彼らのおしゃべりは続きでどうぞ。
「さて、今日の議題はプカプカだが、「俺のあん娘」の趣味は割と死亡率高いと思わないか?」と、Rが黒の水玉のカップを手に言った。
「死亡率高いって…タバコで肺がん?タバコが肺がんになるっていうのは思い込みって聞いたけど。本当は排気ガスのがひどいって聞いたわ」と、F。
「うむ、一番のタバコで肺をやるだろ。で。二番目のスイングで劇場形殺人事件。三番目の男と酒はどっちをとるかとりあえずおいといて、四番目の占いで最近流行の洗脳形」
Aは、メガネの跡が痛くなるほどメガネをおして、
「それは失礼じゃないか?」とうめくようにいった。
Tもうーん、とソファの前で腕組みをする。
「…趣味の死亡率っていえば…、そもそもどこに出て行っても最近は休みのたんびに死亡事故が起こるとかあんなのりか?」
「まあそれいっちゃうと全部のミステリが駄目になっちゃうなあ。」
「いやいや、全部のミステリはたいてい悪意でてきてるだろ。不注意の死亡までミステリにふくまんでも」
思わず突っ込みチョップの手の形をとるTだった。
「でもそれを言うと、逆の考え方もできるわね。」
「…と、いうと?」
「ミステリって、平和な時代にあるからミステリとして成立するのよ、きっと。これが世の中全部悪意でギスギスしてたら誰もミステリなんてほしがらない」
ふむ、良い事いった。とRが満足そうにのこりのジンジャーティーをのみほす。
「そう、だからこう、よくできたミステリよりもこういう重箱系ミステリを愛好するわけですよ」
「と、いうよりも最近雰囲気系が多いと思わないか。妙に空気がどよんとした…」
「でも東川さんは毎回笑えてミステリのポイントも高いわよ」
「作家もミステリを意識しすぎかもしれんな。言われてみると」
「日常系で言うと、すでに体が菌やらなんやらでSFとかいうのもよく言う話だが」
「…そう考えると、女子同士の会話って、すでに妙な誘導尋問が多いわ?」
紅一点のFの一言に、他の男三人はいかにも気まずい顔になった。
「……………そ、そっか」
「そうよ、こっちのお菓子が本当は欲しいのに、他の子がどれ取るかとか気にしたりするのよ。で、かぶりそうだったらそれとなく誘導する」
なんかあんまり聞きたくない話だな、とRは頭をかいた。
ところで、この四人が話している場所は、RとFの自宅の倉庫に母が趣味でやっている演劇の小道具などをそろえた仮の部屋である。なるべく黒と白でそろえているものの、ときどき謎の太陽のオブジェが転がっていたりするのだ。
倉庫っぽさを消しているのも、ただの黒い幕である。
「で、人の事、劇場形殺人事件とか言ってるけど、母は大丈夫そうなのか?R」
「おかんの劇はドタバタ系でミステリの味は全くないぞ。大丈夫だ。たいがいダンスでごまかすし、凶器もでてこん」
「それはよかったな。」
「とはいっても、ダンスが多いから時々足首いためてるけどな。」
「演劇ってミステリの世界じゃ殺人事件とすごい親和性なのにね…」
全員でふうとため息。
「実際の演劇ってそんなもんだろ。だいたい小説やマンガやゲームでは文化祭で演劇部がロミオとジュリエットしかやらんとかいうレッテルがそもおかしい」
「まともにシェークスピアやってる演劇部ってみたことないぞ、おいって奴だな」
「演劇のCMとか聞いてても殺人事件ものとかあんまりないものね」
「だからそれも最近のライト嗜好だと思うんだよーもはや事件の起こらない平坦な世界がいい時代になってるというわけだろ?」
要するにミステリが不作なのでそれがすべて不満ということだった。
「つまり、まとめると本の中で事件を起こして世の中の方を平和にせよ、ってことね?」
「そうだよ、ギスギスを本に封じ込めてしまいなさい」
「やれやれ、今回もまとまったか。じゃあ、解散だな。」
「でも、今日はきっと皆行き先同じだと思うわ。今日も良い本を探して」
古き良き時代のミステリ求めて、古本屋へ行こう。
本とであうのは、アナログな感覚の方が良いことを信じて。
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