平太は竈の番をしていた。
火が安定するまで竹筒で息を吹き入れていないと、消えてしまうような、湿気た空気だった。
パチパチと、火の粉が手に当たるし、熱い。
それでも飯炊きのために火は絶やせない。
バチチッ 大きく火が爆ぜた。
すると、手の横にもみじの葉が飛んできた。
「え?」
雪も降りそうな季節であった。この辺りにもみじの木はない。
パチッパチパチッ
火が爆ぜる音とともに、もみじが竈から吹き出す。
平太はうっとりとしてしまった。
息を吹く手も止まった。
ぼうっとしていると、もみじに包み込まれ、いつの間にか熱く、暖かい火の中にいた。
平太は幻想に囚われたまま、炎に気づかず燃やされてしまった。
焦げついた土間には、一枚のもみじが落ちていた。
さる『いろりもみじ』の話

Moi's craft
もい
(『いろりもみじ』はもいの編み物作品の名前です)