老舗履物店で修業をした職人が、木材倉庫を改装し、自らの店をオープン。現代の服に合う新世代の草履や京都の粋をつぎ込んだ空間など、京都に行ったらぜひ見ておきたい新ショップだ。
明治の創業以来、祇園町で誂えの草履を作り続ける〈祇園 ない藤〉。そこで修業を重ね、番頭として活躍してきた職人・関塚真司が開いたのは、端正な履物を扱う〈履物 関づか〉と、履国内外から選び抜いた洋服や服飾雑貨が揃う〈岩倉 AA〉。自然豊かな郊外に突如現れるシックなスペースは、わざわざ足を伸ばす価値ある空間だ。
靴ブランドでのキャリアを経て、みずからの手で履物を作り上げる伝統工芸の世界へと飛び込んだ関塚。修業先として選んだのは、着物を着る人にとって憧れの存在でありながら、草履をベースにしたサンダルを作り上げヒットさせるなど幅広い世代から注目を集める老舗。そこで職人として十数年を過ごす中で、履物を仕立てる技を養い、感性にも磨きを掛けてきた。満を持して今年4月、オープンさせたのが〈履物 関づか〉/〈岩倉 AA〉となる。
倉庫だった空間は半分に分けられ、奥が〈履物 関づか〉となる。畳の上に並べられた道具を見て、ここが作業場を兼ねていると気付かされる端正さ。そもそも草履は土台や鼻緒づくりなど、すべて分業の職人技で構成されている。関塚が手がけるのは、客の注文や好みを受けて草履の色や大きさ、組み合わせまでを提案するプロデューサー的な役割と、鼻緒を挿げて仕上げる作業だ。着物に詳しくなくとも美しさに見惚れる草履は、土台からすっと伸びる鼻緒の脇に隙間がない。極めて小さな穴を開けて通すことで、すっと足を包み込み、履きやすい草履に仕立てるのが信条だと関塚はいう。畳に座って店主とのやり取りを重ねるスタイルも、誂えた草履の完成を待つ楽しみも、驚くほど伝統的な京都の商売がここに息づいている。
ファッションにも関心が高い関塚が、履物店と同時に作りたかったというショップには、みずから手がけたアイテムや、別注の品、セレクトが並ぶ。日本の究極のカットソーブランド〈フィルメランジェ〉でカットソーを裁断する際に生まれてしまう落ち布を使ったルームシューズは〈履物 関づか〉とのコラボレーション。愛用する〈フィルメランジェ〉のカットソー、〈デザーティック〉に別注したヴィンテージニットのバッグ、ルームシューズにもなる皮製の足袋〈tanhi〉など、ひとつひとつがストーリーを持つアイテムは、草履と同じく長く手元に置きたくなるものばかりだ。
text_Mako Yamato
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