にざかな酒店

キラーワーズ外伝~なぎくんちのおねえさん~

というわけで、今回はちょっとした雑談のような話です。
あんまりこのシリーズ的な怖い事も起こらないのですが、地味にこういうのあったら怖いなあ怪談を盛り込んでおりますよ。
ちなみに、凪は二話に出てきた男の子です。
では続きでどうぞ。
身近な死と、行方不明が二件立て続けに起こった。
何か、うなじに小さな火をつけられ、じわじわと燃えているかのような、そんな感じがする。
って、この表現ちょっとおかしいな。
燃えてるんだったら、ちょっとほっこりしてる感じだろ。と俺は自分の思った事に突っ込みを入れた。
セルフ突っ込みだ。
俺の考えてる事はこんなだから、いつもなかなか話がすすまない。
だから、か。
危機的状況といえばそうなのに、なんとなくだらけているような気もする。
知っている人間が死んだ。いなくなった。なのに、どこか他人事だ。
きっとそれは俺自身が寒いのだろう。
この辺の怪談を、話したら一人は死んでひとりはいなくなったのだ。
怪談。
それで思い出した。なんとなく怖い怪談に詳しい一人暮らしの姉が俺にいるではないか。
ちょっと電話をかけてみよう。

「キラーワーズ?私はそれ、聞いた事ないけど」
話しだすなりあっさりと言われた。
「でもそうねえ。この近くにはもっとこわい、ダサ子って怪談があるわよ」
「ダサ子?」
俺は思わず聞き直した。
「サダ子じゃなくて?」
「間違ってない、ダサ子。」
って言われても、それ怪談に聞こえないぞ。
「なんかね。髪の長い、みるからにださい感じの外見で、誰がみてもーって感じなんだけど、見てださいって思うと思った人が消えちゃうの」
「………いやそれ。」
怖いのか?
「多分あれね。こないだ起こった事件で犯人に気持ち悪いって言ったら襲われたって話からきてるんでしょうね。」
「ダサ子…いまいち、なんていうか、怖さがわからん」
俺は素直にそう答えた。
「ああそうね、あんたちょっと鈍い…っていうか、あんまり他人に興味ないからね」
まあ確かに、いちいち通行人見て気持ち悪いだのかっこいいだの思う方じゃないなあ。
芸能人とかもほんとなんとも思わんし。
どう思うって言われても、ほんと白紙。
「客が乗り込んでも終点までいってるのに誰もおりないバス、いつまでたっても終わらない工事現場、誰も開店してるの見た事ない店、とかも見事に怖さスルーされたもんね…」
はあ、とため息をつく姉。
「まあ無駄に怖がるのもいい事と思えないけどちょっとは恐がりなさいよ…で、どうなの」
「どうなのって?」
「わざわざ電話かけてくるってことは、そのキラーワーズは怖いの?」
「ほんとに死んでるからな」
俺はしみじみと答えた。
このうなじの火は、怖いからか。
ただ、怖いという正体をつかむと、怖さが薄れる気がする。
怖いと思う事。
それ自体が怖いのだ。
「気をつけないと、気づいたら火の中だからね」
わかってる。
怖さは怖さで生きて行く本能であるということくらい。
俺は。
どうやら本当は怪談や怪談のような事実が好きだったらしい。
嫌な自覚だ。
電話、しなきゃよかった。
あんまり知らなくていい事実っていうのは、呼んでもなくてもくるなんだなあ。
俺はこれから、自分から怪談は振らないことを、姉に誓った。
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