南英世の 「くろねこ日記」

野党よ、大人たれ!

菅総理が次期総裁選を辞退し、世の中の関心が自民党の総裁選挙に移ったため、野党の存在感がすっかりかすんでしまった。立憲民主党など野党に対する支持率は低迷したままである。

野党が自民党の受け皿になりえない理由とは何であろうか。

第一に、訴える政策の順序が間違っている。国民の最大の関心事は「食っていくこと」である。すなわち経済問題こそが政治の核心でなければならない。度重なる非常事態宣言の発令で、飲食業界をはじめとする国民の不満は高まっており、こうした声を吸収すれば次の総選挙は野党が政権を奪い返す絶好のチャンスとなりえたはずである。

しかし、与党を上回る経済対策は提示されず、相も変わらずモリカケ問題や憲法をめぐる議論に終始している。いま日本で働く人の4割は非正規雇用であり、年収300万円以下である。そうした人々の声を聴かず、民主主義や法の支配といった政治の原則をいくら語っても、国民はついてこない。国民の4割の人々に希望の光を届けることができれば、放っておいても票は入る。

第二に、野党が分裂していることである。前回の衆議院総選挙で野党が競合した220余りの選挙区のうち、野党候補を一本化すれば勝てた選挙区が60以上あった。なぜ野党候補を一本化できなかったのか。そこに野党の幼さを感じる。

自民党を見て見よ。たとえ10のうち9つの政策が違っても、一つでも一致できるものがあれば「一緒にやろう」となる。実際、脱原発、女系天皇容認、夫婦別姓賛成を唱える自民党議員もおれば、真っ向からそれに反対する保守派バリバリの議員もいる。それでも一緒にやっている。

ところが、野党はその真逆である。たとえ10のうち9つの政策が一致していても、一つでも異なれば「お前とは一緒にやれない」と喧嘩別れしてしまう。まるで子どもだ。ばらばらに戦って勝てるはずがない。

第三に、支援してくれる組織との関係も見直す必要がある。もし労働組合という組織票が欲しいために組合の意向を無視できないというならば、組合とは縁を切ればよい。コアな固定客をつなぎ留めておくために、より多くの票を失っているということがどうしてわからないのか。(注1)

そもそも、今の労働組合は本当に「労働者」の味方と言えるのか。組織率は16.7%にすぎない。働く人の4割を占める非正規雇用の人は労働組合から排除され、労働組合は正規雇用の「強いもの」の利権を守る組織に成り下がっている。これでは国民の支持が広がらないのは当然である。お山の大将であることに満足し、真剣に政権を取る気がないと思われても仕方がない。

冷戦体制が崩壊して30年。今時、共産党支持者だって共産主義社会なんか望んでいない。資本主義という制度の下で、いかにして国民の豊かな生活を保障するか。与党も野党も政策の大きな違いはない。小異を捨ててなぜ大同団結しないのか。

野党よ、大人たれ!

最後に笑い話を一つ。

もし本気で政権を取りに行くなら、橋下徹氏を口説いて総裁にして新政党を立ち上げ、そのもとで枝野派、玉木派、志位派、松井派などをつくってはどうだろうか(笑)。やっぱ無理か・・・

 

(注1)追加投稿 2021年11月12日

古賀茂明氏が同じことを指摘している。以下引用する。

「そもそも連合は、大企業の企業内労組の集合体である。その関心は大企業の利益向上や労働条件改善にあり、派遣や中小企業の労働者の待遇改善や国民全体の利益には関心が薄い。つまり、連合は大企業と癒着した自民と親和性が高いのだ。

実際、連合は大手電力が反対する原発ゼロ政策や、世界に後れを取った日本の自動車産業が反対するEV(電気自動車)推進などのグリーン成長策には冷淡である。そんな連合に言いなりの立憲の政策では、「行政改革」はタブーとなり、脱原発などの政策も中途半端になる。これでは無党派層から見ても維新のほうがはるかに魅力的に映る。

立憲の党勢回復のためには連合との関係見直しが欠かせない。少なくとも連合の意向を気にするあまり、独自の政策を貫けない状況からは、今すぐに脱却しなければならない。連合が改革の足を引っ張るなら、その支援を断ち切るべきだ。」

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