日本の高度経済成長は安い石油に支えられていた。1973年の石油ショックによって高度経済成長は終わり安定成長へと移行した。同時に中東に過度に依存していた石油輸入の分散化が進められ、原子力発電へと舵を切った。
その原子力政策に待ったをかけたのが2011年の福島第一原子力発電所の事故だった。すべての原発が止められ、不足分を火力発電で補った。
(NHK 「混迷の世紀」より)
2022年2月、ロシアのウクライナ侵攻によって世界のエネルギー問題は新たな局面を迎えた。
第一に、ロシアが原子力発電所を攻撃のターゲットにしたことである。これにより原子力発電は「戦時には攻撃ターゲットにされる」という新たなリスクを抱えることが判明した。原子力発電は長期的なエネルギー戦略としてはふさわしくないことが誰の目にも明らかになった。
第二に、ロシアが火力発電の燃料になる石油やLNG(天然ガス)を政治の駆け引きに使い始めた。
ロシアへの依存度の高いドイツが真っ先に悲鳴を上げ始めた。なぜドイツはロシアへの依存度をここまで高めたのか? 理由は第二次世界大戦でドイツはロシア人を2600万人殺したから、その罪滅ぼしもあってロシアからの購入比率を高めたのである。
しかし、プーチンはしたたかだった。ドイツがロシアへの依存度を高めれば高めるほど、ドイツはロシアの言いなりにならざるを得ない。そう踏んでいたからである。ロシアは信頼するに足るパートナーではなかった。ドイツはいま、必死に脱ロシア化を進めようとしている。
日本がロシアに依存する割合はそれほど大きくはない。しかし、自給率がわずか11%しかないため、依存度は低いが日本に与える影響は決して小さくはない。2009年から進めてきたサハリン2を、プーチンは今年になって事業主体をロシア企業に変更した。
LNGは石油に比べて二酸化炭素の排出量が約半分であり、地球温暖化防止にも良いとされる。2021年、中国が世界最大のLNG輸入国になった。ドイツも日本もロシアに変わる輸入先を求めている。今、世界でLNGの争奪戦が始まっている。そうしたなかで、水素(H2)を火力発電所の燃料に使う研究が進めれらている。
これから冬場に向かって電力供給はますます厳しさを増す。しかし、マスコミは相変わらず国葬だ、統一教会だと大騒ぎをしている。もっと大事なことがあるのにと思うが、いまのところエネルギー問題なんか放送したって視聴率取れないもんね。毎月の電気代が2~3倍に跳ね上がらないと国民は関心を示さないんだろうな。