地理講義   

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102.モンスーン

2013年11月05日 | 地理講義

モンスーン(季節風)
モンスーンは南アジアのアラビア海で発達する大規模な海陸風である。大陸は暖まりやすく、冷えやすい。海洋は比熱が大きく、暖まりにくく冷えにくい。低温の風が暖気の上昇を補う形で、地上を吹く季節風である。日本では夏には太平洋からの南東季節風、冬にはシベリア生まれの北西季節風が吹く。

夏のモンスーン
夏は大陸が高温で上昇気流を生じ、その空気を補うために海から大陸に南西風が吹く。この地上付近の風が夏のモンスーンである。西日本の梅雨が、インドの夏と同様、スコール型の豪雨が特徴的である。これはアラビア海からのモンスーンに、太平洋からの高温湿潤大気が合流し、上昇気流がさらに多くなるためである。

夏のモンスーン(南西モンスーン)による降雨
(1)インドの西海岸の地形性降雨
西ガーツ山脈に南西モンスーンが吹き付け、上昇気流ができて雨雲をつくる。インド西海岸は夏の降水量が多く、熱帯モンスーン気候Amになる。夏は雨季で雨が多く、冬は乾季である。インドの稲作地帯になっている。

(2)インド北東部の地形性降雨

北はヒマラヤ山脈、東はパトカイ山脈にさえぎられた地域は、世界的な多雨地域である。アッサム州を流れるブラマプトラ川は、大雨でヒマラヤ山脈を侵食し、大量の雨水と砂泥をバングラデシュまで運んでガンジス川と合流する。ベンガル湾にガンジス=デルタを形成する。
アッサム州では夏の雨季に茶が生育し、冬の乾季に茶がくり返して収穫され、高級紅茶アッサム茶に加工される。アッサム州内では750の茶園があり、インドの半分の茶が生産される。
アッサム州の東隣メガラヤ州チェラブンジでは、1860年に年降水量26,461mmを記録した。チェラブンジの年平均降水量は12,028mmであり、1860年にはその2倍以上の降水があった。チェラブンジの降水は、夏の南西モンスーン時に集中し、冬の北東モンスーン時にはほとんど雨が降らない。冬の乾季には、生活用水は谷底を流れる小川から運ばなくてはならない。

(3)梅雨
日本も中国も、夏のモンスーン時には雨季であり、ともに梅雨といわれる。インド洋(アラビア海)からのモンスーンが梅雨の雨全部を運ぶのではない。太平洋からの高温多湿な風が、インド洋からのモンスーンに吹き込んで、降水量を増やす。
西日本の梅雨は南西モンスーンの直接的影響があり、インド・中国南部同様、大粒の雨によるスコールである。しばしば洪水や土砂崩れの災害を起こす。
東日本の梅雨には、南西モンスーンの影響は少ない。オホーツク海からの寒気団からの冷たい霧雨が続く。洪水や土砂崩れの被害は少ないが、梅雨が終わらずに、霧雨・低温の夏がいつまでも続くことがある。その時の北東寒冷風が「ヤマセ」であり、東日本太平洋岸の稲作が冷害被害を受ける。


冬のモンスーン
冬は海の方が暖かく、大陸からアラビア海へ乾燥した北東季節風が吹く。これが冬のモンスーンである。大陸からの季節風なので一般的には乾燥していて、冬に乾季のある気候をつくる。しかし、日本海では暖流の対馬海流から水蒸気を大量に供給され、北西モンスーンは日本海側に豪雪をもたらす。一般にモンスーンは海陸分布に加え、大気大循環に伴う緯度帯の大気循環が加わって、モンスーンの発生地域(モンスーン気候)では、地域特有の風向きになる。


冬のモンスーンの影響
冬のシベリアは晴天が続いて放射冷却が進む。地面の熱が、赤外線放射の形で無限宇宙空間に運ばれ、シベリアに冷たい空気の塊ができる。冷たい空気は上昇せず、地面下層に貯まる。それでもさらに冷たい空気が降りるので、押された冷たい空気は、四方に流れる。インドの冬の冷たく乾燥した北東モンスーンは、シベリア高気圧からの季節風である。
シベリアから流れ出た、冷たく乾燥した空気が、日本には北西季節風となって吹く。シベリアでは低温乾燥の空気だが、北西季節風は日本海で高温の対馬海流から大量の水蒸気を受け取って積乱雲をつくる。この積乱雲が日本海側の山地に衝突して、世界的豪雪地帯を形成する。

 

日本海側の豪雪の原因は、日本海を流れる暖流対馬海流と、北西モンスーンが原因である。日本海で成長する積乱雲は、しばしば雷をともなう。豪雪の前兆となる雷は、「雪おこし」といわれる。

 

上越市高田は、世界最大の豪雪地帯である。12月1月の降水量は400mmを越える。1年間の降水量の季節配分からは、高田が冬が雨季、夏が乾季で、地中海性気候のようである。
しかし、夏には十分な降水量があり、植物が枯れるような乾季ではない。冬と比較すれば、夏の降水量が少ない。しかし年中雨季であり、乾季は存在しない。日本列島の大部分と同様、温暖湿潤気候Cfaである。


世界のモンスーン
大陸東岸や低緯度の大陸南岸(南半球では北岸)に発達する。東アジアからインド洋沿岸、アフリカ大陸東部、カリブ海、南北アメリカ大陸東岸、オーストラリア東岸などが代表的である。
モンスーンmonsoonの意味:アラビア語では「季節」の意味である。乾季には大陸から海洋への風、雨季には海洋から内陸への風が吹く。モンスーンを利用する季節風貿易が行われた。夏(雨季)にはアフリカ東岸からインドへ向かい、冬(乾季)にはインドからアフリカ東岸に向かった。このインド洋の季節風貿易路が、海のシルクロードである。

熱帯・亜熱帯の乾季米作(乾季稲作):夏の南西季節風モンスーンが、雨季や梅雨の形で、アジア各地に雨をもたらす。雨季の降水を利用して、米作がアジア各地で盛んに行われてきた。しかし、最近は、雨季の降水量が高品質の米作には適度でない、との理由で、上流域にダムを建設して農業用水量を調節し、新開発の奇跡の米などを、化学肥料や農薬などを併用して栽培するようになった。しかし、緑の革命が進むともに、米の世界的生産過剰が続いて米価は値下がり傾向になった。水田地主の生産意欲は向上したが、小作農民や土地無し農民にとっては、経済的なプラスはわずかであり、むしろ労働強化になった。
モンスーンの乾季は冬であり、乾季の農業特に水を大量に使う米作はは無理と思われていた。21世紀になると、ダムに貯えられた水を利用し、冬の乾季の米作が盛んになりつつある。降水量の少ないことは、ダムの水を計画的に配分・利用する土砂降りの雨の中の農作業や、洪水による凶作を心配する必要もなかった。乾季米作は、ダムから計画的に農業用水を送られると、従来の雨季の農業よりも効率的であった。特に米の輸出国タイでは乾季米作が盛んになった。

コリオリの力
地球自転の結果として生じる力である。北半球では北に向かう風を右に動かす力として作用する。赤道から北極へ流れる南風はコリオリの力を受けて右に方向を変え、南西風(偏西風、夏のモンスーン)になる。北半球を吹く北風は北東風(貿易風、極東風、冬のモンスーン)になる。コリオリの力は、南半球では進行方向を左に変える。南極付近の極循環の地上風は南向きだが、コリオリの力で左に進路を変えて、極東風になる。
コリオリの力は緯度をθとすると、sinθとなる。中高緯度では偏西風や貿易風をつくり、海 流の動きを変えるほどの大きな力である。赤道付近では非常に弱い力である。
台風が日本付近で進行方向を右向きに変えるが、その原因は偏西風にひきづられるためと、コリオリの力の作用により、台風そのものが北半球では進行方向の右側つまり東にずれる性質がある。これは球体の物理学的性質で生じるコリオリの力の作用によるものである。
北半球の海流にもコリオリの力が作用して、右に曲がり、黒潮、東太平洋海流、カリフォルニア海流、北赤道海流と名称を変えながら、海流は大きな円を描いている(環流)。


 


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