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にざかな酒店

とある演劇サークルの記第四章 シロさんからの脅迫電話?と増えた家族

と、言うわけで唐突に第四章の続きをば。
って言うかこの手のネタはいつか来るかと思ってました…。にゃー、にゃー。期待通りですね。
とある演劇サークルの記四章 シロさんからの脅迫電話(?)と増える家族

さて、休みの日の朝である。
まだ脚本もできていないしサークルもたまには休もうと言うことでみんな休みなのである。さあ、円城との約束は次の休みだし、朝はもう少しダラダラと寝ていようかな。と繭子が二度寝の前にとりあえずちょっと水分でも、と取りに起きてきて玄関を通ったとき、その電話はなった。
ええ?ちょっと、こんな休みの朝から、何よ?と思いつつも、円城から急ぎの電話かも、と思って手に取る。はい、もしもし?
「あ、いつもお世話になってます、倉田です。あの、繭子さん…」
「繭子は私ですけど…?ええっと、何?セールス?」
「違うって!!演劇サークルの、倉田士郎、…シロですってば」
んん?ちょっと意味がわからない。いや、電話とかかけられる意味がある?特にこっちは用事もないと言っては失礼だが、一対一で話すようなことも少ない相手である。こないだちょっと例外があったが…。
「シロさん?私特にあなたに用事は…」
「俺があるんだってば!あなたが頼みなんです!って言うかこないだあなたもたまには嫉妬されたいでしょとか言ってただろこのやろ、今公園にいるんですけど、ええ、大学のすぐ横の…」
異様なテンションになんだかちょっと怖くなる。と言うか、この人こんな人だったっけ…。って言うかこの時間の公園に何の用があるの?ダメだ、だんだん怖い。この電話、ホラーだ。
「…え、と、あの、うーさん、は?」
切れ切れに聞くと、またあっちが切れそうなテンションで返す。
「その海古が頼りにならんのですよ…!ああ、もう、貴重な10円…!!もう、あいつ、三回も電話かけたのにハナから俺の話聞きよらんからっ。なんだよちょっと噛んだくらいで…!」
説明しよう、このワールドは年代こそ現代の設定になっているが、テクニカル面ではかなり昔のワールドであり、彼がかけている電話も携帯電話ではなく公園からの公衆電話なのである。彼はもうすでに思いつくところには大体電話をかけてしまって、もうほとんど10円も残っていない、いわゆる昔風の通信デッドな状態なのであった。
………海古って、呼び捨て?えっと、あなたたちそう言う関係でしたっけ…。ああ、これ、夢かパラレルか異世界か未来からの電話?って言うか、噛んだって何よ噛んだって。
「あ、いや、違うから。パラレルでも夢でも異世界でも未来からでもない現実の電話ですから!切らないで!ああ、もう!ってか、切れる…あ、もう、こいつの声聞けばわかる!!ちょっとよく聞いて!」
ん?この、ぴーともみーともつかない、この幼い声は…。
「あ、ああ…!そう言うこと、ね。わかった、それだったらすぐ行くわ!うーさんにも話通しておきます」
やっと納得した繭子の元気のいい声の向こうで、激しいため息とともに、シロはもう腰砕け、みたいな声を出した。
「や、やっと話通じたーーー…もうーーー」
と、そこでちょうど手持ちの十円玉の効果がなくなったらしく、電話は切れた。
ツー、ツー、ツー。

と、言うわけでシロさんからの電話攻撃でヘタれてるうーさんに話をなんとか通し、彼女らは公園へと行き、そして休憩がてらと一番家の近いうーさんの家へと集合した。なぜか途中で話を聞きつけたさりちゃん付きである。
「わーーーーかわいいー、激マブー」
さりちゃんの歓声のもと、ちっちゃいニャンコたち二頭がプニプニと戯れている。仔猫達といっても一ヶ月くらいの本当の仔猫!と言うのではなく離乳食は離れたくらいのちょっと大きい仔猫だ。逆に育てやすくていいだろうな、と言う皆の見解。
で、元からいるうーさんちのむーさんとふーさんは子猫たちを警戒して一同を遠巻きに眺めている。むーさんとふーさんは揃いのキジ白のニャンコたちだ。微妙に唸ってる気もするが気にしない。
「で、その…なんでいきなり今時珍しいホームレスの人なんかに子猫もらったりしたの?シロさん」と、繭子が聞く。
「あ、いや、それは、その…実は昨日のうーさんとの件が原因で」
「私?」
「ああ、うん。あの、噛んだやつ。あれであのおっちゃん、おお、昨日のいい噛みっぷりのにいちゃん。仔猫いらんかーって声かけてきたんだ」
だから、なんなのだその噛んだやつって。と他の二人は思わず耳をそばだてる。
「で、なんでもらっちゃうんですか、先輩…そんな、ホームレスのおっちゃんなんかに」
「ホームレスのおっちゃんなんかに、って、あの人はホームレスっていうかそれ系の人らの元締めっっていうか住所貸してる人で正しくはホームレスじゃないんだってば。っていうか缶集めしてるって言ってるけど拾ってはなくてみんな近所に好意でもらってるっていうしなかなか情報通だし、そのー…いいおっちゃんだよ」
聞けば聞くほどよーわからん。とさりちゃんはとりあえず仔猫に集中した。ああ、可愛いん。手のひらサイズ、ぽにぽに。なのになぜか一頭はシロの元に行ってしまう。
「その人とあなた、どういう関係な訳」
なのでとりあえず質問役は繭子である。
「だから、仔猫もらったんだってば」
軽くそばに来た一頭の三毛の方を手で軽くあやしながら、シロ。
「なんの関係もないのに仔猫もらうの?」
「うーんと、だから…その…噛んだやつ、説明しなきゃダメ?うーさん」
よっぽど二人は説明したくなさそうなのだが、とりあえず話を聞かないとどうしようもない。
「…んと…まあ、しょうがない、ですねえ…説明、してもいいですよ?まだ謝罪聞いてませんし」

話はとりあえずこうである。昨日の午後六時ごろ。くだんの公園にどうもこの頃遊ばれてるなあ、と思ってたシロはまあちょっとからかい返してやるか、くらいの気持ちでうーさんを公園へと呼び出した。なんです、猫でも拾いました?とうかうかと罠にはまったうーさんに「あのな、うーさん。人間だけ万年発情期なんだよ?(笑顔)」とちょっとシャレにならないセリフを一番に吐いたところ。ほんっとうに真に受けて叫び声をあげて逃げそうな(と言うか実際にげた)うーさんについ腹を立て、「何、ちょ、そんなに信用ないんだったらちょっと期待に沿ってやるからなっ!!」と、追いかけて捕まえてついでに首筋にがぶっ、と噛みついたとか言うその話はどっから突っ込んだらええねん、と言うそう言う話らしい。ちなみにそのあとうーさんは泣いて逃げた。それで今日今公園、と聞いたら即座に電話を切ったのだ。自衛意識が強い、と言うのか単純に怖がりすぎるのにもほどがある。
「これが、その噛み跡です」
と、恥ずかしげにうーさんはそっと見せてくれた。
「うっわ、あとくっきり」
「って言うか、あなた意外ととやることが野蛮ね…」
「って言うかさ、うーさんも深夜ならともかく六時ですよ?そんな六時の公園で君の彼氏が昔懐かし本物の変質者じゃあるまいしそんなとこで本気で変なもんほっぽり出してエロいことなんてしませんよ!捕まるに決まってるだろ、まあ、その、上着くらいははいでもう一発腕くらい噛んでやろうかと思ってたらあのおっちゃんの視線が痛かったもんだから」
「………」一同の、なんとも言えない無言である。
「で、その噛みっぷりを評価されて、次の日に猫をもらったわけ?」
「真面目に話聞いてもわけわからん…」
「ま、まあ、それはいいわ。とりあえず、ネコよねこ。うち、十四年くらいいたネコが三年前に亡くなって…うちの母しばらく塞いでたんだけど最近になってネコ欲しいな、って言ってたとこなの」
と、繭子は言った。まさに渡りに船、とはこのことだ。
「この仔達野良っぽいのに懐っこいし、言ったらきっと喜んでくれるわ」
「そうですねー、うちも、二頭だからもう一頭欲しいかなって思ってたんです」
気を取り直して、うーさんも言う。
「え?でも繭子さんとこが欲しいなら、二頭一緒のがいいだろ、うーさん。二頭だったら一緒に遊べるし、噛み癖のある子もちゃんと噛み方覚えるし」
「あ、そうそう、うち、むーさんが噛み癖あったからふーさんもらったんですよね」
「だろ?」得意げなシロをむ、とうーさんはねめつけた。
「先輩の噛み癖はなんなんですか、もう」
「そうそう、その人噛むんだから近づいちゃダメ、うーさん」
「地震でパニクってうーさんの胸揉んだ人には言われたくないセリフだな…!」
どっちもどっちだと思うなあ。と思いつつ、繭子は聞いた。
「なら、うちが二頭とももらってもいいのね?」
「ええ?」と悔しそうなうーさん。
「そうねえ、一人はみぃくんにしようかな」
るん、と言う繭子の声にうーさんがさらに呟く。
「ええ?みぃくんって、うちむーさんがいるから次のこはみぃくんにしようかと思ってましたよ?」
ネコ欲しいのがこの場に二人いて、しかも名前まで被ってるんかい。とさりちゃんが突っ込む。
「ほらほら、うーさん、円城さんって名前幹雄さんじゃないか」
とシロが耳打ち。
「あ、あら、みぃくん…!じゃ、もう一頭はまーちゃんですね」
ぽん、とうーさんが手を叩いた。
なんか「嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん」みたいだが、まあいっか。とため息をつくシロ。
「んー…でも、仔猫が二匹なんてことはありませんよー?」
「ん、うーさん、何が言いたいの」
と、そこでうーさんはシロの手をとり、見たことのないようなお目目キラキラ(しかも上目遣い)と今まで聞いてきた先輩の中でいちばんの甘い声の先輩、と言うワードを出した。
「もう一頭、探してきてv」
「え、ちょ、なんて…!?」
「先輩、先輩、先輩v」聞いたことのない甘い声の連呼に思わず逃げ出すシロである。
「ちょ、やめなさい、そのあんころ餅に砂糖まぶしたような声、恥ずかしい!!」本気で耳まで真っ赤っかになっている。うわー、本当に少女漫画みたいな赤面しはるわ、この人。とさりちゃんはちょっと本気で引いた。
「先輩ってば。ちゃんと見つけてきたら噛みついたの許してあげますからーねー」
「も、何あんたらねこをダシにしてイチャイチャしてんの…って言うかそんなに簡単に許していいのー?うーさん」
「だってねこだもの!!」
「ん、思いついたわ!!」
と、その甘い声のねだり攻撃なんかは気にせずに何か考え込んでいた繭子がいきなり手を上げる。
「そう、あの脚本、生まれてくるはずの救世主が冥界に迷い込んだばっかりに未曾有の大災害が起きそうになってるって言う設定にしましょう。で、冥界でドタバタよ!…こうしてはいられないわ、この仔達が家に来たら脚本かけないかもしれないから!今から三時間ばかり家に帰って脚本書きます!もうちょっとかかるかもしれないけど、書きあがったらこの仔達迎えにきますから。待ってて」
え、ちょ、繭子さーん?と声をかける間も無く、繭子は駆け出していった。
思い悩んでいた脚本の完成と、これからの充実の猫生活。
この二つの幸せを同時に味わえる日が来るなんて…と思うと足取りが天使レベルの軽さだった。
「って言うかみんなねこ好きすぎだよなー…」
と、深いため息をつきつつ、甘い声に負けてもう一頭を探しに行くシロであった。
ところでこの後出てきたのは二頭出てきて、もう一頭は未来のうーさんみたいな小学生の女の子がもらっていったらしい、余談。
まあねこがみんな幸せになっていいことだ。ちゃんちゃん。第四章はもう少し続きます。はい。
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