にざかな酒店

我が龍神エピローグ

というわけで、事件パートめっちゃ短いよ!?というのが、この話の特徴でありました…。
いやいや、もとからそういう話なんだ。余談みたいな話だし。というわけで…続き、どうぞ。
光になぎ払われた緑が去った後は、灰色のコンクリートが散乱している。
生きている人間を捜すが、そもそもロッドが人気のない道ばかり選んでいたので、幸い巻き込まれた人間の方が少ないようだった。
建物も、ほとんどゴースト状態のようだった。
「不幸中の幸い、だな…。ということは、たまたま迷い込んだスノウと、俺たちと犯人二人、くらいしか巻き込まれてなかったという事か。」
あれだけの死の香りはなんだったのか。
それはもしかすると、龍神が暮らしてきた長い年月の中で見た不幸の中の再現だったのかもしれない。龍神は、そもそもそれを望んでいなかったのだ。きっと。
だから、魔王の種を飲み込んでも、被害は少なかったのだろう。
「龍神様、しおしおになっちゃったね…」
仕方ないのと言うが、肩が落ちている感じで龍神は答える。
「そもそも、なんで人間にだまされるかという話だが」
ロッドは嘆息した。
「結構神様ってだまされるもんだよー…人間と神様のバーサスバトルって昔から結構あるもんね」
「そうそう、わしも疲れたし、大陸を去ろうかと思ってる」
「………え?」
緑がなくなったので、光がさす。
「………そうかじゃあ、元気でな」
「ちょっとちょっと、私は?」
まとめようとしたロッドをおしのけ、サラが聞く。
「わしがいなくても、元気にやれるじゃろ」
「りゅーじんさまー…って、そうだ、ロッド、手は?」
うるーん、となりかけたところでようやっと思い出したらしい。
「俺はこういう体だ。とっくにふさがってる」
「…へ?」
サラはロッドの手を取って、まじまじとみた。傷跡も残っていない綺麗な手だ。
「…え、あ、ほんとだ…」
「なんで、と言われても困るがな」
サラが確認したところで、ロッドはさっと手を引いた。
「でもよかったー、普通だったらその手使えなくなってるよ、もろにささってたもん。私のせいでそんなことなってたら…」
「そうだな、お前が龍神かばったりしなければ、あれはなかっただろう。お前も、龍神にたいして同じ事をしたんだ。反省しろ」
「そうそう、神様だからバリアあるのに!」
………。
龍神の言葉に、二人は顔を見合わせた。
「………ばりあ、あったの?」
「先に言え、先に。っていうか、もう大陸去ったらどうだ」
「わし、お邪魔かのー?では、すぅーっと…」
と、本人が言う通り、龍神は透き通るようにいなくなった。
しばらく見てたが現れないようだ。
「………私、これからどうしようかな…」
龍神の言う事が本当なら、職業なくしちゃったし。
「とりあえず、親元に報告しにいったらどうだ。追っ手に話つけるとこまではしてやってもいいぞ。それから先はお前が考えれば良いとして」
「そうだよ、ワープゲートって、ほんとに大丈夫なの?」
「俺は何回も使ってるが、別に支障をきたしたことはない。」
だったら、大丈夫かなあ…。とサラは考え込む。
「っていうか、ロッド、うちの両親に会うの?」
「は?」
「いや、だってクラウフさんにも会うんだよね?」
あわあわとするサラだが、ロッドは意味が分かっていない。
「別に会ったってどういうことないだろうが」
「…あの、私の存在、すっかり忘れてるわよね…」
「ああ、いたのか。スノウ」
「展開的に、どこで去れば良いのかと思ってたら、タイミングのがしちゃって…」
なかなかスノウも不器用な性だった。
「まあ、そんなこんなで後は二人で決めるといいわ。じゃ、私は帰るから」
「あ、スノウさん!」
「………何?」
「お酒ありがとうー、おかげで助かりました。」
ぺこり、と頭をさげておくサラにスノウも微笑んだ。
「いいのよ、あれくらい。もともと龍神様に呑んでもらうために買っておいたんだから」
「助かったぞ、本当に」
「じゃあ、また会いましょう」
薄暗いが、いつの間にか昼のようだった。
「おなかすいたね…」
「どっかに食いにいくか。しかたないな…」

と、食べに定食屋に入ったところ、クラウフに出会ったのだった。
「どうも、毒素で寿命が縮んだようだ…」
なにやら、食べながらぶつぶつと何かを記録している。
「なんでここにいる」
「………えっ」
しばらくクラウフは聞いてない様子でぶつぶつ言っていたが、ふと首をあげた。
「…それは、こっちの台詞だ。というか、そのお嬢さんが龍神様の…?」
「あ、はい…えっと」
「クラウフ・シュナイダーと申します。この娘か…ロッドの相手にしては、なんかちんちくりんだな…」
どうしよう。めっちゃ、聞こえてるよ…。っていうか、この人大丈夫?というサラの心の声は言葉に出していないが、ロッドの袖をちょいちょいとして、伝えたつもりだった。
「まあいい。変な緑には囲まれなかったか?」
「何の話だ。」
普段ぶつぶつ言うのに、ここだけ歯切れがよかったので、ロッドはこれは何か関係あるな、と思った。
「ワープゲートだが、どうもストックがあって、あと飛行石二個で足りるようだ。それも、もとから候補地になっていた。」
「なんだ、出身者でもいたのか」
「出身者ではないが、近くの村から来てたものがいてな。中継点として、何かとネットワークがいいらしい」
「なら問題ない。飛行石二個なら、手持ちであるはずだ。…ところで、何頼むんだ、サラ」ロッドはメニューをちょいと広げた。
「あ、えーと…何がいいかなあ…んじゃあ、天津飯で」
「じゃあ天津飯と、生姜焼き定食で」
あいよー、とカウンター中から威勢のいい声がする。
「まあ、ワープゲートさえ何とかなれば、別に良いだろう。こいつのそばで食べてると飯がまずいからな。ちょっと離れるぞ」
「あの…養父さんじゃ、なかったけ?」困ったサラは、首を傾げる。
「一応そうだが、見て解るだろう。こいつはいつもぶつぶつうるさいんだ。だいたい挨拶もないだろう」
「ご挨拶だな。一応育てたというになんでいつもそんな扱いなんだ」
「良い扱いされたいなら、行動をあらためたらどうだ。とくに、そのぶつぶつうるさい口あたり」
「これは癖なんだから仕方ないだろう…っとに」
二人会話してると、への字の口がよく似ているので、まあそれなりに仲は良いんだろう、とサラは思った。なんだか、相手に探らせないのもよく似ている。
「まあ、必要なデータはとれたからな。それで満足だが。」
ぶつぶつの内容に、このようなものがあったのだが、何の話かは、サラは解らなかった。

「やっぱり、あいつだな…」
ぼそ、とロッドは呟いたが、返事は返ってこなかった。
何故かサラも機嫌良さそうだし、ここで掘り返す必要はないかもしれない。
そも、龍神に隙があるのも、問題だった。
事件というのは、誰が悪いとかではなく、組み合わせの問題だ。と昔クラウフが言っていた言葉を思い出す。

「んで、ちゃんと龍神様の代わりしてくれるんだよね☆」
「まあ帰るまではな。後は知らん。」
「もー」

だが、このあとさらにいろいろあり、龍神が、実は薄いながらも滞在していて、後に帰ってきて誇りをとりもどすのは、また別の話。
ロッドとサラの二人は、後にフーリンカに渡り、もと魔王の村で暮らすようになるのだった。
(終)
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