いよいよトランプ2.0が始まった。彼の主張する「アメリカ第一主義」とは何か。私は二つの意味を持っていると理解している。
一つは、中国との覇権争いである。世界のグローバル化が始まった16世紀以降、世界の覇権国(No1の国)は、スペイン、オランダ、イギリス、アメリカと次々に変わった。そして現在の覇権国アメリカに挑戦しているのが中国である。はたしてどちらが勝つのか?
個人的な感想を述べれば、America First といって世界に背を向けた段階ですでにアメリカは敗北していると思う。何のことはない。これは1823年に出されたモンロー宣言と同じである。「アメリカはヨーロッパには干渉しないからヨーロッパもアメリカに干渉するな」と宣言し、それ以降アメリカは「孤立主義」を採った。国際連盟への加入をアメリカ議会が拒否したのもこの孤立主義が原因だった。
アメリカが孤立主義を放棄したのは、ソ連という共産主義国家が現れたからである。トルーマン・ドクトリン(1947年)によってアメリカはソ連に対抗することを宣言し、民主主義のリーダーとなることを決意した。それから約1世紀近くがたち、そのアメリカに疲れが出てきている。America Firstというのは、アメリカが19世紀に逆戻りすることを宣言しているようにしか私には思えない。
「アメリカ第一主義」のもう一つの意味は、グローバリズムに対する対抗という意味である。現在宇宙船地球号には、先進国と呼ばれる「特等室」に乗っている国民と、発展途上国と呼ばれる「船底生活」を強いられている国民がいる。グローバリゼーションとは国境の壁を低くし、人の流れを自由にすることである。
この先、グローバリゼーションが進めばどうなるか? 貧しい国の人たちが先進国を目指して大移動を始めるのは必然である。そんなことをすれば先進国の高い賃金はたちまち引き下げられ、世界の賃金は平準化されてしまう。グローバリゼーション(=移民)に反対する動きは、ドイツやフランスでは極右政党の台頭という形で表面化し、イギリスではEUからの離脱という形で現れている。
先進国が「特等室」での生活を維持しようと思えば、「船底生活」を送っている人たちに来てもらっては困る。「船底生活」をしている人達をいつまでも「船底」に閉じ込めておく必要がある。先進国の立場からすれば、主権国家である限り「自分たちの国は自分たちで何とかしろ」というのは自明のことであり、自分たちの生活を犠牲にしなければならない義務はない。
世を上げてグローバル化、グローバル化というが、グローバル化がもたらす負の側面とどう向き合うのか。難しい問題である。