新…というか、ネタ的には前からあったので新というか、という感じですが。
山で不審人物に出会いました。というところから始まります。ではでは。
我が龍神第一話
国境沿いの小さな山を俺は歩いていた。
ワープゲートは便利なようだが、使える磁場や条件、そもそも一目につかないところしか使う意味がないなど、かえって厄介な代物だ。
とはいえ、半分ほどお尋ね者の俺が国境を越えるにはこれを使うのが一番手っ取り早い。わざわざ山の中を歩いても、だ。
と、白いものが向こうの林で揺れているのを、発見した。
どうやら、ちゃんと中身の入ってる服らしい。
こんな山の中に女か。
………、まあ、放っておこう。
どうせ厄介なものだ。
向こうも気づいてないのか、すうっと木の影に消えていった。
と、いうよりも、だ。物の怪のたぐいかもしれんな。あれは。
山の中とは言っても、この山はほんのちょっと小高いくらいの山で結構人の手が入っている。農家や水車小屋みたいなものはあるし、牛や鳥の声もする。
俺としては、もう少し獣道でもいいくらいだが。
「ちょっとそこ行く旅のおかたー。ご飯いらないかい?」
………。は?
「ご飯ってなんだお前」
「作ってあげるから、一緒につれてって。旅で偏食で栄養偏ってるでしょ」
まあ確かに肉焼いてばっかりだが、それにしても決めつけるな。
というか、なんだこの変な女。
「そこの農家で野菜はわけてもらったからー」
「俺に栄養は関係ないだろう」
不死身だしな。
「健康は必要だよ?」
「健康もあいにく関係ない」
「まあいいから助け合いしましょうよ。あ、おばちゃんだからやだとかそんなこと言わないでよ」
「………おばちゃん…か?」
「あらやだよー。おばちゃんに見えてるはずだよ」
というが、どう見ても、若いというか、若干ちんちくりんな感じもするのだが。
「まあそういうならちょっと食べてやってもいい。毒はいれるなよ」
「やたー!ありがとう、旅のお方」
「ロッドで良い。ロッド・ブライダルだ」
「ブライダルって、なんかおめでたいね。私はサラ・レティディウス・バードン。よろしくね」
そんなわけで、奇妙な女と二人旅が始まったのだった。
「ナノ・パーナはくたくたに煮るとおいしいんだよー」
「しかし、栄養的にはビタミンは水溶性じゃなかったか」
「あれ、健康関係ないとか言って、結構詳しい?」
「知識的なもんでほんとうに関係はないんだが」
「ふっふっふー、意外とそういう人って気にしてるんだよ」
変な含み笑いが異様に似合っている。
「ナノ・パーナとデーコーンと豚肉の煮物だよー本当はもうちょっと野菜入ってるといいんだけど」
盛られた器を見ると、たしかに彩りは良い。
「後はお魚とーミソティルト☆」
「しかし…料理でつった割には品数少ないな」
「ぐ…あんまりいろいろ作るの好きじゃないんだよ…」
味もまあまあという感じだが、確かにほのかな苦みとデーコーンの甘みが後からじわじわとくる。
悪くはない。が。
「さっきから俺たちのことを見てる連中は、お前の追っ手だろう」
「やっぱり山に給食のおばちゃんは訳ありじゃない訳がないんだよー」
「不審だとは思った。山に若い女はやっぱり追われてる女か」
「………あー………若く見えちゃってる………?せっかく見た目年齢変えてたのに」
「まあいい。…その荷物をあっちに投げろ。もともとカムフラージュ用だ。で、逃げるぞ!」
逃げるのーーー!と、声が裏返っている。
「いらん殺生してたたられたくないんだ俺は」
「にゃあああ早い早いー」
必死に追いつこうとしてくるので、背中をつかんで抱えてはしった。
うまい話って言うのは、そうある訳がないんだ。
しかし、この変な女。何をして追われてるかは知らないが、面白そうだ。
後でなんで料理でつろうとしたか聞いてやろう。
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