私が高校で地学を習った時は、まだプレートテクトニクス理論なんて知られていない時代だった。その後の地球科学の発達には目を見張るものがある。そこで柄にもなく『知っておきたい地球科学』という本を1年の締めくくりとして読み始めた。
現在、高校で地学を履修する生徒の割合は10%以下であるという。進学校では地学の先生がいない学校も多い。そうした中で本書は最新の知見をバランスよく紹介している。
第1章 地球・生命
第2章 環境・気象
第3章 資源・エネルギー
第4章 地震・津波・噴火
第1章では宇宙や地球、月などの成り立ちを解説する。138億年前、何も物質がない「無」から10の-34乗秒で大爆発し宇宙が誕生した(ビッグバン)。50億年前には太陽系、46億年前には地球が誕生し、38億年前に最初の生命が海で誕生した。
太陽系の中心である太陽の質量は圧倒的に大きい。太陽の引力によってコントロールされている8個の惑星やその他の衛星などを全部合計しても、太陽の質量の1%にも満たない。下の写真の黄色い大きな球体が太陽で、右下に黒っぽく小さく見えるのが水星、金星、地球、火星の模型である。
(大阪市立科学館で撮影)
そんなちっぽけな存在の人間が「俺ガー」と言ってあちこちで戦争をしている。最近、エレクトーンで「パリは燃えているか」(映像の世紀のテーマ曲)を練習し始めたが、人間は歴史から何も学んでいないと改めて思う。
また、第4章では2011年の東日本大震災をきっかけに日本列島は「大地変動の時代」に入ったと説く。プレートが跳ね返り、日本列島は最大5.3m太平洋側に移動し、そのひずみを解消するために岩盤の弱い部分が割れて内陸地震が頻発している。御嶽山、箱根山、草津白根山などの噴火も3.11と関連しているらしい。
さらに、南海トラフ巨大地震は発生時期が科学的に予測できるほとんど唯一の地震であるとして、その時期は2035年±5年であるとする。その被害は東日本大震災の10倍の220兆円になると予測している。私が(生きていれば)82歳頃か。それまでに今持っているマンションはみんな処分しておく方が賢明なのかもしれない。
「地球上に人が住める場所は太古からあったと思いがちだが、大きな間違いである。現在の温和な地球環境は、幸運な偶然の積み重ねの上にできたからだ。私たちは偶然に生かされている。100年、1000年のスケールで考える文化が必要である」と説く。
高校の教科書は数学が17世紀の微積まで、化学も19世紀までに発見された内容でしかない。しかし、この本は21世紀の最新の説まで解説している。地学は実学的に非常に重要であるにもかかわらず受験科目からは除外されており、まともに学習する機会はない。高校生の皆さんにぜひ読んでほしい1冊である。