にんじんの生産地
にんじんは全国で60万トン、北海道で20万トンが生産される。北海道がにんじん生産の都道府県順位では第1位である。近郊農業としての千葉県が第2位である。千葉県以外では、大都市市場からは遠い、北海道、徳島県、青森県などの生産量が多い。栽培のしやすさと、鮮度が長持ちするので、遠隔地のにんじん栽培が盛んである。遠隔地においても、にんじんの鮮度を保持するため、冷蔵施設における貯蔵と冷蔵トラックによる輸送が中心になっている。
北海道・千葉県ではにんじん生産が経営の中心となる農家は少なく、他の作物との輪作である。徳島県にはにんじん専業農家があり、連作障害を避けるためと、気候の急変を避けるため、高い技術を蓄えている。
にんじんは市場に年中出回っている。1年中くり返しの栽培ができるし、全国のどこかで大量に栽培出荷されているからである。
北海道では年1作だが、他の地域では年2作であったり、稲作の裏作として水田跡で冬に栽培するケースもある。他の作物と比較して栽培しやすいく、価格の高騰するようなこともないので、にんじん専業農家は少ない。数少ないにんじん専業農家は、にんじんを市場へ出荷するだけではなく、にんじんの通販や、自家製のにんじんジュースを加工したりする、いわゆる6次産業化を進めている。
北海道のにんじん
北海道のにんじん生育期間は100日であり、本州各地よりも短期間に収穫できる。4月~7月にたねをまき、7月~11月に収穫・出荷する。南富良野町・富良野市では収穫時期に労働力不足になるため、日雇い労働者を臨時に雇用する。出面(でめん)といわれる日雇い労働に従事する者は、自衛隊員の妻であったり、他作物栽培農家の嫁であったりする。出面の従事者は出面取りといわれる。最近はにんじん栽培にも各種機械が導入されて出面は減ったとはいえ、なお、貴重な労働力である。
南富良野と並ぶ大産地の音更町では、農家は農地を提供し、農作業全般は農協が請け負う、作業委託形式である。要するに、富良野地域の出面を、農協の大型機械が請け負うのである。種まき、栽培管理、農薬・肥料の散布、収穫、出荷、予冷倉庫への搬入、選果、保冷トラックへの積み込みを農協が行う。農協には種まき用トラクター、培土用自走式カルチ、自走式にんじん収穫機が5台ずつ備わっていて、作業を受託することができる。音更町の農家はにんじん栽培を農協にまかせ、小麦、大豆、酪農などの生産に集中する。また、音更農協による大手スーパーとの直接取引量が拡大、全生産量の30%を越えた。
千葉県のにんじん
首都圏の近郊農業である。小松菜・大根などの暑さに強い作物は夏に栽培し、にんじんのような寒さに強い作物は冬に栽培する。春にんじんは12月~3月に種をまき、小型トンネルで栽培し、春から夏に出荷する。冬にんじんは7月~8月に種をまき、露地栽培により、12月に収穫できるが、一部は畑に放置したままで保存し、3月まで出荷可能である。
千葉市・船橋市はにんじんの産地指定を受け、価格暴落時には損失補填される。このため、にんじんの栽培面積が増加した。
千葉県は首都圏に出荷する様々な野菜を年中栽培、出荷する。主要野菜の出荷カレンダーは次のとおりである。
徳島県のにんじん栽培
吉野川下流域の板野町・藍住町など、沖積平野で吉野川の水を引いてにんじんが栽培される。1960年代ににんじん栽培が本格化した。
大型ビニールハウスでの栽培であり、にんじん原産地のアフガンの乾燥気候を再現している。他地域の端境期である3月~5月の市場競争力は強い。水田裏作のにんじん栽培も行われる。
にんじんの出荷先は首都圏が半分を占める。反収が多いので、にんじん専業農家もある。
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