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Moi' craft もいのブログ

写真・編み物作家のもいのブログ

いろりもみじの物語-1

2022-10-12 10:24:30 | 日記

平太は竈の番をしていた。

火が安定するまで竹筒で息を吹き入れていないと、消えてしまうような、湿気た空気だった。

パチパチと、火の粉が手に当たるし、熱い。

それでも飯炊きのために火は絶やせない。

バチチッ 大きく火が爆ぜた。

すると、手の横にもみじの葉が飛んできた。

「え?」

雪も降りそうな季節であった。この辺りにもみじの木はない。

パチッパチパチッ

火が爆ぜる音とともに、もみじが竈から吹き出す。

平太はうっとりとしてしまった。

息を吹く手も止まった。

ぼうっとしていると、もみじに包み込まれ、いつの間にか熱く、暖かい火の中にいた。

平太は幻想に囚われたまま、炎に気づかず燃やされてしまった。

焦げついた土間には、一枚のもみじが落ちていた。


さる『いろりもみじ』の話




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(『いろりもみじ』はもいの編み物作品の名前です)