どの世界でも「神様」と呼ばれる人がいる。囲碁では間違いなく呉清源(1914年~2014年)であろう。中国福建省出身。14歳のときに来日した。
呉清源によれば、囲碁とは勝ち負けを争うゲームではないという。常に彼我の釣り合いの急所を探し、バランスを保ちながら着手を重ねることが対局だという。この言葉を聞いて「うーん、やっぱり神様の言うことは違う」と感心する。自分ばかりが貪ることを考えていた我が身を反省する。
呉清源の本は多い。「21世紀の囲碁」の第1巻をたまたまチラ見したらすごく面白かった。そこで全巻揃えることにした。
『21世紀の碁』の巻頭言には
「来る21世紀は世界中の人々がお互いを思いやり、平和な世界が期待されています。同様に己だけが貪るのではなく、相手にも得をさせ・・・」
とある。そうか、囲碁とはそんなふうに打つゲームなのか。目からうろこであった。
もし、囲碁というものが相手より有利な手を見つけようとするものではなく、お互いの究極の「調和」を求めるものであるとすれば、最後はコミがかりの細かな碁になるはずである。2015年に日本棋院が行った調査では、全対局のうち半目勝負になる割合はおよそ4%(25局に1局)であった。ちなみに、半目勝負が一番多い棋士は依田紀基九段である。依田は呉清源が好きで、彼の碁をいつも並べていたというから、そんなことが関係しているのかもしれない。