にざかな酒店

我が龍神第五話

スノウさん登場で急に跳ね上がるラブコメ指数、そして急にロッドの一人称じゃなくなったのでちょっとロッドが謎の人になりました、の回。
クラウフさんはまだ出てきてません…。では続きどうぞ。
化学の国、ミルファーナ。
高層ビルまではたたないにしても、サラが親しんできたレメティーナの建物とは、色が違う。この灰色。サラには素材自体が解らない。
それに、空には謎の鉄の固まりが飛んでいる。
ずいぶんと音が多く、ほこりっぽいものが舞う。
ここ、本当に人間が住んでるのー、とか言いそうなサラの肩をロッドが叩いた。
「こう見えても、人間は住んでる。気にするな」
「ふえー…」
まだ国境を超えたばかりなので、人影はまばらだ。
「レメティーナとはだいぶ違うねー…」
「そりゃあ、無いものにされてる国だからな。この化学って奴は、何せスピードが速いんだ」
「どういうこと?」
「まあ単純に乗り物にしても、だ。」
ちょっと言っている意味が分からないような感じだが、サラは「うーん、空も飛んでるみたいだしねえ」とうなずいた。
「で、あれはなんなの?」
「飛行機。」
「レメティーナにも気球とか飛行機はあるけど、あれちょっと…」
「まあ深いことは気にするな。どっちみち、ここは単なる中継地点だ。フーリンカに行くんだろう」
と言われても、納得がいかない。
納得はいかない、の、だが…。
「むー…」
さして言葉にもならないのだった。
「ミルファーナにだってまあまあ良い奴はいるさ。人は大してかわらん。」
どう考えても否、と言いそうなサラをとりあえず、とせかした。
「まあいいから宿にいくぞ。安宿だがな。お前も山歩きで疲れただろう、一日くらい休憩しても良いんじゃないか」
「う、うーん…って、あー!!」
「どうした急に」
あからさまにサラには狼狽の色が見える。
「も、もしかして…だけど…私、この国で一文無し、じゃ…」
どう考えても、通貨違いそうだし、この国。
レメティーナでは、さすがにちょっとくらいは持っていたのだが。
「まあ、そうだな」
「やばいよそれーーー!!ちょっと、見捨てないで!!」
「…なんだ、見捨てるなんて一言も言って無いじゃないか。それに最悪の場合その龍神とやら、がなんとかしてくれるんじゃないのか?一応神だろ」
「ちょっとちょっと、わーん。人ごとだよう」
「なんだなんだ、いきなり。」
サラはパニックだが、ロッドはうるさそうにしている。
「なんだ、あのうるさいおばちゃん」
「いや、でも結構ボインじゃね?」
サラにしてみると、解らん服装の若い二人組が、二人をみて噂していた。
この噂を聞いて、顔色が変わったのが、ロッドの方だった。
「…おい、サラ。」
「なによー」
「お前、まだおばはんに見える魔法使ってるのか、いらんだろう、しかもボインってなんだ俺が変な目で見られるだろうが」
冷静を装っている口調だが、えらく早口である。
「…というか、本当はおばはんが本体じゃなかろうな」
「ひどーい!!」
「ひどーい、じゃない。本当のところはどうなんだ」
がし、と肩をつかむので、サラはあわわ、と答えた。
「この、女子の姿が本当ですよ…?」
「本当だな。信じるぞ」
「なんで疑うのよー」
「この問題の重要さがわからんのか、お前は」
「あら、ロッド?」
ちょっと離れたところから、聞き慣れた女の声がしたので、ロッドはさっと退いた。見ると、髪は白だが、背の高い、すらりとした美人がそこにいた。
「スノウか。こんなところでどうした」
「それはこっちの台詞…っていうか、その女の子は?」
サラ的にも、この人誰?と言いたいところなのだが、ぐっとこらえた。
「旅の道連れだ。フーリンカを目指している」
「…そう。ロッドが帰ったら、お父様が用事あるって言ってたわ。なんでも、ワープゲートの材料がたりないんですって」
またパシリか、とロッドはため息をついた。
「お前らのところの親子は人使いがあらいな、本当に。この国にきたところなんだ。ちょっとは休憩させろ」
「…彼女がいるものね」
「こいつは一応、わけありだからな」
スノウの言った含みある言葉の意味があまり通じてないようだった。
「ショーグリーンも会いたがっていたけど…がっかりしちゃうかもしれないわね」
「なんであいつが?会う意味がない」
「そんな事言わないで、会ってあげたっていいでしょう」
「…まあ、次にしろ。今はちょっと急いでるんだ」
「そう、じゃあ、近いうちに研究所にきて。また会いましょう」
スノウは、すっと手をあげて、足音も聞こえない足取りで去っていった。
その綺麗さもあいまって、まるで幽霊かなにかのようだ。
「………あの人、だれ」
スノウが去っていくまで、十分見つめた後、サラが呟くように聞いた。
「あれは、養父の娘だ。」
ずいぶんとあっさりした説明だ。
「そりゃ、昔からあの人知ってたら、私なんてちんちくりんよねー…」
「は?何言ってんだお前。」
むっすー、と急に機嫌が悪くなるサラだった。
「………、まあいい。さっさと宿に行ってゆっくりするぞ。俺もこないだ仕事終えたばかりだから、金は心配せんでいいからな」
「うう、…そういえば、文無しでしたね、私…」
急に思い出して、泣いてしまうサラだった。
「気にする事無い、気にする事無い」
と、急に龍神が彼女の周りをとんだ。
「りゅーじんさま?」
「なんならわしがみせものになる!サラは心配しなくていい!」
「………龍神様ー!わーん」
ぎゅー、と手をとりあって、泣く二人だった。
「まあいいから、行くぞ。」
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「ネタ、小説」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事