誰でも他人の収入は気になるものである。囲碁棋士の場合、いったいどれくらいの年収があるのだろうか。収入の源泉は主に次の二つである。
①賞金……タイトル戦などで優勝した際の賞金
②対局料……対局した場合もらえる金額。勝っても負けても同額もらえる。
日本棋院は毎年の賞金ランキング(①獲得賞金+②対局料)を発表している。
関西棋院はこの種のランキングの公表には消極的で、2011年で賞金および対局料が1千万円を超えた棋士は3人だったという。上記のほかにも各種イベント・囲碁教室での指導料などの副収入があるとはいえ、わずか500人の天才集団の収入としては何と質素なことか。ちなみに、ゴルフで年収が1000万円を超える人は162人(男82人、女80人)だそうである。
対局料は各棋戦によって異なり、名人戦の場合次のようになっている。
・予選Cの対局料は13万円
・予選Bの対局料は20万円
・予選Aの対局料は30万円
・最終予選の対局料は40万円
(対局料は勝っても負けても同額)
さらに一流の証明といわれるリーグ戦(8名の総当たり)での対局料は次のとおりである。
・リーグ戦の対局料
勝つと80万円
負けると66万円
そして名人戦で優勝すると優勝者に3千万円が贈られる。(ちなみに優勝賞金の一番大きいのは棋聖戦で4500万円である)。
リーグ戦以外はすべてトーナメント戦だから、負ければそこで終わりである。反対に勝ち進めればどんどん対局料が入る。プロ棋士は日本で500人ほどいるが、対局だけで結婚して妻子を養うことのできる棋士はおそらく30人いるかいないかであるらしい(『どん底名人』依田紀元基)。残り9割以上のプロ棋士の対局料の年間平均は200万円程度といわれている。しかも、若い時に好成績を収めても、一般的に年齢とともに棋力が落ちる。厳しい世界である。
かつて囲碁人口は1千万人と言われたが、現在では130万人程度といわれる。今、碁会所に行っても目に付くのは高齢者ばかりである。子どもたちに囲碁の楽しさを知ってもらおうと無料囲碁講座を開いてもほとんど集まらない。たとえ囲碁教室に通って7段くらいに強くなったとしても、小学校4年生になるとほとんどが辞めていく。塾に行って東大に入ったほうがよほど安定した一生を送れるからである。親が子どもに「囲碁棋士などというリスキーな人生を遅らせたくはない」と考えるのは当然である。
囲碁人口を増やす特効薬は経済的に魅力ある職業にすることに尽きる。日本では囲碁人口は急速に減少しているが、世界的に見れば囲碁人口は増加しているといわれる。トヨタ杯優勝賞金1億円とか、京セラ杯優勝賞金1億円といった強力なスポンサーが出てくれば、もっと多くの人がプロを目指すのではなかろうか。