米国では良くも悪くもその意識が徹底している。
議会の上下両院が通し大統領が署名して成立した法律を、連邦最高裁(定数9人)はその多数決で、すなわちわずか5人の判断で無効化できる。あるいは議会全体として合意が得られない、ないし議会は通過したが大統領が拒否権を発動して成立に至らない問題についても、国民の選挙を経ていない「5人の法官」が判断を下し得る。その決定は往々にして、米国社会を根底から揺るがす。特に保守派が「判事席からの立法行為」と批判する営為である。
最高裁人事が政治闘争の最激戦地と見なされるのは当然だろう。よく「大統領を獲(と)るのは2権を獲ること」と言われる。上院の承認という関門が待つものの、最高裁に空席が生まれたとき、後任を指名する権限を持つのは大統領である。行政の頂点であるホワイトハウスの鍵を摑(つか)むことが、同時に司法の最高機関の構成を左右することに繫(つな)がる。
現在、米最高裁の勢力図は、保守派6人対左派3人だが、2016年の大統領選で民主党のヒラリー氏がトランプ氏に勝っていれば、全く逆の構図になっていただろう。左派が好む判決が次々出されたはずである。分断が先鋭化する米国で、大統領選がますます「仁義なき戦い」の様相を呈する大きな理由の一つがここにある。

日本の最高裁はどうか
翻って日本の状況はどうか。現行憲法は「最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である」と規定する(第81条)。
日本の最高裁は法文上、米最高裁以上に強大な権限を有する(米国憲法は裁判所の違憲立法審査権を明文化しておらず、最高裁が判例を通じて自己付与してきた)。
ところがその極めて重大な最高裁の人事に関して日本社会は、あまりに無防備であり続けている。長官、判事合わせて15人の思想傾向はおろか経歴や名前すら知る国民はほとんどいないだろう。
上院の承認が必要な米国と違い、日本では事実上、内閣総理大臣(および側近数名)の一存で判事人事が行われる。
現在、会計検査院はじめ39機関の委員等のポジションが、衆参両院の承認を要する「国会同意人事」となっている。ところが、それらよりはるかに重要な最高裁人事に国会は全く関与できない。
「こんなバカな話があるか。憲法を改正して国会の同意人事とし、首相が指名した候補者に公開で質疑応答を行い、個々の議員の賛否を明らかにする透明性ある形に変えるべきだ」との声が、当事者たる国会議員の間から当然上がるべきだと思うが、なぜか全く上がらない。
そのため、各種利益集団による密室談合の結果を首相が惰性で追認する不適材不適所人事が後を絶たない。
還(かえ)ってきた5人の拉致被害者を北朝鮮に送り返すよう主張した外務事務次官や、平和安全法制に反対した内閣法制局長官を「論功行賞」で最高裁判事に任用した例など正に言語道断だろう(詳細は拙著『腹黒い世界の常識』参照)。
その最高裁が9月27日、生殖能力をなくす手術を性別変更の要件とした現行の「性同一性障害特例法」は差別的で違憲とする申立人の弁論を聞き、即日結審した。
かつて合憲判断を示した最高裁が改めて大法廷で審理する以上、判例を覆し、手術なしで性別変更可能とする方向で決定を下すのではないかとみられている。

憲法改正すべきだ
ちなみにトランスジェンダー問題について米最高裁は、雇用差別は許されないとした以外は、多数を占める保守派判事が、連邦議会や各州の動きを見守る「抑制的司法」の姿勢を堅持しているため、何らの判断も下していない。
そうした状況下、保守派が強いフロリダ州等では、「法令上の性別」は出生時の生物学的特徴によって定まり、以後、性転換手術を受けようが受けまいが変えられないとの立場を州法で成文化した。
手術で法的な性を変更できるとすると、性別違和を感じる若年者が手術を急ぎ、後に激しく後悔する、取り返しのつかない事態を招きかねないからである。
本人がトランスジェンダーを主張し、周りがそう遇するのは自由だが、「法令上の性別」は変えられない、となれば手術を急ぐ理由は少なくとも法的にはなくなる。
日本のように、手術を要件とした「特例法」を作ると、必ず次の段階として、肉体的、経済的に負担の大きい手術を強いるのは人権侵害だとする今回のような訴訟が起こされる。特例法を廃止し、「法令上の性別」変更は不可とした上で雇用差別を禁じるなどの措置を講じるのが正解ではないか。
最後に繰り返せば、最高裁判事は「内閣が指名し国会が承認する」と憲法改正すべきである。まさか反対する国会議員はいないだろう。(しまだ よういち)

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