2018年、大阪市は全国学力テストの結果を教員給与や学校予算に反映させるという方針を示した。「ずっとベッタ(最下位)なのに、危機意識が一切伝わってこない」「教員はぬるま湯に漬かっている。結果に対し責任を負う制度に変える」(2018年8月11日 産経新聞)と吉村市長(当時)は語っている。
生徒のテストの成績を先生の給料に反映させれば生徒の学力は伸びるか。実はこれには先行研究がある。アメリカのテネシー州にあるナッシュビル・パブリックスクールで、延べ2万4000人の生徒と300人の教員を対象に実験が行われた。結果は「統計学的に何の改善も見られないか、むしろ悪影響」というものであった(『統計学が最強の学問である』p20)。
当然であろう。生徒の学力に影響を与える要因は学校教育だけではない。家庭環境、保護者の収入、生徒の生活習慣、地域での取り組みなど、さまざまな要因がある。それに教員は決して「ぬるま湯につかっている」わけではない。過労死ラインとされる月80時間以上の残業を強いられている教員が約半数いる。教員の目の前にニンジンをぶら下げて「もっと頑張れ」というのは、あまりに現場を知らなさすぎる。
文部科学相が「学力テストの趣旨や目的を踏まえてほしい」と慎重な判断を求めたのは当然のことといえる。
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