コロナワクチン接種後の横紋筋融解症に注意！

ワクチン接種後に筋肉痛が強く生じたり脱力になる方が多いです。その中でも横紋筋融解症になる場合もあります。

横紋筋とは、心臓を動かす「心筋」と体を動かす「骨格筋」を指します。横紋筋融解症は、特に骨格筋に見られ、骨格筋を構成する筋細胞が融解・壊死することで、筋肉痛や脱力を生じる病態です。そのまま放っておくと、起き上がることや歩行が困難になり、腎不全などを合併し、回復に長期間を要することがあります。また尿が血尿のような赤褐色の「ミオグロビン尿」になります。

米国疾病管理予防センターのワクチン有害事象報告システムによると、2022年1月14日現在、COVID-19ワクチン接種後の横紋筋融解症は214件報告されています。

日本でも、 mRNA-1273ワクチン初回接種後に横紋筋融解症を初発症状として発症した致死的な血栓性微小血管症の1例　が報告されています。

Fatal thrombotic microangiopathy with rhabdomyolysis as an initial symptom after the first dose of mRNA-1273 vaccine: A case report
Yuya Kamura

https://www.ijidonline.com/article/S1201-9712(22)00107-2/fulltext

【mRNA-1273ワクチンの初回接種後に重篤な横紋筋融解症と多発性細動脈血栓症を発症した日本人男性の症例を報告する。横紋筋融解症は急速に進行し，多臓器に梗塞をきたした．抗血小板因子4抗体検査は陰性であった。積極的な輸液、血液透析、抗凝固薬、高用量ステロイド、エクリズマブの投与など集中的な支持療法を行ったが、最終的に多臓器不全で死亡した。剖検の結果、細動脈の多発性血栓症と臓器壊死が認められた。血清補体の低下と免疫蛍光法で検出された腎糸球体のC3沈着は、免疫介在性機序の可能性を示唆した。我々の知る限り、COVID-19ワクチン接種後の有害事象として横紋筋融解症および細動脈の多発性血栓症を認めた初めての症例報告である。】

最近では、66歳日本人男性、ファイザー２回後の３回目モデルナ接種で、四肢に紅斑と筋肉痛を発症し、横紋筋融解を伴う丘疹水疱性発疹の重症例があります。

A severe case of papulovesicular exthanthema with rhabdomyolysis after corona virus disease 2019 heterologous booster vaccination
A Baba , Y Maki , T Kanekura , H Tsubouchi

66歳の日本人男性が四肢の皮疹と筋肉痛で緊急入院した。39℃以上の高熱があり、動くことも困難であった。高脂血症のためベザフィブラート200mg/日を3ヵ月間服用し、BNT162b1（BioNTech-Pfizer）の2回目接種から8ヵ月後にmRNA-1273ワクチン（Moderna）の3回目接種を受けた。今回の症状は3回目のワクチン接種の5日後に出現した。2回目接種時には一時的な発熱以外に重篤な有害事象（AE）はなかった。身体所見では、体幹と四肢に広範な浮腫と紅斑性丘疹小胞が認められた（図1a）。臨床検査では、クレアチンキナーゼ（CK）が801U/L（正常範囲59-248U/L）、ミオグロビンが839ng/mL（＜154.9ng/mL）、クレアチニンが2.27mg/dL（＜1.2mg/dL）と血清値が上昇した。尿はミオグロビン尿のため赤褐色であった（図1b）。心電図と心エコーでは心筋炎の所見は認められなかった。腹部の生検（図1c）では、表皮の海綿状化、乳頭水腫、真皮上部の好酸球を伴う血管周囲リンパ球浸潤が認められた（図1d,e）。
診断は、COVID-19ワクチン誘発性横紋筋融解症を伴う丘疹水疱性型ワクチン関連発疹（V-REPP）であった。