見出し画像

南英世の 「くろねこ日記」

歩行者優先


みんなで違反すれば怖くない。その典型例は道路交通法第38条に見られる。
そこには「信号機のない横断歩道で人が待っているとき、自動車は一旦停止して歩行者の通行を妨げてはならない」という意味のことが書いてある。違反すれば罰金9000円である。しかし、止まってくれる自動車はほとんどいない。たまに止まってくれると、ドライバーにお辞儀をして渡る人もいる(笑)。

私はそうした状況に反発し、車がスピードも落とさず横断歩道に近づいてくるのを横目に、悠然と渡り始めることがある。まさに命がけである。横断歩道を渡りながらドライバーの顔を見ると、たいていは何とも迷惑そうな顔をしている。日本社会はいつの間にこんな嫌な社会になってしまったのだろう。

かつてローマに旅行に行ったとき困ったのが横断歩道の渡り方であった。ものすごく広い道路に横断歩道があるのだが、歩行者用の信号機がない。仕方がないから車のすき間を狙って渡ろうとするが、交通量が多いのでなかなか渡ることができない。「そこのけ、そこのけ、車が通る」。誰も一旦停止などしてくれなかった。

一般的に日本のマナーは世界に誇るべき水準にあると思う。女性が夜道を一人歩きすることができ、地震が起きても盗難がほとんどなく、サッカーで負けてもサポーターは「ゴミ拾い」をして帰る。そんな国は世界に多くはないはずだ。

ところが、こと車に関する日本のマナーは世界最低水準にあるのではないか。横断歩道の問題だけではない。狭い歩道でぶつかり合いながら歩いている歩行者の群れ、雨の日に水たまりがあっても「バシャー」と水を跳ね上げながら通り過ぎる車・・・。基本的人権を大切にしようという割には、歩行者の人権は大切にされていない。

もうすぐ東京オリンピック。日本が「人間優先の国」であることを世界に示したいものだ。
  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「日常の風景」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事