アトピー性脊髄炎(指定難病116)のページを更新
- アトピー性脊髄炎とは、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎などのアトピー素因を有する患者で見られる脊髄炎である。1997年に吉良らが4例の高IgE血症とアトピー性皮膚炎を伴った、四肢の異常感覚(じんじん感)を呈し頚髄後索を主病変とする脊髄炎を報告し、アトピー性脊髄炎と命名した。
- 【原因】
- 本疾患の発症メカニズムは不明である。疾患の定義であるアトピー素因の存在や高IgE血症から考えると、ヘルパーT細胞のThバランスは、末梢において主にTh2に偏っていると思われる。すなわち、Th2細胞のシグナルは形質細胞からのIgE産生を促進し、これにより肥満細胞からヒスタミンなどが遊離し、血管透過性の亢進を来す。また、Th2は末梢血好酸球も活性化・増殖させる。末梢組織で増殖したTh2細胞は脳脊髄液腔へ侵入し、準備状態となる。実際の患者髄液中ではIL-9とCCL11(eotaxin)の増加が見られる。CCL11は好酸球上のCCR3及びCCR5と結合し細胞遊走因子として働き、IL-9はTh2からTh9への分化を誘導すると考えられている。
- 【症状】
- アトピー性脊髄炎は、基礎となるアトピー性疾患の増悪後に発症する傾向がある。発症様式は急性、亜急性、慢性それぞれ3割で、単相性経過は3割、あとの7割は動揺性に慢性の経過をたどる。初発症状は7割で四肢遠位部の異常感覚(じんじん感)や感覚鈍麻で、運動障害も6割に見られるが軽症であることが多い。深部反射は8割で亢進し、排尿障害を伴う事もある。 疾患の定義上、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎などを合併する。
- 【治療法】
- 村井らによるアトピー脊髄炎患者26例の治療効果の検討では、ステロイド(CS)治療のみ又は免疫グロブリン静注療法(IVIg)のみではそれぞれ72%、60%の患者で臨床症状の改善が見られた。一方、血漿交換(PE)は単独でも9割の患者で臨床症状の改善が見られ、他の治療と比較し有意に効果的であった。第2回全国調査では6割でCS治療が行なわれており、PEは25%で施行されたに過ぎなかったが、そのうち8割で有効であった。PEは本疾患の治療としてまだ一般的ではないが、CS治療に反応しない症例にはPEを積極的に施行すべきである。
<出典:難病情報センター>
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