にざかな酒店

我が龍神7話

というわけで、案外子供っぽいクラウフさんという感じになってしまいました。では続きどうぞ。
「我が名はクラウフ・シュナイダー。世紀の科学者である。」
薄暗い部屋で、何やらぶつぶつ呟く男が一人。それなりに皺が深い。似合わぬペンギンの置物に呟いているようだ。
ペンギンの置物のように見えるそれは、呟きに答えてえんじ色のペンをさっととりだし、同じ色のノートブックになにやらかきつけた。
『我が名はクラウフ・シュナイダー世紀の科学者である』
「…お、今回はうまくいったようだな」
『お、今回はうまくいったようだな』
「それも文字化しなくていいのだ、やめなさい」
音声をすべて文字化する、ペンギンに少し怒りの色が混じる。
そもそもそう作っておいて、何故余計な言葉まで文字化させてしまうのか。
そう、ペンギンはクラウフの作品であった。
と、そこにノックの音。現れたのは、長女のスノウだった。
「お父様。少しお話が。」
『お父様、少しお話が』とペンギンはノートに書き付ける。
「だからそれはいいといっているだろう」
「何か…?」
ペンギンに言ったのに、スノウの方が反応してしまってクラウフは頭を抱えた。
「自動筆記の機械を作ったのに、どうも過剰反応気味だ。それも、この間までは世紀の科学者、を性器の科学者ととんでもない誤変換をしてせっかく改良したのに…」
重い声で呟くように解説したが、スノウの反応はぽかん、としている。
「…それより、ロッドが帰ってきたようですが?」
「ロッドか。これとは逆に、役に立ちすぎて困る奴だな。研究所の内部を知られる前に記憶を消去して手放す事も考えていたのだが…」
「ワープゲートの材料を取りにいってもらうとか、言っていませんでした?」
手放せない理由の一つが、これだ。どうも、シュナイダー家の人間は基本的にロッドを気に入りすぎている。
スノウしかり、ショーグリーンしかり、マゼンダしかり。
それもマゼンダなどはしっかりと「私たちに不利なようにしかけているんだから、せめて最強の駒くらいはよこしていただかないと困りますわ」といって、魔獣計画の後片付けにロッドを使う気でいる。
だいたい、仕事(暗殺)のターゲットが全部変態の金持ち限定とかいって、やたらと高度なマジックアイテムをどんどん土産にしてくれるおかげで、化学が思ったより発達し、全ての計画が早まってしまったのだ。
魔獣計画だなんて、本当の老後で良かったのに。
ぶつぶつ。
その内容を、しっかりとペンギンが書き留めていたので、クラウフは叫んだ。
「しゃらーーーっぷ!」
「………あの………」
「ああ、すまない。ワープゲートだったな。他に、変わった事はなかったか?」
「ロッドですが…女の子連れてました」
別に、クラウフには心底どうでもよかったのだが。
「わしらは科学者であって、悪の秘密結社ではない。ロッドの幸せまで邪魔する気はないよ」
「あら…そうですか、お父様は絶対邪魔すると思っていましたが」
「邪魔してほしいなら、邪魔してもよいが…その相手も、ここに呼ぶ予定なのか?」
「さっきのロッドからの電話では、そのようです。なんでも、レメティーナのレミナ村というところにワープゲートを結んではどうか、とか」
「レミナ村?」
「彼女の故郷だそうです。」
スノウの口ぶりを聞いていると、確かに、だんだん邪魔したくなってきたではないか。いかんいかん。とクラウフは頭を横にふる。
「部外者を研究所に入れるのもいかんと…」
「彼女、龍神の巫女だそうですよ」
「なに!?」
なんと、こんなときに、すごく使えそうなアイテムがあるではないか。

「神としての、あなたを試すアイテムがあります。その昔女神フーリンカの育てた種が…あなたが本当の神ならば、この力を飲み込んで、聖なる姿に還られるでしょう」

これで、筋書きができてしまった。
この騒動でごまかせば、もしや、魔獣騒動は起こさなくても良いのではないか。
別に自分の子供たちを犠牲にしなくとも、よそで起こせば良いのだ。
その線で、行くか。
クラウフは横一文字に結んだ口の片方を、くっとあげて笑った。
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「ネタ、小説」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事