上のデータはNHKの世論調査である。
森友・加計学園問題、陸上自衛隊の日報隠し、財務省の文書改ざん、自民党の議席を増やすための参議院議員定数6増などなど、国民の多くが納得していない問題が噴出している。しかし、それにもかかわらず安倍内閣の支持率は安定している。なぜか? いろいろ批判されながらも、これほど長期にわたって政権が続いているということは、やはりそれなりの理由があるはずである。その秘密について探ってみた。
第一に、国民各層のニーズに応えた政策を打ち出して有権者の支持を獲得している点が挙げられる。
たとえば、有権者の関心が一番高い経済政策政策では、アベノミクスを打ち出し景気回復と雇用の回復を実現した。また、労働者の支持を取り付けるため、経済界に労働者の賃金の引き上げを要請した。一方、労働力不足を補うため、企業側の要請を受け入れて外国人労働者の積極的導入を図ろうとしている。「保育園落ちた、日本死ね」問題をきっかけに、幼児教育の充実にも力を入れ始めた。長らく保護し続けた日本の農家に対しては、保護を続ける傍らTPPに参加するなど、農家のだまし方もうまい
これまで自民党と言えば、財界・日本医師会、農協などのコアな支持層を基盤とした政党と考えられていた。しかし、現実の自民党はそんな単純なものではない。国民各層のニーズをうまく取り込み、いわゆる無党派層からも多くの支持を集めている。特に、最近の傾向として若い人たちのなかにも自民党支持者はかなり多い。これは以前見られなかった現象である。
自民党は保守政党であり、本来の経済政策から言えば「小さな政府」を指向するはずである。ところが現実の政策を見れば、財政赤字を拡大し、「大きな政府」を指向し、国民各層にどんどんばらまいている。完全にリベラル派のお株を奪った政策といえる。これが安倍政権が安定した支持率を得ている最大の理由である。
第二に、野党のだらしなさがある。今の野党に政権を担うだけの信頼性があるかと問われれば、多くの国民は「ノー」と答えるだろう。まず、自民党に対抗するだけの経済政策が全くない。今日、明日の経済運営を安心してまかすことができない政党に、いったい誰が投票するというのか。それよりも、たとえ森友・加計学園問題があっても、いまの安倍政権のほうがましだとして、消去法で安倍内閣を選んだとしても不思議ではない。野党第一党の立憲民主党の支持率が5%前後という事がこのことを物語っている。
また、野党は自民党の揚げ足取りばかりやっていて、日本をどんな国にしたいのかが見えない。国会の論戦を見ていても、取り上げるのはスキャンダルや議員としての資質問題などばかりで、国民目線から見ればまともな政策論戦とは言い難い。これは立憲民主党に限らない。国民民主党も、共産党もみな同じである。
さらに言えば、野党は政策に1ミリでも違いがあれば互いに「排除」し合い、まとまるだけの懐の深さがない。イデオロギーにこだわりすぎて自民党を利するばかりである。もちろん、かつての民主党のように、自民党より右寄りの人からバリバリの左翼まで含むようではウィングを広げすぎである。だから、民主党が政権をとった2009年、内部で足を引っ張り合い「決められない政党」とならざるを得なかった。その意味で民主党はいずれ分裂・再編する必要があったといえる。今は、その再編の過渡期ともいえる。
第三に、自民党の選挙戦術のうまさがある。安倍総理の本丸は憲法改正である。しかし、選挙前は憲法改正や安全保障問題など、国民の関心が薄いテーマには全く触れず、経済政策を中心に国民にアピールする。そして、選挙で勝った暁には「私の政策が国民に支持された」として、憲法改正を前面に押し出してくる。
ヒトラーがなぜ選挙で政権を獲得できたかというと、世界恐慌に際して大規模な公共事業や軍事費の拡大をやり、40%近くもいた失業者を劇的に減少させたからである。このことについては以前書いた。
国民の心がわからぬ野党
自民党に対抗できる野党が出てこない限り自民党のやりたい放題の政治が続く。そして、その犠牲となるのは国民である。2018年11月8日の新聞に、小沢一郎、前原誠司、橋下徹の各氏が会合を持ったという記事が載っていた。新しい動きが始まっているのかもしれない。
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