便利だけど怖い時代ですねえ。
仮想悪夢研究会さちっこ
(今回のお話はちょっと背後注意…かも?)
「今日の話は、名前の皮肉でよくある幸子!名前に幸せってついてるのに不幸な女、ミステリの悲劇ヒロインによく似合う名前だな、うんうん。で、バンバンのsachikoって曲もあるし、かそあくてきにぴったり―――」
と、いつものように得意満面で語るRだったが、Fの冷たい瞳についひるんだ。
「な、なんだよ何も悪い事言って無いじゃないか」
「言ってるわ、…そのsachikoは二、三年前くらいにリミックス版でブラジル風アレンジがでて曲がラジオでかかったとき、歌ってる本人がこのsahikoはオッパイ出して踊ってそうですね!っていってた!!」
「さ、さきにゃーーーーー!!」
会の時はちゃんとFと呼び分けていた兄が、ついうっかり本名、うっかりなまってどっかの猫っぽい名前をさけんでしまったのである。
「さきにゃじゃありません、咲菜(さきな)」
「そそそうじゃなくて、今君なんて言いましたか!?年頃の娘が突っ込み入れるためとはいえそんな単語をだしてはいけません!!」
「………っていうか、悲劇のヒロインがチチだして…チチ出して踊る悲劇のヒロイン…ぷぷ…つしゅ、シュール…、ツボに入りすぎて俺まともに怒れないよ…」
笑っているTの横で、一人冷静なAが頭をおさえながらいった。
「T、ゲラゲラ笑ってないで。あのな、F。性差別と言われないために言っておくが、男同士女同士でもその単語がいきなり出てきたら眉をひそめる人間はいるのだぞ。喜ぶ人間もいるが、あんまり頻繁に使うのはおすすめしない」
「ひ、頻繁になんて使ってないわ!!今日のはたまたまよ、たまたま!!」
「うっかり聞いてしまったら頻繁に言ってるのかと思ってしまうからな…」
「失礼ね。うっかり言ってしまったからといってこんなことばっかり考えてるわけじゃありませんから」
「当たり前だよーーーー!!」Rは絶叫した。「兄さんが悪いんじゃないんだからなーーーー!!」
「え、えふ、その辺でやめといてくれないと、俺の腹筋がやばい…」
「笑い過ぎだ。こうなるとミステリ関係なさすぎじゃないか。本当にもう。」
「でもミステリって妙に色気が多いときもあるじゃない…」
「色気はあってもそんなモロな単語はでてこんぞ。まずミステリの住人は踊らんし」
「冷静なようで、ちゃんと人の発言は拾って突っ込みするのね…まあいいわ…えっと、まとめると全国の幸子さんごめんなさい?」
「………うん、まあ………っていうか、なんでバンバンそんな事言ってたの聞いてたの」
「電波に乗って聞こえてきたのよ…もう、なんでー?」
今更なんでー?って言われてもなあ…。うっかり墓穴じゃないのかい、君。
と、ゲラゲラ笑っているT以外が心の中で突っ込んだのであった。
追記で化け猫さんが呪った話
ここは寝小村。猫がいっぱいの海に近い町。おいしいお魚いっぱいにゃ。しかし、わしには悩みがある…。
うちのご主人(小学三年生)がなんか学校で大変で、とうとう倒れてしまったのだ。にゃんふるにぇんざとかいってたのだ。誰が悪いか知らないけど、まとめてみんなとっちめてやるのにゃ。長く生きてるものはそれだけで力をもつものなのだ。ちょっとしか生きてないのにしっかり悪がしみついたものは痛い目に遭わないとわからない。
だいたいにゃ、最近の子供は痛い目にあわなさ過ぎで全然成長しないのにゃ。
わめきまくるのは言いたい事があるからなのに、いつまでもスルーされるからいつまでもなきやまないのにゃ。うるさければ誰か反応してくれると思ってるのだ。でも最近の大人は他人の子しかれないの。本当は近所のおっちゃんとかがちゃんと叱った方が子供色々学ぶって言うにゃ。親以外の怖い人ってやっぱいないといかんの。やり方がわかってないのだ。うちのご主人の母はちゃんとご主人がわしのしっぽつかんだりして悪い事したときは反応して返したにゃ。信頼関係にゃ。
まあ育児放棄も猫だってないことないけどだいたいの飼い主は猫の親子関係には感動するようだにゃ。
わしらこにゃんの頃なんてどうなの。
しっかり小さい頃に仔猫同士の喧嘩をするから加減を知るのだ。遊びと本気の喧嘩はちゃんと区別つくようにならなあかんの。
外で遊ばないから体も老人化してるっていうにゃ。
我ら猫、老にゃんになってもまだまだ見た目かわんないし元気で美しいの。
猫だからじゃないの、猫的に生きれば人間もそうなるの。
するるんと体なめなめすれば都合の悪い事は全部リセット。
ツンとデレのバランス。自分の嫌いな人には近寄らない。人付き合いではしっぽふらにゃい。ん、にしてもやたらさっきから人が見てるの。化け方おかしかったかにゃ。しっぽ確認。って見えてないにゃ。しっぽ。
「浅瀬さん、今日なんか妙にかわいくない?なんか動き方とか、いつも猫背で鈍そうに歩いてるのに」
「なんかおめめくるくるー。あ、ほら、ぬくといからねてるねてる」
「ねむーうつるー」
「なんなの、あいつら、今日なんか態度違うじゃない…」
「ってかなんで学校来ていきなり寝るよ。なめてんじゃないの?起こす?消しゴムなっげる?」
「っていうか、あんまり寝てたら先生起こすでしょ。駄目なとこみせて墓穴掘らせればいいじゃない」
っていって、一時間目も二時間目もねてすごし。
「…あのこ、あんな娘だっけ?なんか図々しい」
「っていうか…猫じゃね?ちょっと…ねすぎ、だろ?」
「そうよ、猫よ!あの娘があんなかわいいわけないもの!!」
「……ん?ばけにゃんっていったにゃ?」
聞こえた?と一部の女子が表に出た。吊り上がった目におかっぱの学級委員長だ。おしつけられた、というか、彼女しか立候補しなかったのが自動的になった。江古田という。
「言ったわ。この、化け猫女。正体を現しなさい」
「………っていうか、ねこさん、寝てるだけちゃうの………?」
そこ、ひどいことしてないのに言っちゃっていいの?というもっともな突っ込みは彼女には聞こえない。
大げさに猫のシルエットが揺れた。
「ふふふ、みーーーーたーーーにゃーーー?そうにゃー、いじめっこはお前にゃー?呪ってやる、全猫の愛はいっさいお前にはわたさんーーー」
ふ、と江古田は笑い。
「しょぼい呪いね。」
「しょぼくないー、お前の家の前、猫ゲロだらけになるのだ、モザイクにゃモザイク」
「ぐ…!ま、ママが掃除するからいいのよ!!」
「お前の責任なのにママが掃除するのかにゃー?」
「わざわざ人の家の前でゲロ吐くのはあんたでしょうが!人の家の前に来たついでに車にはねられろ!!」
「んにゃっ、ひどすぎにゃこれは。呪われるのは誰がわるいんにゃー?」
「なんでよ!!」
「ほらー、他にもいるのにかばいにこないにゃ。他人が憎くて結びつく友情なんてそんなもん。うすっぺらいにゃー?いいにゃー、お前を徹底的にやってやっちゃおう」
「………あなたたち!」ほら出てこないし。
「っていうか、化けネコかー…」と、外野男子の声。
「やっぱ妖怪う○っちとは違うなー。あれたたりそうちゃうし」「化け猫って何するねこなん」「悪さするにゃんこやで」「じゃあねこはねこでもわるにゃんこ?」「単純に年取ったらしっぽわれるとかいわない?」
でも呪いが現実的で嫌な感じだ。
「おまえらがいじめるもんだからーーーーご主人は」
化け猫の間の区切り方があんまりだったので、皆ざわざわと騒ぎだす。
「…え…ま、まさか今はやりの…」「え、そんな…!」
「ご主人はわしとちっともあそんでくれんのじゃーーーーー!!」
「しらんわーーー!!」
と江古田はつっぱねたが。
「そ、そっか…ご、ごめんな…」
「ごめんね、にゃんこさん」
何故かクラスメイトは次々謝りだす。学校自体が猫が多いせいか、何故か皆妙に猫に愛着があるのだった。まあ、この村猫ご利益すごい村だから。
「おい、そこの男子、この化け猫、雄猫やろが。」
「お前、しらねーな!?遊んでもらえない猫がなにしだすか!猫ホーチしたら即バッドエンドだぞ!」
「いいじゃない、化け猫なんかバッドエンドで」
「最低かオマエ死ね!」急に切れだす男子、難田だった。
「な、何よ急に!何よこんなかわいくない化け猫!化け猫よ化け猫!!」
「ねこはねこ、かわいいにゃんこちゃん」
「頭わいてんのか!!」
「なんだよ、ネコマタになるくらいかわいがられたんだよ、なー」
「にゃー」
「えらいなあ、お前、浅瀬さんのことそんなに好きだったんだ。」
「ご主人は、こにゃんのわしひろって毎日毎日ペットボトルであっためてくれたの。わし寒い日に拾われたから」「ほらな言ってるじゃん!」
「何よ、いいかっこしいが」
ん?と、難田の後ろにいた三つ編み女子、後藤が指を折って数えた。
「………あれ、化け猫さん、…年おかしくない?」うん?と軽く化け猫は首をかしげた。猫らしい綺麗な首のかしげ方に愛嬌があふれる。つり目だが。
「遊んでもらえない呪いで化け猫化するのは一才からでも十分なの」
ぺろり、と爪のたった手をなめながらいった。
ががーん。と、謎の効果音。
「な、なんですってー!」「なにー!」
「おまえらんとこの猫は大丈夫かにゃー?ちゃんとあそんでやるにゃー。猫にひどいことしたら猫は覚えてるからにゃー気ぃつけろやーもちろん猫の飼い主にひどいことしても見事にたたっちゃうからにゃ?」
一番後ろにいたようなひっそりとした存在感の碓原(うすはら)が手をあげた。
「………化け猫さん、………ワクチン?とヒニン?は大丈夫でしょうか…」
ものすごく、間。
「呪うの?それ呪うの?ねえ?」
「や、奴らほどは呪わないにゃ。病院は………病院は我慢するにゃっ」
「うん、まあ、ビョーイン我慢できなくて化け猫はないな」「にゃーーー!!」
「で、なんで浅瀬さんこないの?」
「にゃんふるにぇんざ」
「にゃんふ…何?」
「………えっと…インフルエンザ?」
「何それ?」
「はやりのカゼ?」
ほえっ?と化け猫。
「え、ご主人風邪なの?」
「うん、まあ…そういうことじゃない?いじめが原因っていうか…皆普通になっちゃう病気だよ?っていうか、いじめっぽいのこのこらだけやし」
「ね、猫の風邪は万病のもとにゃっ。それにこいつ、思ったよりひどいにゃ」
「確かに、猫はねられろはひどすぎるよ。お母さん猫大事にしろっていった!」
「猫いじめたらひどい目にあうんだよ、この村」「ひどーい」
「あーーーーもう、これだから田舎は!!解ったわよ、こんな村、ママにいって出てってやる!」
おーーー、と歓声がわいた。
「………ふ、任務完了?ではねるにゃ☆」
なんやかんやいうても今の子もいい子もおるやんね。と化け猫(りんた)は元の姿に戻り、飼い主の机の日だまりでふこふこ寝るのだった。
さあ、あやのちゃん、りんたがんばったからかえったらかわいがってにゃん。
風邪ならそそっと癒してあげるからにゃ?ふこふこ。
あやのちゃんのてはぷにっとしてて気持ちいいんにゃん。ずっとなでてくれないとやーなの。んね、わかってるよね…?
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