日本の少子化が止まらない。合計特殊出生率は1.2。この調子で人口減少が進んだら800年後には日本の人口はゼロになるという笑い話を何かで見た。
しかし、韓国の少子化はそれどころではない。合計特殊出生率は0.75である。そのことを知識としては知っていた。だが、少子化が進む原因までは考えたことがなかった。今回ソウルを訪問してその理由がわかったような気がした。
ソウルを空から眺めると、圧倒的にマンションが多いことに気が付く。韓国の人口の半分がソウルとその周辺には住んでいるというから、住宅を確保するためには空に向かって積み上げるしかないのだろう。地元の人に聞くと、平均的なマンションの取引価格は10億ウォンだという。日本円にすると1億円である。少し良い物件になると30億ウォンくらいするらしい。
それに加えて、韓国の教育費はべらぼうに高い。小さい時からいくつも習い事をさせ、1か月の月謝が10万円を超えることもあると聞く。そうでもしないと学歴が重視される韓国社会では落後してしまうリスクが高くなるらしい。
高額な住居費と教育費。これではいくら賃金が日本より高くなったとはいえ、生活は決して楽ではあるまい。少子化が進むのも無理はない。とくにソウルに限っていえば合計特殊出生率は0.55というとんでもない数値である。ソウルの住宅事情が改善されない限り韓国の人口は増えようがない。
一般に一国の長期的な経済発展は次の関数で表すことができる。
G=F(資本、技術革新、人口、資源)
人口が横ばいで推移するためには合計特殊出生率2.08が必要だとされる。人口減少が続けば、やがて経済の停滞をもたらす。日本も東京一極集中が続けば、やがて韓国のようになる可能性がある。少子化対策が効果を表すには時間がかかる。子育てをしやすい街づくりは待ったなしである。