ユダヤ陰謀論のデタラメさ

宮崎正弘の国際ニュース・早読み
(読者の声3)貴誌2533号の有楽生氏による(読者の声2)に接見を加えさせていただきます。
まず、「3月8日のサンプロに田中眞紀子が出た時に田原総一朗が田中角栄をやったのはアメリカとユダヤだと発言。」という箇所を見て、流石に田原総一朗は若い頃に共産主義国ソビエトに憧れていただけの事はあると感心しました。
何故か?というと、実はソビエト連邦崩壊まで「ユダヤ陰謀論」なるものを西側諸国で必死に広めていたのは、泣く子も黙る彼の国の諜報機関KGBだからです。近日中にその引用を書きます(探し中)が、昨年廃刊になった諜報専門誌『ワールド・インテリジェンス』誌のVol.8には気鋭の若手諜報専門家である橋本力氏による元KGBのワシリー・ミトロヒン氏と英国諜報史の大御所クリストファー・アンドリュー氏の共著『ミトロヒン文書?』についての解説があります。
http://gunken.jp/blog/archives/2007/09/12_1100.php
 それによると、冷戦中にKGBは積極的にユダヤ陰謀論を流した。目的は中東などに於ける米国の信用を傷付けて立場を弱める為であったという。世界最大のユダヤコミュニティーを抱える米国は同時に国際貿易を推進する立場にあり両者の利益は重なって見えるので米国はジレンマに陥る事になったというものです。
「アメリカとユダヤ」というわけです。

さて、我が日本でもユダヤ陰謀論を広めた太田龍という男はバリバリの共産党員。またその先輩格の宇野正美は学生時代左翼運動のリーダー。両者はKGBの影響を受けやすい思想、立場、身上であったという点に公安等が注目しなかったとしたら不思議です。
ちなみにソ連の前身帝政ロシアの秘密警察オフラナは『シオン長老の議場書』の創作者。KGBはイデオロギーを超えて、そのロシア諜報の伝統を継承したのでしょう。
同書は日本にはシベリア出兵の時に白系ロシア人が持ち込んだのが広まる機会でしたが、旧日本軍情報部は直に偽書と判断する能力を有していた一方で宗教家など民間人や一部軍人が信じ込んだようです。
面白いのは「ユダヤの陰謀」とか言う場合に、ユダヤ人の誰と誰が、あるいはどの機関がという具体性が全く欠けている事です。これでは話になりません。例えば、ロスチャイルド家のA氏がBという秘密計画を持っているという事を誰か(どこか)が盗聴に成功してメディアにリークというのも一度も無い。
「ユダヤの圧力団体サイモン・ウィーゼンタール・センターが抗議活動をとる動きがある。」という事ですが、このケースでは当然そうなるでしょう。これは田原氏に「ユダヤ人が関わった」という立証義務が生じますが、何れにせよ『マルコポーロ』廃刊は悪い前例になりました。
ウィーゼンタール・センターは廃刊しろとは要求していないのに文芸春秋のいい加減な対応をしたのが今日までの衰退に遠因したのではないでしょうか。「ユダヤの虎の尾を踏んだ」と言っても、相手は濡れ衣と思っている訳ですから注意が必要です。

なお、同項の宮崎先生のコメントで、「サイモン・センターは南京問題で在米の反日団体と協同するので、要注意。」というのは尤もです。中国は米国ユダヤ人の歓心を買い、日本の影響力を弱めて日米関係に亀裂を生じさせたい。
ユダヤ利用論は中国の壮大な世界戦略の一環です。
中国はかつてユダヤ社会があった旧満州ハルビンに壮麗なユダヤ博物館を建てて、如何に(実際に保護したのは日本なのに)中国がナチス等に迫害されたユダヤ人を保護したかという歴史改竄まで始めている。
ここでも黙って置くと日本が何時の間にか(単にナチスと同盟しただけの)悪者にされてしまいます。

貪欲な中国は米国ユダヤ人の政治経済力もさる事ながら、イスラエルの技術も吸い尽くしたい。
一方、イスラエルは莫大な中国市場に目が眩んでいるが両国の関係は接見では「狸と狐の騙し合い」。
具体例として、数年前イスラエルは北京に新しい大使館を建てましたが、早速工事中に中国情報機関は盗聴器を建物に設置。だが、敵もさる者でイスラエル防諜部シャバックは直にそれを見つけ出した。
ここで我国を振り返れば恐らく中国各地の日本大使・領事館などは盗聴されまくりでしょう。情けなぁ~。
さらに中国は人員養成の為に両国国交20年を待たずして、某外国語大学にヘブライ語科を創設。鈍い日本はイスラエルと国交樹立50年以上になるのに、未だヘブライ語学科を擁する大学は無い。
中国はイスラエルに於いても諜報活動を活発に行っており、数年前秘密警察シャバック内には中国担当部局が設置。
ちなみに(舐められたもので)日本担当部局は未だ存在しない。また、イスラエル対外諜報機関モサッドも中国で諜報活動を積極的に行う中国部局があるが日本部局は無い。
さて騙し合いをしながらも続けてきた両国の軍事交流は米国軍部を苛立たせてしまい、現在、ペンタゴンではイスラエルに親戚がいる候補者を採用しない方針と数年前にイスラエル紙が報道。これは、あまり知られない「アメリカとユダヤ(イスラエル)」の一面です。

そうして犠牲を払ったイスラエルは戦闘機の技術を中国に吸い上がられた後に「中国国産機」をイランやシリヤなど敵対国に売られて安全保障が脅かされるという間抜けぶり。こうして見るとユダヤ万能論やモサッド万能論は中国の世界戦略の前に霞んで見えませんか?
   (doraQ)


(宮崎正弘のコメント)拙著『ユダヤにこだわると世界が見えなくなる』で、ユダヤ陰謀論のデタラメさを書き尽くしました。KGB原作と言うよりロシア皇帝時代の秘密警察が淵源でしょうね。




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