南英世の 「くろねこ日記」

財務省の力

財務省(大蔵省)がすごいところだというのは小さいころから何となく聞いていた。私が初めてその権力の大きさを目にしたのは高校教員になってからである。財務省官僚による講演があり、講演会場に入るまでの「大名行列」がすごかったのに驚いた。そうか、これが財務官僚というものか。ずらりとお供を従える行列は、まるでドラマで見る大学病院の教授総回診である。

彼らの働きぶりは猛烈である。予算編成期になると1か月の「残業時間」は300時間にも及ぶ。国家公務員だから給料は高くはない。それでも頑張るのは「日本のため」であり、将来天下りが約束されているからである。大学教授、会社社長、特殊法人など多くの天下り先がある。社長になりたければ民間会社に入るよりも官僚になったほうが社長になれる確率が高いと聞いたこともある。

しかし、こうしたことはあくまで「外」から見た財務省である。つい最近、財務省の本当の力の源泉を知った。財務省はその権力を使って「合法的」にさまざまなことをできる。財務省は予算配分に大きな決定権を持っているだけではない。国税庁も財務省の管轄だ。さらには金融庁を傘下に従えており、銀行、証券、生保などの金融機関をもコントロールできる。

これらの権力を使えばどういうことができるか?

たとえば、国税庁は脱税を取り締まることができる。もし脱税がばれたら「修正申告」で済ますか、それとも「刑事告発」して所得税法違反などで犯罪人にするかは彼らの自由である。もし、財務省に敵対的な行動をしている人物であれば、犯罪人に仕立て上げることだってありうるかもしれない。その結果、誰だって財務省を敵に回したいと思わなくなる。

また、予算配分の権力を使えば、大学教授を取り込んで財務省に協力させることなど簡単にできる。財務省に協力すればその大学には多くの予算がつけられ、その教授の大学における発言権が強まる。そうすれば大学の副学長などのポストにありつけるかもしれない。大学の教師といっても学究肌ばかりの人ではない。ニンジンをぶら下げられれば話に乗ってくる人は少なからずいるはずだ。

閣議における席順を見ていると面白いことに気が付く。御覧のとおり、財務大臣(大蔵大臣)の席は総理大臣の二つとなりである。

(写真は小泉政権時代の閣議の様子)

 

また、総理の隣が法務大臣であることも注目だ。法務省も大きな権限を持つ。検察庁を通して基本的人権の根幹にかかわる決定ができるからである。同じような事件でも「不起訴」や「起訴猶予」になったり、反対に「起訴」されて有罪判決を受けたりすることがある。日本には「起訴便宜主義」といって、起訴するかしないかは検察官の判断に任されている。政府に協力的な人は不起訴にし、敵対する人は起訴して刑務所にぶち込むといった政治力学は働いていないのか。

「自由とは、国家権力を批判できる自由のことである。国家権力に賛成する自由はいつの時代にもある」。大学の憲法の授業で習った野中俊彦先生の言葉が忘れられない。

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