たった一曲のおかげでしっかりと話ができてしまいました。ハンバートさんは偉大だ。
では続きでどうぞ。
仮想悪夢研究会 カバー
「緊急特別編だ」と、Aが言った。だいたいRのセリフから始まるのに今回はAである。
「ふむふむ、なんだろう」と、R。
一応Rもいて、全員揃っているのである。不自然なようだが仮想悪夢研究会はだいたい全員揃っているのがデフォルトだ。
「ハンバートハンバートが、カバー曲うますぎる点について」
ああー、と全員がため息をついた。うっかりラジオで流れていたユーミンの飛行機雲があまりにも素敵に歌われていたのである。思い出しただけで少し鳥肌なFは頷いた。
「あれは…ありえない…」
「あんまりすぎるよなあ…」
若干Tのほめ言葉も貶し言葉調に聞こえるが、最近のほめ言葉はなぜかもとは貶し文句的な、否定的な言葉が多いというのは事実なのである。
「あんなに素敵に歌われてカバーされた方はどうなんだろうなあ」
うーん、となぜか全員の腕組みポーズがかぶる。
「あれは小説でいうと何になるのかと」Aがやっと本題に入った。
「小説でカバーって、確かにないな。設定とかのカバーはあってもキャラは違うとか、話もだいぶ違ってるとか。丸々やったらパクリだからな」
「パクリパクリって言いすぎな面もあるわね。だいたい人間の「常識」というものがだいたいこうですよってのもパクリって言われるとどうしようもないっていうか」
「共通認識、イコールパクリか。そうなるとパクリの範囲広すぎだろ」
と、Aがため息交じりにいう。
「ミステリのトリック自体が結構パクリっていうか、アガサの犯人が供述者だった、も実はアガサが初めてではないらしいな」というTの言葉に「そうなの?」と、Fが首をかしげる。
そうらしいよ、とTが頷いた。「少なくとも島田荘司と綾辻行人の対談ではそう言ってた」
「あの対談って結構島田荘司を読む気なくすよな」と、R。
「えーっと、カップリング戦争みたいなんに人間を書きすぎてしまったからこんなクレームを招いて、とか言ってたりしかもそのクレームが美人問題だったり、自分の小説は現代詩なんです、とか言ってたり、なあ」と、Tが親切にFに開設した。
ふうん、とFは少し反芻して、言った。
「自分の小説は現代詩なんです、も、なんとなく自分の小説は社会派なんです、に似た匂いのする発言よね」
「自分で言うなって言うやつだな、わかる。」
「でもなんだろう、この、日本人特有かもしれない「自分で言うな」って言うのは。これは外国だと自分で言ってアピールする方が得、みたいな感じがするけど。」
「まあ自分のことそんなに説明する必要があるのも不思議というか、そういうのはあるな」と、R。
「作品があればそれでいいじゃない、的な?」
「まあ言ってしまえばそうだろ?裏側は、とか作者はどんな人、とかあんまりそんなことばっかり知ってても逆に楽しめないわけで」
それね、と、Fは手を組んで、椅子の足を伸ばした。
「作者が嫌な人だから読まないんです、ていうのもおかしいわよね。」
「最近の映画とかでいうと作者はセクハラ人だから作品を慎みなさい、的なやつな」
「なんか昔の美術作品までエロ、って言って取り締まってるらしいじゃないか。外国だぞ。」
こういう話になると男性諸君はかなり口が回るようになる。あー、どうどう。というようにFは言った。
「芸術とそれ系のことは切り離せないわよね。だいたい小説や漫画とか最近はストーリーを売っているっていうよりキャラを売ってる、という感じに捉えてる人も多いみたいだし。同人作品とかね。」
「キャラと萌えで、はい、どうぞ。好きにしてください、系か…下手するとオフィシャルが同人作品踏まえてもの作るからなあ…」
「嘆かわしい」と、一言でAが表現した。
確かに、その一言以外はないわなあ、と、なぜか納得する一同。
「島田荘司でいうと現代詩がキャラ萌えしてクレームがたくさん来るわけだな」
なんという不思議な展開だ、とオーバーにRは続けた。
「んじゃ、こういう会話も飛行機雲的な何か、ということでハンバートさんのうますぎる飛行機雲聞いて話を終わらせるか」と、T。
「だなー」「かいさーん」
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