南英世の 「くろねこ日記」

クリックの向こう側で

 

『Amazonの倉庫で絶望し、ウーバーの車で発狂した』 ジェームズ・ブラッドワース著 を読んだ。
現在、イギリスでは20人に一人が最低賃金で生活している。その実態を知るために、ジャーナリストである著者がAmazon、介護、コールセンター、ウーバーの現場に自ら飛び込む。クリックの向こう側でどんなことが行われているのか。

イギリスにあるAmazonのこの広大な倉庫には、1200人が働く。商品の受け入れ、整理、ピックアップ、発送の4つのグループに分かれて作業を分担する。アマゾンではこうした労働者も、CEOのジェフ・ベゾスもassociate(仲間、共同経営者)と呼ばれる。

有能なら正社員への道もあるとされるが、実際に正社員になれることはない。時給7ポンド。71%の人が倉庫内を1日16キロ以上歩く。あまりに過酷な現場のため次々に辞めていく。最初はイギリス人が雇われていたがみんな辞めていき、いまはルーマニア人など東欧の外国人労働者が多く働く。

ウーバーというタクシー業界は「ギグ・エコノミー」と呼ばれる。ギグ・エコノミーとは、フリーランスの単発の仕事によって成り立つ急成長の労働市場である。ケータイのアプリを利用して、いつでも好きな時に仕事ができ、支払いは出来高払い。あなた自身が社長という美辞麗句の下で彼らがどのような環境で働かされているか。

便利さと引き換えに、クリックの向こう側でどんなことが行われているかを告発した本である。

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