円安が進行する中で政府日銀によるドル売り・円買い介入が何度か行われた。これによって政府・日銀はかなりの利益を得た模様だと報道された。ドル売りをするとなぜ日本は利益を得るのか。
これを正しく理解するためには、外貨準備がどのような形で保管されているかを知る必要がある。外貨準備は日本銀行の口座に当座預金のような流動性で保有されているのではない。通常は9割以上が当該国の国債で保有されている。つまりドルであればFRBの口座に日本政府名義の米国債という形で存在しているのである。
2024年1月現在の日本の外貨準備は1兆2900万ドル(約200兆円)である。この外貨(=国債)は過去の円高・ドル安のときに安く購入したものである。したがって円が安くなった今、高くなった米国債を売って「ドル売り円買い」の介入を行えば、日本政府・日銀は大儲けできる。つまり、過去に安く買ったものを今高く売ることによって利益が出るというわけである。
では、そもそも日本の外貨はなぜ200兆円にも膨らんだのか? 簡単に書けば経常収支の黒字によって膨らんだということになる。つまり、経常収支が大幅な黒字でそれに見合う海外投資が行われなかった場合、大幅な円高になってしまう。そこで円高を回避するために政府は「政府短期証券(=借金)」を発行して円を調達し、その借り入れた円で米国債を購入する。その米国債が外貨としてFRBの口座に保管され現在200兆円になっているというわけである。
最近、200兆円もの外貨があるならその「埋蔵金」を国の財源にすべきだという声が上がっているが、それは間違っている。外貨は「借金」が原資である。かりに外貨を売って差益が出たとしても借金の償還に充てるのが筋というものである。