熱帯モンスーン気候 Am
アメリカ合衆国フロリダ半島南端のマイアミは,11~4月は気温・湿度ともに快適だが、5~10月はスコール(夕立)が多く高温多湿であり、ハリケーンも来襲する。
マイアミ
アメリカ唯一の熱帯の都市がフロリダ州マイアミである。寒さ嫌いのイタリア人の多い町であった。冬は暖かいので、全土から年金生活者が来て、老年人口の比率が高くなった。税金も安く、フロリダ州に住所を定めて、他州で生活しているアメリカ人も、冬はマイアミなど、フロリダ州に長期滞在するようになった。
禁酒法(1920~1933年)が実施されてアメリカの酒が高価格でヤミ取り引きされ、マイアミには酒密売で儲けた者が大勢集まった。私立大学をつくり、高級ホテルも建てた。酒密売人、政治家、ユダヤ人商人など、マイアミには金持ちが集まった。
1898年、スペイン・アメリカ戦争でスペインが負け、キューバのグアンタナモがアメリカ領土になり、1959年にカストロのキューバ革命後には反米親ソの共産主義国になった。
キューバでサトウキビ農園を経営していたアメリカ人は、財産を没収され、生命も危うくなった。カストロはキューバのマリエル港からアメリカ人とそれ以外の亡命希望者全員を、自由に出国させた(1980年4月~9月、マリエル大量出国事件)。12万人の出国者がいたが、アメリカ人よりもスペイン人が多かった。精神異常者・犯罪者・テロリストなども含まれていた。
カストロは、キューバ革命を進める上で邪魔になる者を追い出したのであった。その12万人の当面の行き先がマイアミであった。
マイアミは富裕層が多く、静かで平和の町であったが、キューバの刑務所からマイアミに直行した一文無しのスペイン人が急増し、極悪犯罪と麻薬犯罪が急増した。マイアミは、1980年代、アメリカで最も危険な都市であった。カストロのねらいが的中した。
富裕層はマイアミから脱出し、ニューオリンズとかロスアンゼルスに去ってしまった。スペイン人(ヒスパニック)の多い貧困都市になったが、貧しくなると犯罪者は減り、少しずつ治安が回復している。
しかし、2005年の調査ではマイアミの人口36万人のうち、80%はヒスパニックと黒人である。36万市民のうち、英語を話すことのできない者は50%、アメリカの貧困ライン以下の者が40%と推定されている。
フロリダ州の熱帯病
フロリダ州特有のシガテラ中毒は、熱帯及び亜熱帯のサンゴ礁の周囲に生息するシガテラ毒魚を摂取することによって起こる。致死率が低いが、世界で毎年2万人が中毒を起こしている。ドライアイスショックが大きな特徴である。暖かいものを冷たく感じ、冷たいものを暖かく感じる。感覚の逆転が特徴的な症状である。ハリケーンによって珊瑚礁が破壊されると、ある種の渦鞭毛藻が大量発生し、それを食べた魚にシガテラ毒素が蓄積する。最初は魚にシガテラ毒素はないが、藻から小魚、大型魚にシガテラ毒素が濃縮蓄積する。大型魚ほど毒性が強い。
ケッペンの気候区分記号Amは「熱帯モンスーン気候」あるいは「弱い乾季のある熱帯雨林気候」である。Amのmはmonsoonの頭文字ではなく、AfとAwの[中間middle]のmである。Amは熱帯モンスーンだけが原因の気候ではないから、「弱い乾季のある熱帯雨林気候」と書き換えら れた。誰の着想で改称したのかは不明だが、気候用語としてはなじみにくい。
熱帯の海岸林マングローブ林
陸と海の境界で生育している樹木がマングローブである。マングローブが根を張る海岸低地の土壌は、塩分が多く、空気をわずかしか含まない泥であり、大抵の植物ならば数時間で枯れてしまう。
こうしたマングローブ林は多様な生物が暮らす生態系の一つであり、林冠に鳥、根元に貝が住む。ヘビやワニも来る。魚が産卵に訪れる。生物の貴重なエサ場である。
実は[マングローブ]には厳密な定義はない。マングローブに分類される植物は70種で、ヤシ、ハイビスカス、モチノキ、イソマツ、ハアザミ、マメ、フトモモなどが含まれる。地をはうような低木から60メートルの高木まで、高さも多様である。
マングローブが最も多いのは、その起源とみられる東南アジアだが、マングローブ林は世界各地に広がっている。ほとんどが北緯30度~南緯30度の熱帯・亜熱帯だが、ある種のマングローブは温帯にも進出している。
すべてのマングローブは、海岸に育つ適応力がある。根から吸い上げた海水から塩分を濾過して、潮間帯で生きることができる。
呼吸根を、泥中からシュノーケルのように出して空気を吸い込む種類もあれば、タコの足のような根を伸ばしてぬかるんだ堆積層で幹を支えるものもある。複雑にからみ合う根は、川が運ぶ堆積物をせき止め、幹と枝は波が陸地を侵食をおさえる。
※ マングローブ林は海水の塩分では枯れない。魚介類の繁殖地として重要。
※ マングローブ林は手前に残り、大部分はエビ養殖地になった(インドネシア)
海辺の生態系を守るマングローブ林は、世界各地で危機的状態にある。エビ・ウナギの養殖場、塩田開発・宅地・道路、港湾施設、ホテル・ゴルフ場、さらに干拓農地を拡大するため、破壊されているのが現実である。このような直接的破壊に加え、原油流出、化学物質による土壌・水質汚染、過剰な土砂の堆積、水分中の塩分濃度の変化など、間接的にマングローブ林を死滅させる脅威が無数にある。
2004年に発生したインド洋大津波の直後は、一時的だが、マングローブの保護が大きな関心を集めた。マングローブ林が天然の防波堤となって津波のエネルギーを分散させ、資産や家財の被害を抑えたからだ。人命を救う効果もあったと考えられている。
日本のマングローブ
日本には熱帯気候は存在しないが、鹿児島県奄美大島がマングローブの北限であり、ヒルギ科のマングローブが生育する。住用町マングローブ国定公園特別保護地区(マングローブ原生林)として保護されている。 マングローブに似た植生として鹿児島市喜入町にヒルギ群落があり、特別天然記念物に指定されているが、江戸時代に移植されたとの説が強く、自然分布での北限は種子島である。
伊豆半島ではヒルギが植樹されており、定着の北限とされる。
日本のマングローブ林は、ヒルギ科が多いが、次の6種が見られる。
ヒルギ科メヒルギ(種子島)
ヒルギ科オヒルギ(奄美大島)
ヒルギ科ヤエヤマヒルギ(沖縄島)
クマツヅラ科ヒルギダマシ(宮古島)
シクンシ科ヒルギモドキ(沖縄島)
マヤプシキ科マヤプシキ(ハマザクロ。石垣島)
日本のエビ輸入
日本では東南アジアで養殖されたエビを輸入しているが、輸入エビの半分以上は東南アジアからのエビである。
2013年11月に、日本の有名レストランなどで、高価な輸入エビ(シバエビ)が安価な輸入エビ(ブラックタイガー)を使ったことが問題になった。これは東南アジアで養殖される輸入エビが、原因不明の「早期死亡症候群(EMS)」にかかり、大量に死んで輸入エビの価格が高騰しているからである。東南アジア各地の養殖業者は病気拡大を防ぐため、稚エビの放流を減らしたり、養殖期間を短縮しているため、大型のエビがさらに供給不足の状況になった。
日本のエビ消費量間20万トンである。9割以上を東南アジアからの輸入に頼っている。日本で輸入冷凍エビ価格が急上昇したのは、品不足のために輸入会社が値上げをしたり、現地で高価格になったエビを輸入しなくてはならないからである。
輸入エビの不足は養殖場の病害の拡大以外に、エビの国際的な需要増加も原因の一つである。東南アジアの養殖エビは、富裕層の多い中国・アメリカに輸出が増えている。日本では、回転寿司などで輸入エビは低価格と思いこんでいる。国際的な冷凍エビの生産過剰の状態になって価格が暴落しない限り、エビの輸入増加は困難である。エビは高級品、半世紀前の感覚でエビを食べる時代が到来したのかもしれない。
回転寿司のエビ
エビにはエビ、甘エビ、生エビの3種類があるが、残念ながら水産業界の分類ではない。回転寿司業界用語である。甘エビが海を泳いでいるのではない。また、頭がないから、水産業界では何と言われるエビなのか分からない。客は、どんなエビでもエビだから満足してカネを払って帰るので、回転寿司店としては何のエビでもいいのかもしれない。