(内容紹介)
2015年に出版された本だが、実務経験をもとに地に足の着いたしっかりした議論を展開している。得るところがたくさんあった。
(例①)議員の口利きの封じ込め方
田舎へ行くほど議員の「口利き」が多くなる。例えば、職員の採用、土建業者の肩入れ等々。こうした悪しき口利きをなくするために、口利きがあった内容をすべて文書化し公開することにした。その結果「たちの悪い口利き」は駆除され、「通学路を改修してほしい」等、本来の要望だけが行われるようになった。
(例②)地域経済の活性化
鳥取県を一つの国と見立てて「輸入」「輸出」の収支表を作る。すると圧倒的に輸入が多い。地域経済を活性化するためには「輸出」を増やし「輸入を減らす」ことだという。例えば、野菜の地産地消を進めたり6次産業化を図ったりする。また、ペレットストーブを普及させたり、自前の発電施設を作ったりすればアラブに流れている所得を地元に還流させることができる。地元の大学の協力を得ることも大切だ。
(例③)国から支出される教育財源の「ネコババ」
現在、義務教育に必要な人件費の2分の1を、国が国庫支出金として各都道府県に交付している。しかし、都道府県が学校に配分する際に「ネコババ」をしている。つまり、正規の教諭を採用せず、非正規を増やして人件費を節約しているのである。非正規に一人置き換えるだけで1年間に400万円が浮く。その結果、正規採用はますます多忙になる。
そのほか、今の地方自治では、議員の力が極端に弱いことには考えさせられた。本来、議会は条例を制定・廃止する場であり、予算を議決する場であり、首長とは対等な立場にある(二元代表制)。
しかし、現実には、条例の原案はほぼすべて首長提案であり、首長が出した予算案を無傷で承認している。なかには議員の仕事は首長に「一般質問」することと勘違いしている人もいる。
「地方自治は民主主義の学校」と言いながら、地方自治は住民からは遠い存在になっている。