ニュージーランドの酪農地域
ニュージーランドは人口480万人、面積26万㎢、人口密度18人/㎢である。耕地は2.5%、牧草地は40.4%である。牧草地の割合が高く、年中、乳牛・羊を屋外飼育する。1戸当たり400頭の乳牛を飼育する。
北島はかつて牛島といわれ、降水量の多いワイカト地方が酪農の中心であった。牧草が自然の状態でよく育ち、8月~翌年5月までの温暖期に、牛乳を大量に生産する。5月~7月の冬期間は牛は妊娠・出産の季節であり、牛乳の生産量は少ない。北島は、全国の牛乳の1/4を生産する。
牧草地の拡大は限度に達したので、1頭の乳量を増やすために、飼料に小麦・大麦・とうもろこしのような濃厚飼料を与える傾向が強まっている。
北島には9,000戸の酪農農家が300万頭の乳牛を飼育し、97万トンの乳製品を出荷する。農地の拡大が限界に達して、牛乳生産も頭打ちである。
南島の中心はかつて牧羊の盛んであったカンタベリー地方である。偏西風はサザンアルプスを越えて、カンタベリー地方を乾燥させるが、河川・地下水を利用した灌漑網の整備を進めて牧草地を造成した。
南島では3,000戸の農家が200万頭の乳牛を飼育する。北島の2倍近い飼育頭数である。乳製品出荷量は69万頭であり、北島より少ない。降水量の少ないため、良質の牧草を得るためには大規模な灌漑が必要であり、北島よりも大規模でありながら、高コストの酪農である。
牛乳生産量の増加
ニュージーランド全体では酪農農家数は減少し、現在、12,000戸である。農家戸数は減少しても、1戸あたりの飼育頭数は、過去10年間で100頭増加し、400頭を越えた。
ニュージーランドの1頭当たり牛乳生産量は4~5トンであり、デンマークや日本などと比較すると、ほぼ半分である。牛乳生産量(搾乳量)の少ない理由は、野外飼育が中心であり、アルファルファ・とうもろこし・大豆・大麦・小麦などの輸入濃厚飼料を与えないためである。
搾乳量が少なくても低コストの野外飼育のため、酪農業としての採算は十分に合う。安い牛乳の大量生産である。従って、生産される牛乳の9割以上を輸出できるほど、国際競争力が強い。
乳製品の大量輸出
ニュージーランドは、乳製品の輸出は世界第1位である。また、ニュージーランドからの輸出品目のうちでも第1位である。酪農農家のほぼ全部を支配下におく巨大酪農系企業フォンテラFontererraは、牛乳の生産、加工、輸出、関連食品の販売などを一手に行う。形の上では農家が株主であり、配当を受ける。
フォンテラが、輸出指向型のニュージーランドの酪農を作り上げた。ファンテラの輸出先はアジアが半分を占め、特に中国への粉ミルクなどの輸出が非常に多い。フォンテラは世界最大の乳業メジャーであり、日本にも進出している。